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2013'03.09 (Sat)

「あなたに伝えたい」3

録画していた野球 WBC台湾戦を観てたらこんな時間に。
ハラハラドキドキは苦手なので、「劇的逆転で大勝利」と分かってから 安心してハラハラドキドキして見ました。
邪道と言われても、推理小説も後ろから読みます。犯人分かって 結末知ってから安心して前に戻って読み直す。後味悪い終わり方の話は読みたくないの(T_T)。それでも十分楽しめるもの。あまり同意は得られませんが…(-ω-)。
更新です。視点や場面がコロコロ変わるわ、また2人に悩ませちゃうわで いつものパターンですが。バリエーションの無さに悩み中。リクに挑戦するのが良い機会になれたら儲け物?。
続きです。原作並読しながらお願いします。多分「5」まで続きます。多分。

↓こちらから どうぞ

【More】

「あなたに伝えたい」3


携帯のメール着信音が鳴る。
「佐藤さん、メール来たんじゃないの?」
ドラマを見ている同室の子にテーブルに置いてある携帯を指差された。
佐藤はファッション雑誌から視線を外さずに答える。
「いいの、大した内容じゃないし。」
「そう。」
何事もなかったように時間が過ぎる。
メールの相手は分かっている。元彼だ。
『仕事は慣れたか』
『風邪ひいてないか』
『困った事ないか』
何よ。今更。私のこと 必要としてないくせに。私はもう次の恋をしてるの、邪魔しないで。別れてから1度も返信していないのに しつこい男。アドレス消してないのは手間だからだし。チラリとだけ携帯を見て 小さくため息をついた。

部隊のみんなには、毎年恒例のお徳用袋のキットカットを購入した。ホワイトデーの存在を無視するような奴等にはこれで十分。
「教官 美味しいって言ってくれるかな~。」
綺麗にラッピングした箱を手にする。
『あげるのはチョコだけ?』
耳元で蘇った言葉に、どくりと心臓が大きく跳ねた。
堂上のキスは優しくて、激しい。そのキスの先は?。
あの大きくて熱い手が頭に載る 髪を撫でて掻き混ぜる、キスの時に背中を這わす。その手で――
夜 夢を見た。
バレンタインデーの朝になっていた。

郁は事務室で徳用チョコを盛る。文句を言う隊員には文句で返す。
「俺も1つもらうかな。」
堂上の声に郁の肩が竦んだ。
「お、おはようございます、どうぞ!」
顔が見られない。チョコレートをつまむ堂上の手が視界に入ると ぎゅっと目を瞑った。
夢の中で 堂上の手があんなことこんなこと―――。
……っ 何考えてるの!。はしたない?。あたしって変態?。とてもこんなこと―――
「笠原、顔洗ってきます!」
勢いつけて部屋を飛び出して行った。

昼休憩、堂上は事務室を見回したが郁がいない。
「笠原なら柴崎と外に食べに行くと出ていきましたが。」
手塚の声に「そうか。」と答えた。
郁の様子がおかしい、そんな気がしていた。朝から視線が合わない。逸らされてる?。避けられてる?。

堂上は食堂からの帰りに外の空気を吸おうと中庭に1人出た。
2月に入って1度雪が降った。防衛部と特殊部隊で雪掻きをし、集めた雪はこの中庭の一角に積まれた。そのまま郁が遊びに入ったのはもう予想通りだ。積まれた雪を固めて穴を開ける。力自慢の土井も巻き込んで作り上げた「かまくら」に子供達は大喜びだった。
あれから日にちは経って周りは溶けたがその名残は残っている。腰の高さになった雪山の前で立っていると 1人の女性が声をかけてきた。
「堂上二正。」
振り返ると最近郁の近くで時々見かけるようになった女だった。第二図書館から異動してきて柴崎が業務指導していると聞いている。
「業務部の佐藤といいます。これ、受け取って下さい。」
両手で差し出されたのは ふんわりと赤いリボンで閉じられた袋。中に透けて見えるのは紺色の小箱。
「バレンタインのチョコレートです。私の気持ちなので……。」
「悪いがこれは受け取れない。」
堂上はこういったイベントに乗じることはしてこなかったので佐藤の横を通って立ち去ろうとした。
「笠原さんのだけを受け取るんですか。」
「……当然だろ。」
郁と交際しているのを知っているなら尚のこと。
「好きなんです。」
「応える事はできんな。」堂上は視線をくれる事なく庁舎に入って行った。

課業後、更衣室の通路で郁が堂上にチョコを渡す際 手が触れただけで怯えたように手を引いた。
受け取り損ねた小箱はスローモーションのように床に落ちたのを、堂上がさらって手にして礼を言う。
――触れただけで怯える郁。
巻き戻ったようだった。囮捜査の後の郁に。そう思った堂上と 意識し過ぎて傷つけたと後悔する郁とにすれ違いが生じた。
互いに想うが故のその距離は 郁を追い詰めて行った。

佐藤のメール着信音が鳴った。
携帯を手に取り、返信画面を開く。
『新しい彼氏が出来たので もう連絡しないで』
別れてから初めて返信したメールだった。
堂上と郁の変化は 毎日見ている佐藤には察しがついていた。
ゴミ箱には赤いリボンと紺色の小箱。私にはいらない。私には武器がある。笠原郁に出せない武器ならば私が使えばいい。そうして来たんだから。欲しがらなかったのはあの男だけ。
手にした携帯をベッドに放り投げた。

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