All archives    Admin

07月≪ 2020年08月 ≫09月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031

2013'03.30 (Sat)

頂き物「花の下にて」前編

リクエストしていただいて来ちゃった英香です。
我が家でもリンクさせていただいている「路地裏の猫の隠れ家」さんの隠れネコ様にリクエスト。早々に叶えて頂きました。しかも前・後編ですよ!。もうお読みになった方も多いとは思いますが、我が家でも飾らせて頂きます。早くしないと桜が散ってしまうっ、ていうタイムリーなお話で連日UPです。

↓こちらから どうぞ



【More】

☆花の下にて☆

前篇

桜の見ごろが毎年何日と決まっている訳ではない。早い年もあれば、例年より1週間ほど遅い年もある。故に、花見の予定などなかなか組めないものである。

***

関東図書基地特殊部隊の花見は、全くの突然、隊長の玄田の一言で始まる。ある日の朝礼でその一言が発せられた。
「○○公園の桜が7分咲きらしいぞ。天気の崩れもないな(緒方に確認)。よし、今日は夜桜で飲むぞ!(緒方に向かって)細かいことは任せるからな」
殆どの隊員が雄叫びを上げている陰でため息を零すのが2人。それを見て軽く上戸に入るのが1人。上官の苦労を思い、この後準備に走り回る相談を始めたのが2人。
つまり、隊長からの丸投げ書類を毎日山のようにこなしている緒方と堂上は、花見で発生する新たな皺寄せをどう掃くのか算段を付けねばならず、諦めの境地に達している小牧は、諦められない堂上に同情し、手塚と郁は大量の酒とつまみをどこからどう仕入れるか段取りを組まねばならない。こういう場で走り回らねばならないのは、下っ端。特殊部隊の下っ端は数年たっても手塚と郁の二人のままで、その手塚と郁のすぐ上の下っ端は実は堂上と小牧だったりする。つまりは、堂上班はたった4人で花見の準備に駆けずり回らなければならないのだ。
「堂上、書類は今日が締め切りの分だけを引っ張り出せ。その間に小牧は手塚と笠原とで買い出しと場所取りの段取り。堂上は書類が完了次第班に合流。以上」
緒方から指令が出る。堂上たちは日頃回ってくる雑用ということで「了解」の一言で動き始めた。

「場所取りは笠原さんと堂上に任せるよ。花の見極めは笠原さんが適任でしょ。買い出しは、俺と手塚。バンの借り出しはするから、いつもの飲み会を参考に各店に注文の電話をしておこう。笠原さん、堂上が終わるまで、こっち手伝っといて」
回数をこなすと手際がいい。注文の電話が済む頃には堂上の方の仕事も切りがついた。
「場所の確保にブルーシートを持って行くが、参加人数の目安はついたか?」
「夜勤組以外は参加らしいからいつもの人数位になるよ。買い出ししたものを置く場所も結構いるだろうね。車から全部を一度に下ろしはしないけど、量が量だしね。じゃあ、そっちよろしく」

***

公園の桜は確かに満開一歩手前でライトアップされれば、光の加減で幽玄の世界に変わるだろう。ただ、特殊部隊の男どもには花より団子、幽玄より酒である。他の花見客の邪魔にならないように公園の端近くを回って良さげな場所を確保した。ブルーシートを所狭しと敷き終われば、場所取り組の仕事は8割完了である。
「教官、お昼のお弁当でも持って来ればよかったですね。今ならピクニック気分で食べれますよ」
「大丈夫だ、小牧に買い出しの途中で弁当を持ってくるよう頼んである」
そこへ小牧と手塚が弁当を持って合流してきた。
「夜はゆっくり見れないから、今のうち今のうち」
確かに夜は酔っぱらいのオッサン共の面倒を見なければいけない。花見どころではなくなるだろう。4人で桜とちょっと奮発された花見弁当をゆっくりと堪能した。

普段より長めの昼休みを桜の下で楽しんだ後、小牧と手塚は仕出し料理やつまみ、アルコール類と店を数店回るからと車に戻る。しゃべっていた人数が減ったせいか、郁がウトウトなり始めた。
「どうした、眠くなったか?」
一応課業中の時間ではあるが、外で二人きりだと掛ける声が甘い。
「お腹が膨れて、お日様に当たっているとポカポカと気持ち良くて・・・」
「まあ、他にできることもないし少し昼寝するか?ここ貸すぞ」
堂上が自分の足を軽く叩くと、郁が「・・・お邪魔します」と頭を乗せてきた。
「そんなに眠いか。風はないが寒くないか?」
堂上が郁の髪を梳くように撫でながら笑う。「はい、寒くないです」の郁の声は夢の中から返ってきた。寒くはなくても郁の寝顔を曝したくはないと、郁の頭の向きを自分の方へ変え、上着を脱いで掛ける。頭を撫でながら、しばし桜と郁の寝顔を堪能した。

1時間ほどすると、郁がすっきりとした顔で起きた。
「す、すみません。しっかり寝てしまって。足、痺れませんでしたか?」
郁が頭を乗せていた辺りを擦ってくる。
「おまえな~、外に居るのにそうそう触るな」
「へっ?あっ!ご、ごめんなさい。そうだ、教官も少し休みませんか?平日の昼間ですからまだ静かだし、今度は私が膝枕貸します」
そう言って堂上の頭を強引に腿に乗せる。恥ずかしくはあったが、確かに人は少ないし郁の膝枕を楽しむ機会などそうないと、開き直ることにした。堂上も少々疲れていたのだろう。程無く眠気がしてきた。

少し肌寒く感じて目を覚ますと、陽も傾いてきていてよく眠っていたのがわかった。
「教官、いつもお疲れ様です。少しは眠れましたか?」
下から見上げた郁は優しい笑顔だった。何だか起き上がりたくなくて「足が痺れていないなら、もう少しこのままでいいか?」と聞いてみると「はい」とだけ返ってきた。
「桜を横になって見るなんてあまりないですよね。実は座って見ていると見えない所にきれいに咲いているのを見つけていたんですけど」
そう言って指さす方に目をやると、薄墨の中に薄桃の花びらがまるで日本画のように見えた。
「・・・きれいだな・・・」
「・・・はい・・・」
「・・・今度は本当に二人だけで夜桜を見に来よう・・・」
「・・・はい、楽しみにしています・・・」

陽が傾いているということは、花見の宴会までいくらもないということで。公休組の隊員らが買い出しの小牧達を手伝おうと、公園に来ていた。ブルーシートが広々と敷かれている一角を目指してやって来てみると、堂上は郁の膝枕に甘えているし郁は(光の加減だろうが)女の顔で堂上を見下ろしていて、そこに甘い世界が出現していた。踏み込むタイミングが計れず、離れた茂みからコソコソと覗いてはにやけてくる。そこに緒方が到着した。
「みんな何やっているんだ?」
隊員が黙って指さす方を見てみる。確認すると、みんなが慌てるのを横目にさっさとそちらへ歩き出す。
「そのへんにしておけ、堂上。宴会の準備ができないと、困っているぞ」
突然の声に飛び起きて、その方を見ると先の到着組がニヤついていた。
「来たのなら、さっさと声掛けてください!」
堂上が赤い顔で怒鳴っても、迫力に欠けている。
「いや~バカップルワールドを壊すのも悪いと思って」
先輩たちに言われ、居たたまれなくなった郁が「準備に掛かります!」と立とうとしたが、実は痺れていた足は自由にならず、すっ転んでしまった。
「郁!大丈夫か?やっぱり痺れてたんだな」
捻ってないか確かめながら足を擦り郁の顔を見ると、真っ赤になっていて「悪かったな、長い時間」と頭をポンポンと撫でると、「大丈夫です」と呟くように返ってきた。
「だ~か~ら~、堂~上~よ~」
「堂上、本当にその辺で終わって手伝ってよ。もうじき隊長も来るから」
上戸をなんとか我慢している小牧にさえ言われる始末で。
「準備にかかるぞ、笠原」「はい、教官」
と、先輩たちの笑いを背に受けてその場を離れたが、結局その日の宴会の観察ネタにされたのだった。

00:09  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://746754.blog.fc2.com/tb.php/208-168684b9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |