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2013'03.29 (Fri)

「油断した後に」(小話)

婆さんの手術は無事終わりました。その日は娘である義妹がついてくれました。夏には孫が産まれる 年上の義妹は、とても気さくな女性です。チビがいるから病院の事は任せて、と言ってくれるのでお言葉に甘えます。
一昨年も手術して、その時は感染症で大変でしたが、今回は順調。癌はまだ残っているのもありますが、もう少し大きくしてからまた手術するそうです。取り敢えずよかった。長く入院すると動けなくなる可能性があるので さっさと退院する事にしました。今の病院は回転が早いこと。
さて 更新です。今回はINDEX No.23 「油断」の続きです。甘さは少ない。戦争時期ですし。リクエストがまだ途中ですが、取り敢えずのんびり更新していきます。

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【More】

〈油断した後に〉


堂上と郁は小牧が犯人を連行していった交番へと向かった。調書作成に郁の被害者としての証言が必要だ。
交番では小牧がある程度手続きをしてあった為簡単に済んだ。
「俺はコンビニ寄ってくから、堂上は笠原さんを送ってくといいよ。」
小牧は2人と別れてコンビニへと向かった。
堂上は「帰るぞ。」と 郁を促すと、2・3歩進んで郁に振り返った。
「支えはいるか?」
堂上が差し出した手を 郁はじっと見つめたが軽く首を振る。
「いえ、もう処置をして貰ったので…。」
交番で簡単に固定した足でトントンと地面を鳴らす。
「そうか。」
堂上は前を向いて歩きだした。郁は後をついていく。
いつもより歩調がゆっくりなのは 郁の怪我を気遣ってのことだろう。
郁は堂上の背中を見た。
広い背中。自分より肩の線は低い位置にありながらも がっちりしている。もう何度もこの背中に守られている。チビだ何だとなじりはしたが 悔しいくらい頼もしい。王子様の背中だけを追いかけてきたが、この背中も追いかけたいと思う程に。
規則正しく揺れる 堂上の血の滲んだ右手が目に入った。
「あの…教官、助けていただいて ありがとうございました。」
まだきちんと礼を言っていなかった。
「ん、いい。たまたま通り掛かっただけだ。無事でよかった。」
顔を合わす事無く正面を向いたまま返事がきた。面と向かったら説教になるんだろうな、と郁は思った。
ほぼ無言のまま寮の玄関に入った。
「あ、コレ。」
郁は堂上に上着を返そうと前のファスナーに手を掛けた。
「いい、そのまま着ていけ。明日返してくれればいいから。」
慌てて手で制すると ぐいぐい郁の背中を押して女子寮に追いやった。

部屋に戻ると柴崎が目を丸くした。
「あら、どうしたの その上着。」
「ちょっとそこで犯人と格闘になっちゃって…。」
郁は部屋着に着替えると 堂上の上着をハンガーに掛けた。
柴崎が淹れてくれた紅茶を飲みながら 今日の出来事を報告する。
「へぇー、たまたま教官達が通り掛かったんだあ。」
柴崎は紅茶を飲み干すと「早く休みなさいな。」と郁をベッドに促した。
「ん、疲れたし そうする。」
郁はハンガーに掛かった上着を一瞥してからベッドに入る。上着が見えるように 少しカーテンを開けて目を閉じた。
柴崎はこそっとメールを入れる。
『お疲れ様でした』と。

夢を見た。暖かな光に包まれている。頭にぽんと乗せられる感触に 心も頬も緩む。―――やがて郁のベッドからうなされる声が。
「スミマセン」「気を付けます」「許して」
小声の寝言に柴崎はプッと笑う。
「説教されてんだわ。」
どこまでも過保護ね、とハンガーに掛かる堂上の上着にため息をついた。
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