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2013'01.28 (Mon)

「虫除け」

昨日は午後、長男は釣りに行きました。
いつもと違う釣り堀は 大物が放流されています。持って帰ってきましたよ。いいサイズのヤマメにイワナが20数匹。そしてでかいのは80㎝級のドナルドソンという改良種の魚(らしい)。マグロかと思ったよ。
勿論解体なんて出来ないので 居酒屋で働いてた経験のある義弟にお願いして切り身に。我が家の冷凍庫は魚に占拠されてます。
入試に魚釣りの項目があれば 一発合格なんだけどな。
更新です。恋人初期。入院中。堂上さん ちょっとズルいかも?。

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【More】

「虫除け」


堂上は病室で本を読んでいた。
風邪も癒え、怪我の治療中心となると、身体を動かせない分 暇を持て余す。良い機会だからと 小牧に頼んで本を借りて貰って来ては、片っ端から読んでいく。
楽しみなのは、転院で基地に近くなったからと、足繁く通って来てくれる郁と会う事。想いが通じ合ったことで 部下としてではなく、恋人として会いに来る郁の変化を見るのが嬉しくて仕方がない。
遅咲きながら女性として花開く様は、身動き出来ない者にとっては心配の種でもあるが。

「よくお見舞いに来ているすらっと背の高い女性は 妹さんなんですか?。」
定期的に体温を計りに来る看護師が聞いてきた。
「え、いや…。」
「ふふ、じゃあ 彼女だ。ご結婚されてないですものね。」
ちょっと年配の看護師が体温を確認しつつ 器用にウインクする。カルテには家族構成や既往歴が記入されている。抗争による怪我ばかりだから さぞかし物騒なカルテだろうが、特殊部隊員であれば珍しくもない。
「怪我ばかりして あんまり彼女に心配かけるようじゃダメよ。」
母親の様に嗜める看護師に苦笑で返す。
「あなたも心配よね。あんなにモテる彼女がいて。」
「は?」
「ほら、割とこまめに来てらっしゃるから 患者さんやスタッフとも顔見知りになっててね。」
体温表に記入しながら続ける。
「時々話題にあがるのよ、大部屋の若い患者さん達のね。堂上さんとこに来てる子だってのは知ってるみたいなんだけど、明るくて可愛いって評判よ。」
なるほど、先日リハビリ中に「今日は誰も来ないんですか?」と若い男の患者が聞いてきたのは、郁の探りを入れてた訳か と納得した。
「あなたの担当決めるのも争奪戦だったんだから、お互い様かしらね。」
若い子じゃケンカになるから私が担当になったのよ、とカラカラ笑って病室を出ていった。
こっちはまあいいとして、問題は郁の方だ。来るな とは言えない。会いたいんだし触れたいんだから。何年かかったと思ってるんだ、漸く自分のものにしたんだぞ。
ノックがして顔を出したのは業務を終えた郁だった。今日も着替えてきたのだろう、明るい色のキャミソールのレースが華奢な胸元に映えている。自分の為に着飾ってくれている郁に頬を緩めながらも、別の男の目も楽しませているかと思うと腹立たしくもある。
「お前、毎回キレイな格好してくることないぞ。」
一緒に出掛けられる時まで取っとけ と伝えれば、頬を染めながらも戸惑いを隠せない郁を引き寄せる。案外独占欲が強い事に自分自身が驚いてるんだが、郁に理解出来るかは疑問だな、と唇を重ねた。

翌日の午後 堂上はリハビリ室に入った。
「今日は須田先生が出張の為、私が担当します。」
と リハカルテを手に挨拶をしたのは、堂上と同年代の男性理学療法士。チラチラと堂上の顔を覗き伺っているのが多少気になるが、基本リハメニューをこなすだけなので無視をして始めた。
そこへやって来たのは 今日が公休の郁だった。忠告通りTシャツにデニムのパンツと ラフな格好だが、明るい笑顔に、数人いた若い男の患者が視線を向けるのが分かった。
「今日は早めに来ちゃいました。お手伝いしますよ?。」
周りに挨拶をしながら堂上の横につく。
「あ あの、今日はわたくし山岡が担当させて頂いています!」
直立不動で郁に挨拶するこの男も郁狙いらしい。
「須田先生はお休みなんですね。宜しくお願いします。」
山岡という男の背筋が伸びるのを、堂上は軽いため息をついて横目で見た。
堂上のリハビリは 通常メニューに加えて 職業柄全身トレーニングは欠かせない。明らかに違うリハビリの質と量に他の患者は息を飲む。勿論軽い訓練程度だが。
一息つく堂上に郁はタオルとスポーツドリンクを手渡すと、隣りの高齢患者の車椅子移乗を さりげなく介助した。稲嶺顧問の介助で手慣れたものだ。その気遣いにも男達の感嘆の声が漏れた。
再び動き出すと、郁は汗に濡れたタオルを堂上の首からスルリと抜いた。
「汗臭いぞ。」
堂上の苦笑に 郁はタオルを握って頬を染める。
「教官の汗の匂いには慣れてますから。」
微妙な発言に、あきらかな落胆の空気が漂う。郁にしたら 訓練で散々堂上の汗の匂いは知っているという程度の意味合いなのだが、恋人らしき2人の距離を計らんとしていた他の男達には 違った意味で伝わったらしい。
思いがけず虫除けのチャンスが巡ってきたと、堂上は郁の耳元に何か囁いた。
「個室ですもんね。何でもありです。サービスしますよ。」
にっこり笑った郁の髪を見せ付ける様に梳いてから、「もう終わるから 先に出てろ。」と郁をリハ室から退室させた。
郁のセリフと堂上の甘い仕草に、山岡達の生唾を飲む音がした。

堂上が病室に戻って暫くすると「お待たせしました。」と郁が入って来た。手には院内にあるコンビニのレジ袋。
「疲れた時はやっぱり甘いものですよね!。後は筋肉つけるプロテイン入りのドリンクゼリーに……。」
次々出てくる品物に堂上は苦笑する。
耳元で囁いたのは「腹が減った。病院の食事じゃ足りないからナイショで何か買って来てくれ。」
手ぶらで見舞いに来るのに抵抗があった郁が 嬉々として答えるのは目に見えていたのだ。
郁が退室した後の山岡らの肩の落ち具合に多少安堵したが、この先定期的に虫除けが必要かもな と郁の手を取った。
20:56  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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