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2013'02.13 (Wed)

「波を寄せて」7(完)

これにて連載終了です。
初めてナンバー付きで続けてみました。飽きっぽい私が よく我慢して隔日UPを守ったものです(←そこ?)。
LaLa3月号のあの堂上さんを見てさえ、カミツレデート時点では郁ちゃんに直接告白しなさそうって思っちゃったから、じゃあ他人に向けて言わせてしまえ――というのが発端でした。
頭の中では「タッチ」の達也のあのセリフが掠めたもので(^^ゞ。
感想とか いただけると、次につなげられるかな―と思いますので、気が向いたら宜しくお願いしますm(__)m。
では続きの更新でエピローグです。

↓こちらから どうぞ

【More】

「波を寄せて」7(完)


和田は朝 事務室に寄ることなく、司令部庁舎に報告にあがった。郁達堂上班は内勤だ。
和田の研修に合わせて変則的に組んでいた訓練でたまっていた書類と格闘する。12月は何かとイベントも多く、業務部との連携も増える上、警備も強化しなければならないので ローテーションも密になる。こんなただでさえ忙しい時期に また迷惑かけちゃったな、と郁はチラリと堂上の背中を見た。
左の頬には湿布が貼られている。何があったか なんて聞けるはずはなく、他の隊員も何故かスルーだ。ま、何かしら怪我の多い部署なだけに そんなに目立つ訳でもないのだが、さすがに顔ともなるといろいろ想像をかきたてられる。にやにや笑うだけに留まるのは大人の集団とも言えるか。
11時を過ぎた頃、緒形副隊長が事務室に入ってきた。後ろには和田三正。堂上班は主不在の隊長室に呼ばれた。緒形は隊長代理として業務をこなすが、決して隊長室は使わない。こうして個別会議をする時だけ利用する。
「本日午前をもって 茨城県司令部 水戸本部防衛部 和田彰三正の研修は終了する。既に報告も済ませ 午後には帰還。以上だ。」
緒形が事務的報告のみすると その場の全員が敬礼した。
「あの~。」
郁が恐る恐る声を出す。
「ちなみにだ、水戸本部より笠原郁士長の水戸本部防衛部への永久指導の要請書類も来ていたが――。」
「永久指導!?」
郁の声が裏返った。
「防衛部と特殊部隊では同格異動にはならないからさ。ま、捻ってきたね。」
小牧が小声で説明する。
緒形はチラリと堂上を見て続けた。
「玄田隊長不在中にこそっと滑り込ませたと知れたら 後で怒られるで済まされないからな、早々に差し戻しておいた。――もっとも笠原が希望するなら話は別だが……。」
「嫌です!堂上きょっ…みんなと離れたくありません。」
つい口が滑って 郁は首を竦めたが、堂上の表情は前にいるため伺えない。ちょっと口角が上がった緒形の顔が見えるだけ。でも まだこの背中を追いかけられるんだ、と安堵と嬉しさでいっぱいだ。
「で、何があったか知らないが……お前ら、殴られ損?」
いえいえと苦笑する和田の頬にも湿布が居座っていた。

帰還準備の整った和田は事務室内にいる班に挨拶をして回り、慰労と激励の言葉を交わす。1週間の研修とはいえ、その前に共に県展を守り抜いた仲間だ。茨城の建て直しに特殊部隊の面々も協力的だ。和田は手荒く肩や背中を叩かれながら送られた。
最後に改めて堂上班の前で敬礼する。
「報告書は読んだ。立派な内容だ。水戸防衛部での成果を期待する。」
堂上の言葉に「ご指導の賜物です。」と再敬礼をして和田はにっこりと笑った。
そのまま庁舎玄関まで見送る。
「こちらで結構です。大変お世話になりました。」
頭を下げる和田に それぞれが別れの声をかける。
「堂上二正、有難うございました。おかげで前を向いて頑張れます。」
「ん。」
2人握手を交わす。
「笠原さん。」
「あの、和田三正。昨日は叩いちゃってスミマセンでした。先輩に向かって…痛かったですよね。」
郁は頭を下げて 和田の湿布に視線を向ける。
「いや、さすがタスクフォース。おかげで目が覚めたよ。」
といって破顔する。
「舞は図書隊の中の事は何も知らないんだ。だから遠慮なく連絡を取ってあげて。待ってると思うよ。」
今回の郁とのことも知らないからと続ける。
「舞にはもう一度アタックしてみるよ。やっぱり彼女が好きだし、俺も彼女を支えられる男に成りたいからね。揺れちゃった俺を受け止めて貰うのは時間がかかるだろうけどさ。」
混乱させてゴメン と謝ると「では。」と踵を返して庁舎を出ていった。

昼休憩に入るタイミングだったので そのまま食堂に向かう。
廊下を歩きながら小牧は堂上に言った。
「彼、いい顔して帰って行ったね。訓練で引き締まった分もあるけど、さっぱりした表情がいいよ。」
「そうだな。茨城でもしっかりやっていけるだろう。」
「何言ってんの。堂上、おまえもだよ。」
あ~見たかったなあ~。絶対その権利あると思ってたのになあ~ と堂上の先を進んでいった。
冗談じゃない。あんなの聞かれたら舌かんで死ぬぞ。想像しただけで身震いする堂上だった。


堂上と郁のもとに 和田と舞の連名のハガキが届いたのは、それから数年後のこと。
「やったね、和田三正 じゃなくて和田二正か。」
郁はハガキを高々とあげてから喜んで堂上に見せる。
あれから和田は 水戸本部で防衛部の建て直しに大きく貢献し、今も活躍していると聞いている。郁も舞とは時々連絡を取り合い お互い相談をしたりしていた。
ソファーに座っている堂上にコーヒーを、自分にはミルクティーを淹れて隣に身を寄せる。
「あの時の話は絶対しないよね。」
和田の研修中に殴られた経緯は 結局堂上は語らず「男の事情だ。」としか言わない。でも 自分のために頑張ってくれたんだというのは 今の郁なら分かるからもう聞く必要はないか、とは納得している。
「舞がね、和田二正のこと結構めんどくさい男だっていうのよ。押せ押せでアタックしてるんだと思ってたんだけど、違ったみたいよ。」
ちょっと首を傾げた郁を横目にコーヒーを啜る。なんだ、あれだけ笑っておいて 結局同じ道を辿ってたんじゃないか、とこっそり鼻で笑う。
長年かけて手に入れた宝石は 幾度も波に磨かれて輝きを増した。あの波も結構でかかったなあ と物思いに耽っていると「どうしたの?」と郁が顔を覗き込んできた。
「なんでもない。」
そのまま引き寄せキスをする。

今は穏やかな波に揺られ 輝く宝石は腕の中。目を閉じて その水面と戯れよう。
01:11  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

こんばんは★連載終了お疲れ様です(≧ω≦)ノ♪ 「波に寄せて」、和田三正という邪魔波に揺さ振られた、という意味かと思ったんですけど、郁ちゃん自身も波に磨かれてたのですね~(*´∀`*) 掌中の珠を波に攫われないよう、大事に大事に磨いたのでしょうね、堂上さん(^m^)=3♪
すぎ | 2013年02月13日(水) 23:59 | URL | コメント編集

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