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2013'01.30 (Wed)

「ジュエル」

今日はわりと暖かかったかな、風が強かったけど。
ご訪問ありがとうございます。英香です。
夢中で続けているブログ。気付けば4ヶ月が過ぎていました。もう?まだ?。そして地道に重ねて頂いたカウンターも そろそろ2万に届きます。
憧れのキリ番イベントは、リクエストに応えるスキルがないので手をたたいてお祝いする程度としておいて、踏んだよって一言置いていって貰えると有難いです。書きやすそうなお題を添えて頂ければ精進します。(それをリクエストというのかもしれない。)
ネタに困ってるので近番でも(^^ゞ。
如何せん先ほど気付いた急な話なので、乗って頂けたら楽しみましょう(^ω^)。
更新です。私にしては珍しい?。突っ込みたいのは自分自身ですので。深く考えないことにします。上官・部下 戦争初期です。

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【More】

「ジュエル」


新隊員の教育期間も終盤に入った。
防衛部の郁は引き続き軍事訓練だ。基礎訓練から実地訓練、加えて鬼教官のしごきで毎日の疲労が蓄まっていく。
真夏ではないにせよ、日中の気温に関係なく 体を動かせば汗も出る。各自水分補給しながらの訓練が続く。その日は風の少ない 乾いた天気だった。
走り込みの済んだ者から休憩に入る。郁もヘトヘトになって木陰に横になった。
「――っ、疲れた……。」
いつになく身体が重い。そういえば近々月のモノがくるからかな、女って面倒くさい――右腕を額に当てて目を瞑った。
「おい 笠原、しっかり水分取っておけよ――っと、おまえ 水持って来てないのか?」
堂上が足取りの重かった郁の様子を伺いに近寄って来た。
郁はうっすらと目を開けるが 返事をする気力が起こらない。なんでだろう。郁はのんびり空に浮かぶ雲を見た。
「笠原? おい、返事しろ!」
体を揺らして呼び掛ける堂上の様子を見て 小牧や数人の隊員が寄って来た。
堂上は自分のペットボトルの蓋を開け 郁を起こし口元に流し込んだ。弱々しくだが嚥下する。
「熱中症になりかかってるね。医務室に運んだ方がいいよ。」
小牧が堂上の肩を叩いた。後はいいから連れていってあげて というと堂上の訓練ファイルを取り上げる。
「そういえばさっき 自分の水をへばった他の新人に渡してたなあ。脱水起こしてなきゃいいけど。」
覗き込んでいた隊員が顎を擦りながら心配する。
「っ、バカが。小牧、すまんが後を頼む。」
堂上は舌打ちをして郁を抱え上げて医務室に向かった。

「すみません―――留守か。」
医務室には常駐の医師がいるはずだが、生憎出払っていた。仕方なくベッドに運ぶ。郁は朦朧とはしているがまだ意識はあるようだ。もう1度水分を含ませる。「すみません」気力でそう小さく呟くと また目を閉じた。
堂上は郁の戦闘靴を脱がせ、畳んだ布団の上に足を高くして乗せる。一瞬躊躇したが「処置だから許せよ。」と声を掛けてからベルトをゆるめた。
「冷やすものは……。」
基本的な処置なら堂上にも出来る。備え付けの冷凍庫から冷却用の枕を取り出し 脇に挟ませ体を冷やす。
手早く氷嚢を作ると 椅子をベッドに寄せて腰を落とした。
郁は眠っていた。
汗と埃にまみれた前髪を分けて、熱を帯びた頬についた泥を拭ってやる。

5年前 茨城の書店で良化特務機関の検閲に 1人で立ち向かった少女がここにいる。今でも耳に残る 凛とした捨て身な宣言。狩られる本を守ろうとした勇気は眩しかった。
『5年も前からお前の後ろ姿だけ追いかけてここに来たんだよ。たまんなくならない?』
という小牧には噛み付いたが この胸の痛みに説明はつかないのだ。
あの時より大人びた顔立ちになった郁の首筋に氷嚢を押し付ける。ボタン2つ外した襟元から見える華奢な鎖骨に鼓動が跳ねる。抱えた身体が思ったより軽かったのにもおののいた。
郁は氷嚢の冷たさにビクリと震えて微かに目を開けた。起きたか と覗き込む堂上の顔とは焦点が合っていない。
郁の目に涙が滲む。
「会いたい…。負けない…。」
堂上は郁から目を逸らした。俺はコイツに公平になれない。自分が揺らぐのは自分の都合なのに。
昔の自分に嫉妬するなんて有り得ない。それじゃまるで―――

「ん、水…。」
うなされる様な郁の声に体を起こしてやる。しかし、力の入らない口元にうまく流し込めない。
堂上はペットボトルを自分に傾けた。

郁の喉が動いたのを確認すると再び横たえた。
「暫く休んでろ。」
聞こえていないだろう郁の耳元に囁くと 堂上は医務室を出た。途中医師と会えたので申し送りをする。体温は下がっていたから、やがて目が覚めるだろう。体調管理も仕事の内だと説教が必要だ。
グラウンドに向けていた足を止めて医務室を振り返った。
「明日からも絞ってやるぞ。」
その声は 小牧が聞いたら上戸になりそうなほどセリフと合っていなかった。
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