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2013'03.05 (Tue)

「あなたに伝えたい」1

卒業式に向けて美容院の予約をしてきた英香です。
電話は嫌いなので直接いつもの店へ。
「担当者の指名はありませんか?」
と言われても名前覚えが悪いのでいつも指定していません。でもちらりとお姉さんの手元にある担当者スケジュール表?を見たら、上から2段目の名前が『笠原』と!。あ、あ、と思ったけど 結局その下の『佐藤』さんに印をつけられ、「では お待ちしておりまーす」と送り出されました。
いや、別にいいんだけどね。そこで一言進言出来ない自分が残念でした…。
更新です。また続いちゃったよ(-人-)。取り敢えず話が決まってると更新しやすいという理由もありますが、今回辻褄あわせで苦労しそうな予感。3~4話の予定。ナンバーにしておきます。別Ⅰ バレンタイン前後。オリキャラ。

↓こちらから どうぞ

【More】

「あなたに伝えたい」1


急な異動にびっくりしたが 正直都合が良かった。別れた彼氏とは同じ部署。気まずいのは嫌だった。
第二図書館から第一図書館へと、知らない土地に行くわけでもないから気軽に辞令に応じた。
新しい職場に特に不満はない。せっかくだからいい出会いがないかなあ と期待するのは当然な事。
それは突然やってきた。
女の子のグループにくっついて食堂まで移動する。業務部、防衛部、後方支援部、一同が利用する食堂だ。普段見かけない顔も多い。その一角でトレイを持って辺りを見回している集団の中の1人が目についた。
「あの人達……。」
「ああ、特殊部隊の人達だよ。」
と教えられた。
ちょっと見 仏頂面のその人は、周りの人達よりずっと小柄だ。しかしその漆黒の目に吸い寄せられるように釘付けになった。
と、その表情が突然柔らかく変わる。眉間の皺を目元に移動させた まるで別人のような笑顔に心臓が鷲掴みされた様だった。もっと近くに行きたいと一歩前に出たが、「こっちよー。」と言う声に目を離すと もう人混みに紛れてわからなくなってしまった。
以来 目に焼き付いてしまった笑顔を探して特殊部隊の姿を追うようになった。

郁は目を閉じた。
堂上とのキスは気持ちいい。
付き合いだして半年過ぎ。まだ寒い季節だけど 堂上の開き直り宣言以降は、夜 呼び出されて同じ時間を過ごす事が増えた。
寮の敷地内にある小路を歩き 暗がりで引き寄せられる。互いの温もりを確認し 唇を寄せる。始めは重ねるだけ。2度3度と繰り返すと堂上は深く求めてくる。角度を変えながら 抱き寄せる力も加えながら 徐々に激しくなるそれを、郁は必死に受けとめる。大きな手は ゆっくりと郁の背中を行き来し、やがて後頭部に指を差し込み 唇を離して抱え込む。
郁の耳にかかる吐息は熱い。時々その熱を逃がそうと動きを止めているのが分かる。
我慢させてる。
でもこの先に進む勇気がない。
堂上の優しさに甘えている自覚はあるが、だからといってどうしたらいいか分からないのだ。キスは好き。もう少しこのまま。
郁はきゅっと堂上の背中のシャツを握り締めた。

「お帰り。」
部屋に戻ると 柴崎の他に1人客が来ていた。最近移動してきたという業務部の佐藤だ。
「ちょっと あんたそんな顔して帰ってくるんじゃないわよ。こっちが恥ずかしいでしょうが。」
「ふぇ?」
柴崎の指摘に郁は自分の顔をまさぐる。
「『あたし幸せです』って言い触らしてるみたいよ。お熱いこと。」
テーブルに肘を突いて にやにやと見やる。
「もうっ、からかわないでよ!」
郁は買ってきたスポーツドリンクを頬に当てる。顔が火照っているのがわかる。せっかく頑張って冷ましてきたのにぶり返すじゃない とぶすくれた。
「笠原さんって、特殊部隊で唯一女性っていう笠原さん?」
佐藤がまじまじと郁を観察する。
「そう、特殊部隊名物笠原郁士長。」
柴崎の微妙な紹介に噛み付く郁を見て
「もっとゴツイ人を想像してた。」
と感想を述べた。背は高いが細身の郁はそう評価される事が多い。
佐藤は元々武蔵野第二図書館勤務だったのが 柴崎の部署で結婚退職が相次ぎ、急遽時季はずれに異動となったらしい。業務は柴崎が指導していると聞いていた。歳は郁達と同じだ。
「特殊部隊って近くで見るの初めてだったの。やっぱりがっちり系の人が多いのね。近くで見ると迫力あるわ。」
そう言ってから佐藤は腕を組んでいたのを崩すと テーブルに身を乗り出して目を輝かせた。
「でも 中にはかっこいい人いるのね。ほら、背が高くて1番若そうな人とかっ。」
「ああ、手塚ね。相変わらず人気あるよねー。」
「いつもニコニコして優しそうな人とかっ。」
「小牧教官に憧れてる子も多いよね。可愛い彼女いるから無駄だけど。」
「あと、小柄だけど 精悍さが滲み出てる人。あの人いいなあー。この前 ちらっと笑顔見て ギャップ萌え?。こんな素敵な人がいるんだあ なんてドキドキしちゃった。」
「え?」
郁は目を丸くして固まった。柴崎と顔を見合わせる。
「バレンタインデー、あの人にあげてみようかなあ。私が聞いた子は彼女いるか知らないって言ってたし。笠原さん 知ってる?」
話を振られて郁はたじろいだ。
「あ、えと、う…ん。」
「いるの?」
郁に詰め寄る佐藤に 柴崎は声をかけた。
「佐藤さん、後々面倒な事になるのが嫌だから言っておくわ。多分それ 堂上教官。この娘のラブラブな彼氏よ。だから残念だけど、バレンタインデーは別の人にあげるのをお勧めするわ。」
佐藤は絶句した。
「…へえー、……そうなんだあ。」
テーブルの上にあった腕を床に下ろす。
「なあ~んだ、残念。せっかくいい人見つけたと思ったんだけどなあ。ま、仕方ないか。――ところでさあ。」
へらへらっと笑って 別の話に切り替えた。
佐藤の手はそれぞれ床の上できつく握り締められていた。
18:09  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2013年03月06日(水) 11:35 |  | コメント編集

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