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2013'02.03 (Sun)

「波を寄せて」2

昨日のうちに豆まきした英香です。
今朝から主人出張で長男も不在になる本日では鬼役がいなくなる為、1日早く「鬼は外」。
戦争です。これ、誰が片付けると思ってるんだよ……。踏むな 砕けて収拾つかなくなる!。
豆まき後に出没した母鬼にはお面は要りません。
取り敢えず外に掃き出しておきました。

更新です。続きます。ちょっと長め。

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【More】

「波を寄せて」2


午後は館内警備だった。和田の施設案内も兼ね、小牧と手塚の巡回についた。
「さすがに広いですね。地下書庫の規模は桁違いだ。」
都内で最大級の図書館である武蔵野第一図書館の蔵書数は膨大であり、地下書庫では遭難者が出ると言われるほど広大だ。
「ま、研修とは言っても1週間だし 書架配置を覚える必要ないからね。今回は書庫出納の業務はメニューに入っていないし。」
小牧の説明を聞きながら 壁にある館内案内に目を通す。
「書庫も館内もこれだけ広いと 警備も大変ですね。」
和田は舌を巻いた。
「ところで笠原さんの事なんですけど…。」
和田が話を持ち出すと、小牧は珍しく少し困った表情を見せた。
「うーん、今業務中だし本来言うべきことではないんだけどさ。」
小牧は前置きをしてから和田に向き合った。
「和田三正が笠原さんと同郷だってことは分かってる。故郷の話は笠原さんだって懐かしいだろうから構わないんだけどね。ただ1つだけいいかな?。彼女の王子様の件だけはあまり触れないでおいてあげて。ほら、からかわれるのは本意じゃないだろうし、今彼女も前向きに頑張ってるところだしさ。」
「…そうですね、先程も微妙な空気にしてしまったようですし。昔の話は恥ずかしいものですからね。」
和田はバリバリと頭を掻くと話を畳んだ。

何事もなく研修1日目を終えた和田の歓迎会を兼ねて、夜は堂上班で外へ食事に出た。
「明日も業務があるからな、笠原は絶対に酒入れるなよ。」
堂上が念を押すと
「失礼な!そのくらい分かってますよ。週の頭からそんな失態見せませんって。」
プーと郁は頬を膨らませると堂上は笑ってぽんと頭を叩いた。
和田は後ろからそんな2人を眺めながら歩いた。

基地に近い居酒屋に入ると、郁は宣言通りウーロン茶で、男性陣はビールで乾杯し、雑談しながら食を進める。和田は小牧との約束通り王子様の話題は出さなかった。
「舞は元気にしてますか?。親にバレるのが怖くて あんまり連絡とってなかったんです。」
郁はペロリと舌を出した。彼女には図書隊に入ったとしか言っていない。県展の時に親に防衛部 しかも特殊部隊と知られる事になり、もう内緒にする必要もなくなったから交流を復活させようかと思っていた。
「ん、まあ…こっち来る前に会ったし。」
「え?。もしかして お付き合いしてるとか?。」
和田は何も言わず微笑んだ。
「わぁー、そうなんだぁ。舞の彼氏なんだあ。へぇー、舞に彼氏かあ~。不思議な感覚だなあ。」
郁は感慨深気にため息をつく。何年も行き合っていない友人の近況を聞いて浦島太郎の気分だ。
「妙齢なんだから彼氏くらいいたって不思議はないだろ。色気のないお前の方がおかしいんじゃないか?」
手塚の痛い一言に
「あんたに言われたくないわね。」
と郁はぶすくれた。
和田は郁の陸上での活躍や武蔵野第一図書館の感想など、無難な話をして場に溶け込んだ。

明日も訓練がある。和田の研修は茨城の防衛部の強化目的に重点を置かれている為、特殊部隊の訓練内容を一通り実践するメニューになっている。初日の疲れを残さないよう早めに店を出た。
故郷や友人の話を聞いた郁は 足取り軽く帰寮した。各自室に戻る段階で和田は堂上に声をかけた。
「堂上二正。少しお話ししてよろしいでしょうか?。」
「ああ、かまわん。」
堂上は自室に招き入れた。
上着を脱いで炬燵の電気を入れる。郁に合わせてビールは少なく止めていたので、冷蔵庫から買い置きの缶ビールを取り出した。「ありがとうございます」と手に取ると 2人プルタブを開けて喉を潤した。
「なんだ?」
と聞く堂上の正面で和田が姿勢を正した。
「俺は県立図書館に異動する前に 市立図書館で勤務していました。」
堂上は和田の目を見て眉をしかめた。
「新人の時、先輩から以前市立図書館に研修に来ていた防衛員の三正が単独の見計らいをして大きな問題になったと聞いたんです。研修は中断されて基地で原則派が揺れる事態になったと……。」
ここで和田は言葉を止めた。
「……何が言いたい。」
「図書大最後のエリート。調べればすぐに分かりました。不思議と口を割る者は少なかったですけどね。」
「………。」
「俺は舞から笠原さんが書店で出くわした検閲の話を聞いていました。そこで巡り合った見計らいを遂行した三正のことも。」
和田は缶を置いて堂上の顔をじっと見る。
「堂上二正、あなたですよね。笠原さんのいう王子様。」
堂上は和田から目を逸らすと 最後までビールを呷った。
「関係ない。」
「え?。県展でお2人を見た時、笠原さん 王子様と会えたんだって内心喜んだんですよ?。人づてに聞いても 笠原さんがどれだけ王子様を想っていたか伝わりました。顔も名前も知らない三正をずっと追いかけてこんなところまで来たんでしょ?。やっと報われたんだって…。まさか笠原さん、知らないんですか?。」
堂上は空の缶をゴミ箱に投げ入れ、
「その三正はもういない。」
と炬燵の電気を消すと ベッドに身を沈めた。
「伝える気は―――ないんですね。」
和田は暫く黙っていたが 腰を上げて部屋を出ていった。
「その方が都合いいです。」
と呟いて。

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