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2013'03.11 (Mon)

「あなたに伝えたい」4

主人も子供もイライラ。花粉と黄砂にやられて熱まで出る騒ぎ。気の毒だけど 代わってやるわけにいかず、早くこの時季が過ぎ去るのを待つばかりです。
隙間だらけの家でも 外よりはマシだからと、家に籠もって録画しっ放しだった映画を観ました。「バイオハザード」と実写の「宇宙戦艦ヤマト」。映画は劇場で観たくなりました。ああ、図書戦が楽しみ(´∀`)。
さて、更新です。次回で終われるかな?。都合により、原作と少しずつ違っていきますがご了承下さい。ま、オリキャラ出した時点で仕方なしって事で(^^ゞ。

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「あなたに伝えたい」4


確実にやらかしてしまったんだ。
郁は事務室で書類を整理している堂上の背中に目をやった。
ここ数日 褒める時も叱る時も堂上の手が郁を触れることはない。
この状況には憶えがある。囮捜査で郁自身がコントロール出来なくなった――所謂男性恐怖症になった時の堂上だ。
郁はその症状を正直どうやって克服したかは覚えがない。時間が解決したのか、何かきっかけがあったのか。ただ心の奥に大切なものがしまわれてある感覚があるだけ。
でも違うのだ、あの時と。佐藤の言葉で沸き上がったのは恐れでもなんでもない。柴崎に指摘された母親の呪縛。「その先」に進むのに罪悪感がある?。興味がある自分を堂上に知られたくない?。
昨夜思い切って郁から呼び出したのだが、堂上がくれたのは躊躇しながらの重ねるだけの優しいキス。あの滑るように撫でてくれた手が遠く感じる。こんなに堂上の温もりが恋しいのに 取り戻すすべがわからないのだ。

堂上は机に向かいながらも目を閉じた。郁に触れていいのか戸惑う自分がもどかしい。今までどれだけ自然に郁の頭に手を置いていたのかと苦笑する。ただの上官だった頃から繰り返してきた行為は反射のようだ。――拒絶、では無いにしろ 何が原因なのか分からない今、強引な事をすべきではないとブレーキがかかる。護りたいという気持ちだけが空回りしていた。
「堂上、客だぞー。」
館内警備から戻って来た斎藤に入口で呼ばれた。堂上は進まない書類を机の端に積み、事務室を出た。
庁舎の一角にある休憩スペースのソファーに1人の男性が座っていた。堂上の姿を見て 立ち上がるとペコリと頭を下げる。優しそうな顔立ちに縁なしの眼鏡をかけた男性は「久保」と名乗った。


バレンタイン以降、佐藤は頻繁に堂上の前に現れるようになっていた。
しかし、特に交際を迫るわけではない。挨拶をするだけ。業務連絡をするだけ。但し微妙に距離を詰めてくる。堂上は特に対応を変えることなく、必要最低限の受け答えに撤していた。
堂上が夜更けの呼び出しをしなくなって暫く経つ。残業もないのに郁と過ごさない夜は時間が長く感じるものだ。いつもなら コンビニまで夜のデートにでも出掛けるか、基地内の周回コースで散歩をするか。いずれにしても プライベートの時間はそれまで何をしていたかも分からない程に郁と過ごすのが当たり前になっていたという事か。
仕方なくロビーまでビールを買いに出た。消灯間近なロビーは人影もなく、自販機の取り出し口にゴトンと缶が落ちた音が大きく響いた。
「堂上二正。」
最近寮では 郁より声を聞いているのではないかという佐藤だ。
堂上は聞こえなかったように振り返ることもせずにビールを取り出すと男子寮に向かった。後ろから足音が追いかけて来たかと思うと 背中に衝突するものがあった。佐藤の腕が堂上の胸にまわされる。
「私を抱いて下さい。」
「…離せ。」
堂上は乱暴に佐藤の腕を解くと構わず歩み去ろうとした。
「笠原さんはさせてくれないんでしょ?。私なら好きにしていいんですよ。」
「お前は何を言ってるんだ。」
「笠原さんには黙っていればいいんですよ。あの子になら気付かれない自信があります。」
佐藤は堂上の腕を取る。
「大した身体してるわけでもないのに焦らすだけ焦らしてる笠原さんなんて待つ事ないですよ。堂上二正が可哀想です。私が慰めて――」
「バカにするな!」
佐藤の手が 弾かれたように離れた。
「笠原には黙ってれば分からない?。アイツが焦らしてるだと?。そんなタマかっ。俺が可哀想だと?。大きなお世話だ。だいたいお前は自分を何だと思っているんだ。」
堂上は射るような目付きで言い放つと 足早に去って行った。
残された佐藤が唇をきつく噛んで立ちすくんでいると、女子寮からクスクス笑う声が上がった。
「バカね。堂上教官が他の女に隙をつくるとでも思ってたの?。あの人が欲しいのは笠原だけよ。」
佐藤が振り返ると柴崎が自販機にもたれて立っていた。
「そんなの分かんないわよ。男なんて口では何て言ったって、やりたいに決まってるんだから。」
「今までどんな男を相手にしてきたか知らないけど、あの2人をあなたの物差しで考えない事ね。特殊部隊きってのバカップルなんだから、あなたなんかがちょっかい出したって無駄なのよ。」
話しながらお茶を購入すると、優雅に微笑んでくるりと背を向け ひらひらと手を振って寮に入って行った。
佐藤は自身のスカートをきつく握り締めた。


翌日は館内警備の日だった。バディの手塚が言いにくそうに訊いてきた。
「お前、堂上二正と何か揉めてんのか。前に柴崎がそんなようなこと言ってたけど…。」
「……。」
手塚になんか相談出来ない。恥ずかしい。――恥ずかしい?。
「堂上二正ってお前のことよく見てるな。」
ポツリと呟く手塚の横顔を見上げた。
「お前、何かにつけて無茶するだろ。仕事してたら自分の性別忘れるしな。教育時代から気に掛けてたってのも 今になってみれば分かる、俺でもな。公私混同しないように苦労してる感じだけど、堂上二正、お前のことは本当によく見てるよ。」
あたしは大事にしてもらっている。堂上は上官としても、恋人としても、こんなに大事にしてくれている。そんな人を傷付けたままには出来ない。今だけ。手塚の影で声を殺して涙を流した。
「課業中だからな、早く戻せよ。」
郁を隠すように背を向けて立つ手塚に感謝して涙を拭うと、心の奥に眠るものが引き出される気配がした。
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