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2013'04.01 (Mon)

「ヒーロー」(リク5)

寒いです。冬に逆戻りですね。
こんな中、合格祝いの男旅。釣果は期待出来ないでしょう。気の毒に。新幹線に飛行機にレンタカー…。釣りの為だけに準備したのに(T_T)。少しでも楽しんでればいいなあ。
居残り組。長女は新体操の部内発表会でした。1年間の成果はなかなかのもの。楽しんで演技が出来ました。
さて、更新です。チビがいないからか時間が取れました。いやぁ、静かなこと。
上官・部下で革命中です。リクエスト内容は最後に追記します。また微妙にズレてるかも(^^ゞ。

↓こちらから どうぞ


【More】


「ヒーロー」


日野にある稲嶺の自宅を隠れ家として 当麻は身を潜めていた。
その間の警護は堂上班で担当し、堂上と郁・小牧と手塚が組んで1日交替で当たる。今日は堂上と郁組。
稲嶺には書斎や書庫も自由に使って構わないと言われているので、当麻は書斎でノートパソコンに向かい、出せるかどうか分からないと言いつつ 執筆中の小説の続きを書いているようだ。稲嶺は自室。居間では堂上が持ち込んだ書類を処理している。
手持ちぶさたな郁は ちょっと書斎にいる当麻を覗いてみた。郁は、堂上のように憧れの作家だからと緊張し過ぎる訳ではなく、意外と気さくなおじさんだ、と接しやすく思っている。実際 偉ぶる作家先生というよりも、物腰の柔らかい普通の人物だ。突然事件に巻き込まれて戸惑う毎日を送っている当麻も 普段接する機会が少ないという若い女性(些か規格外だが)と話すのは楽しいとも言ってくれている。郁は執筆の邪魔にならない程度で気晴らしに と世間話の相手をしに書斎を覗いた。
「あれ?」
いつもの机の前にはいない。続き部屋になる書庫の戸が空いていたので声をかけると 奥から当麻が返事をした。
「資料になる本を探していたんですよ。さすが色んなジャンルがありますね。非常に興味深い。」
何冊か本を抱えて出てきた当麻は にっこりと郁に微笑んだ。
「笠原さんはどんな本を読みますか?」
書斎のサイドテーブルに本を積み上げて郁に問い掛ける。
郁はざっとその本のジャンルを見てとると、うーんと顎に手を当てて首を傾げた。
「結構ジャンルは問わない方だと思いますけど。難しい説明文なんかはすっ飛ばしちゃってキャラクターだけを追いますからね。あ、当麻先生のシリーズ本 全部読みました。異様に読み終えるのが早いですけど。」
「ああ、説明長いですからね。」
「でも主人公、スッゴくカッコいいです!。友情を確かめ合うところとか、クライマックスは何度も読み返しましたよ。」
「それがキャラ読みってヤツですね。」
何とも和やかな雰囲気だった。
「おいこら、作者の前で失礼極まりないぞ!」
申し訳ありませんと当麻に頭を下げながら堂上は書斎に入って来ると 郁を睨み付けた。そういえば『どうファンか絶対言うなよ』と 釘を刺されてたっけ、と郁は舌を出して首を竦めた。
「いいんですよ。正直なところが聞きたいんですから。私の作品は堅いですからね、笠原さんみたいな人にも読んで貰うにはどうしたらいいか教えて頂く良い機会です。」
「参考になりますかね。」
堂上は頭を掻いて苦笑する。

居間に移って暫し休憩する事になった。稲嶺も誘い、郁がコーヒーを淹れる。さすがにインスタントではない、芳ばしい香りがたちこめる。
「では キャラクターがより魅力的であれば読みたくなりますか?」
当麻は調度品であるソファーに座ると コーヒーを配り終えた郁に続きを促した。
「今でも十分魅力的ですよ。」
郁はトレイを抱えたまま当麻の前に腰をおろした。
「いえ、せっかくですから笠原さんの好きなヒーロー像を教えて欲しいですよ。」
読者にインタビュー。そんな態の当麻は珍しい。普段は訊かれる側ばかりであるからか。ここ数日の緊張を忘れたかの様子に稲嶺も堂上も表情を緩めた。
「えーと、あたし先生の警察小説も読みました。あの主人公 好きなんです。犯人追い詰める時の肉弾戦なんてドキドキしました。格闘技 強いですよね。勿論射撃の腕もいいし。意志も強くて 若いのに先輩刑事を束ねる力があって頼もしいです。」
「ああ、あの男の描写はもう少し深く掘り下げても面白かったですかね。どんな感じだと良かったと思いましたか?」
「そうですねぇ、完璧過ぎるのも作り物っぽくて。冷静な面もあるけど篤くなると見境無くなるとか、睨むと恐いけど優しい目もするとか、分かりにくい照れ屋で普段は仏頂面だけど笑うと案外可愛いとか……あれ?」
どこかでそんな人知っている気がする。
「失敗したら直ぐ説教するくせに間違えてもチャンスをくれたり、実は犬好きで、食べなさそうなケーキを食べたり、字は汚くて、あまり言わない愚痴だってつい溢したりするような―――」
口が勝手に動くのは 具体的なヒーローの像が頭に浮かんで来たから。それを自覚した途端、カッと頬に熱が集中する。目が泳ぎ 堂上にたどり着くと、一瞬お互いの視線が絡まった。
ブブブ、と堂上の胸ポケットから 携帯のバイブ音がなった。
「失礼します。」
堂上はつい と視線を外し、携帯を取り出しながら立ち上がると廊下に出ていった。
郁は抱えていたトレイに顔を埋めた。――やっちゃった。本人目の前にして何言ってんのよ。変に思われたかも。
居たたまれなくて小さくなっている郁に稲嶺は声をかけた。
「素敵な主人公ですね。わたしもそんな人物の物語が読んでみたいです。」
郁は益々小さくなり、真っ赤になる。微笑ましい光景に、稲嶺と当麻は廊下に消えた背中に無言でエールを送った。

夜は客間の布団で当麻は休む。堂上は警護の為に同室に寝袋を持参した。暗くした室内でライトを灯し、明日の警備計画に目を通す。広げていた書類を確認してカバンに入れる段階で、一部を隣の居間に置き忘れてきたのを思い出した。

電気を落とした居間のテーブルにファイルを見付けると手を伸ばした。常夜灯だけの室内に スースーと寝息が聞こえる。辿れば 大きめのソファーの上で寝袋に丸まった郁が寝ていた。
「寝付きのいい奴だな。」
今襲撃があったらアウトだぞ、と深く眠っている様子の郁に苦笑する。ファイルを手に部屋を出る為にドアノブに手を掛けると
「きょうかん。」
と郁の声がした。
「起きてたのか?」
堂上の問いに返事は無い。近付けば幸せそうな寝顔。いや、幾分疲れが見て取れるか。
「おまえは痒いこと言いすぎだ。」
郁の枕元に立ち 少し屈んでそっと覗き込んだ。
郁があんなに目を輝かせて語るヒーロー像を、自分の事かと勘ぐってしまう。差し出せばこの手を取ってくれるだろうか。もう届いているような錯覚に陥ることもしばしばだ。
「ん、きょうかん。」
くそっ、そんな声で俺を呼ぶな。我慢出来なくなる。――おまえの中で俺はどれだけの存在になっている?
ソファーの背もたれに右手をかける。繰り返される郁の声に吸い寄せられるように覆い被さるが、唇が額に掛かる前髪に触れる直前でピタリと止まった。

俺はおまえの王子様じゃないのにな。

昔の自分に嫉妬して何年にもなる。決着つけようとした矢先に事件が勃発して お預け食ったままでいるのが辛いのは自分だけなのか。それとも―――。
今まさに襲撃があってもおかしくない状況で何を考えてるんだ、と身体を引き剥がして立ち上がった。
「おやすみ。今はよく休め。」
ファイルを片手に静かにドアを閉めると 早々に堂上も自分の寝袋に潜り込んだ。耳に離れない郁の声を抱いて目を閉じる。
稲嶺邸の夜は静かに更けていった。


===========


リクエストは 抹茶ナッツさんより、「双方自覚後のジレジレ期で、郁ちゃんの天然の行動もしくは表情に対して堂上教官がときめいてしまい、心の声で クソッかわいいな と悶えるシーン」でした。
ん、堂上さん 悶えきれませんでしたか。いえ、寝袋の中で悶えているのです。実は堂上さんだけ静かに夜が更けなかった訳です。ね(^.^)b。ときめいたのは当麻先生だったかも。きっと書いてる小説に反映されるはず。てか、我が家の郁ちゃん このパターン多いですね…。でもジレジレ大好きです。抹茶ナッツさん、ジレジレ期を感じて頂けたでしょうか?。リクエストありがとうございました\(^O^)/。

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