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2013'03.07 (Thu)

「あなたに伝えたい」2

入試です。多分今日は何も手がつかないでしょう。別に母ちゃんする事って弁当作るだけだけど。送ってくの主人だし。
てなわけでさっさと更新しておきます。続きです。
えと、一応ちょっと前の「月に誓う」と繋がっています。出来ればそれを踏まえて読んで頂きたい という我が儘をば(・_・|。いや、単体でも大丈夫ですよ。(←どっちだい)

↓こちらから どうぞ

【More】

「あなたに伝えたい」2


防衛部に書類を届けに行った佐藤は、帰り際グラウンドに向かった。
そこでは特殊部隊が訓練を行っており、隊列を組んで走っているのが遠目だが見える。やがて休憩に入ったのか 駆け足しながら佐藤がいる近くの水道の周りに集まってきた。
その中に小柄な隊員を見つけた。上の戦闘服を脱ぎ黒いTシャツ姿になる。火照った体からは湯気でも立ち上ぼりそうだ。その逞しい腕に佐藤の鼓動がドキリと跳ねた。水道で顔を洗う。この時季まだ冷たいであろう水が かえって気持ちよいらしい。ぶるぶると頭を振って水気を飛ばすと 差し出されたタオルを頭から被る。その間から覗き見えたのはあの食堂での笑顔だ。そして視線の先には――
「笠原さん…。」
佐藤の口は結ばれた。

夜の部屋で 柴崎の野次馬モード全開な質問に郁はしどろもどろだ。
佐藤は職場から持ち帰ったファイルを抱え 柴崎の部屋のドアをノックしようとして手を止めた。中から漏れ聞こえてくるのは女子トーク。どこの部屋も一緒よねぇ と苦笑する。
『堂上教官は…やっぱり、そういうこと…』
『したいに決まってんでしょ。相手30過ぎの大人の男よ。しかもキスならいくらでもしたいくせにその先は恐いからイヤ、とか何の生殺しよそれ』
聞こえた内容に息をのんだ。え?堂上二正と「ヤッて」ないの?。確か付き合って半年とか7ヶ月とか。いい歳した男女が毎日顔合わせててその気にならないなんて。
「あ、佐藤さん。笠原達部屋にいる?」
声をかけて来たのは先輩にあたる人だった。
びっくりして「はい。」と場所を譲ると彼女はドアをノックして開けた。家庭部でバレンタインの手作りチョコを作るイベントの勧誘らしい。郁の参加費を徴収した先輩が廊下に戻ると
「佐藤さんもどう?」
とにこやかに勧誘してきた。
「――参加します。」
と返事をした。

男子寮の堂上の部屋では 小牧と2人で飲みながらの男のトーク。珍しく惚気が入る小牧を横目に堂上が攻めあぐねているのを溢す。
郁に経験が無い事は確実だ。そういう事に奥手であるのも折り込み済みだ。
『もっとキスがしたい』との言質は取ってある。
郁へのキスは激しく思いの丈を載せて。多少引かれても構わない。竦んでも受け入れ、ぎこちなくも応える事を覚えた郁が愛おしい。でも現実はそれだけでは足りていない自分が居る。
郁が欲しい。全てを手に入れたい。
しかしその欲望を押し付ける訳にいかない。涙もろくて感受性が強い。多分母親の影響の強い郁に歩調を合わせると決めたのだ。
誰もいない実家で巡ってきたチャンス。家に入れた時点で抑え切る自信はなかった。でも郁の目に怯えが見て取れて 先には進められなかった。
怯えの色は 痴漢事件での囮捜査によって男性恐怖症になった郁を彷彿させた。あの苦しみを再び味わわせたくない。ましてや自分の手で。郁は自分に怯えているわけではなくて行為に対して怯えているのだろう。分かってはいてもキツいのだ。
小牧の言う『優しいんだか弱気なんだか』は 確実に後者だろう。
8年かけて幻の珠を手に入れただけなのか。
特殊部隊で鍛えぬいてはいても 1人の女に逃げられるのがこれほど恐いとは――どんだけ郁に弱いのか、堂上は苦笑してビールを飲み干した。

郁の生まれて初めての手作りチョコ。ベテラン部員が付きっきりで指導してくれたおかげで なかなかの出来になり満足していた。本命は1つ。鬼気迫る製作に 一緒に参加した佐藤もクスクス笑う。
「綺麗に出来たね。」
「うん 完璧。文句は言わせない!」
郁は胸を張った。
「佐藤さんは2つ?」
佐藤の前には箱が2つ。
「う うん。実家が近いからね、父にもって思って…。」
「へえー、孝行娘だねぇ。感心感心。」
にかっと笑って 郁は大切そうに箱をしまった。
「堂上二正、喜ぶでしょうね。」
周りに人はいない。
「ねえ、あげるのはチョコだけ?」
佐藤はさりげなく問う。
「へ?。ああ、ネクタイとか万年筆とかかあ。うーん あげた方がいいのかなあ?」
腕を組んで悩む郁に 違うわよと苦笑する。
「あなた、堂上二正とヤッたことないんでしょ。」
「何を?」
「セックス。」
ガタガタガタと郁は椅子やら使った道具やらを倒して体勢を崩した。
「どうしたのー。」
の部員の声に「何でもない!」と慌てて答える。
郁は真っ赤になって声を殺して佐藤に叫んだ。
「な な 何でそんな事っ。」
佐藤は落ち着いて答える。
「『プレゼントはわ・た・し』なんて 定番過ぎるかしらね。でも今時勿体ぶるのもどうかしらね。」
「も、勿体ぶるって…。」
郁は崩した道具や倒した椅子を直しながら立ち上がった。
「それとも二正は貴方にそんな魅力を求めていないのかしらね。」
「う…。」
貧相な体型は郁のコンプレックスだ。
「男なんてね、やらせてくれれば誰にだってホイホイ手を出すものよ。さっさと差し出しちゃえばいいのに。あんまり待たせてたら持ってかれちゃうわよ。二正だってただの男よ。可哀想じゃない。」
俯いてしまった郁に佐藤の胸はチクリと痛んだ。こんな風に言葉をぶつけるつもりはなかった。
ただ 堂上二正の視線を独り占めしているこの子の無邪気な笑顔が面白くなかった。きっとこの子なんかじゃ二正は物足らない。そしたら私が満足させてあげるのに。
郁の震える足元をじっと見て佐藤は決意した。
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