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2013'04.09 (Tue)

「目撃して」後編(リク7)

午後から入学式なので 準備をしている英香です。っても着替えて出るだけですが。
チビの担任が、この春新卒の男の先生と判明。今までベテラン又は中堅どころの先生ばかりだったので いろいろ楽しみ(←分かるよね)。
上の子達の時は 「ベテランさんにしっかり指導して貰った方が安心」なんて思っていましたが、チビに関しては「楽しく登校すればいいんじゃない?」と ゆる~い教育。特に学習面なんか放ったらかしで(;^_^A。後で苦労しそう…。
更新です。後編になります。あっさり( ̄□ ̄;)!!なんで 肩透かしだったらごめんなさいっ。

↓こちらから どうぞ


【More】

「目撃して」後編(リク7)


郁は堂上の顔を見て立ち竦んだ。
堂上達の姿を見たくなくて反対方向に向かったつもりだったのに、結局また目撃してしまった。しかもかなり親しげな様子を…。
「笠原。おまえも買い物か?」
「……明けまして、おめでとう、ございます…。」
郁は頭を下げて挨拶をした。
「ああ、明けましておめでとう。」
堂上が郁に歩み寄るが郁の頭は下がったまま。もう顔が見られない。下げた視界に堂上の足元が入ってきた。
「?どうした。」
ぽん と頭に置かれた手の温もりに涙が滲む。
「すみませんでした。…あたし、知らなくて。」
「?」
「カ、カミツレのお茶の約束は 無し、という事で!」
「はあ!?」
郁の突然の宣言に 堂上は眉間の皺を深くした。
がばりと頭を上げた郁の目から涙が落ちると、それが合図のようにダッシュで堂上の横を擦り抜けた。
「な、笠原!」

新年会の会場に向かう静佳の横を風が抜けて行った。
「なに?」
なびくショルダーバッグを押さえていると、再び風が抜いて行く。目を向ければ見覚えのある後ろ姿。
「兄貴?」
その背中は直ぐに人混みに消えてしまった。

郁は人波を交わしながら走る。
「待て、笠原!」
後ろから堂上が追ってくるのが分かる。なんで追いかけてくるの、なんで放っておいてくれないの。
駅のコンコースを抜けて前にある道をがむしゃらに走ると記念公園に出た。散策用の小道に入るところでぐいっと腕を捕まれた。
「待てと、言ってるだろっ。」
短距離では郁に適わない堂上だが体力的には勝っている。何とか追い付いたが、それでも2人 暫くは息を整えるので精一杯だった。
「あほう、人混みを全力で走るな!。子供や年寄りにでもぶつかったら危ないだろが。」
取り敢えず拳骨が落とされた。
「きょ、教官が追いかけて、来るから。」
「お前が逃げるからだ。」
「だって……。」
前傾姿勢でいた身体を起こした郁の膝が折れ、ぐらりとよろけたところを堂上が支えた。胸に倒れ込んだ郁を 抱き抱える形になる。
「す、すみません。」
ぐいっと胸から離れようとする郁を 堂上は押し留める。
「ちったあ 休ませろ。」
堂上の腕に力が籠もった。
――心臓の音が聞こえる。走った後だからか 鼓動は速くて大きい。これは自分の音?教官の音?。
しかしすぐにこの状況に気が付いた。
「あの、か…彼女さんに見られたら 大変な事に…。」
「…何の話だ。」
腕の中でもぞもぞする郁に 片方の眉を上げて訊く。逃がすものかと腕は外さない。カミツレのお茶を飲む約束をキャンセルするなんて事は聞き捨てならない。ここまで持ってくるのに何年かけたと思ってるんだ。
「教官には、腕を組んで歩いたり…プレゼントをする …大切な女性がいるんですね。あの、とってもお似合いで…。」
見たくなかった。でも目を閉じればあの光景が焼き付いて離れない。目を開けて「そうだ」と頷く堂上も見たくない。
「あ―あれはだな…。」

「あ、いたいた。ちょっと、どうしたのよ!」
その声に 抱き合っていた態の2人は飛び退いて離れた。
「あっ…。」
堂上の手が離れた隙に 郁は踵を返すと走り去ってしまった。
「え? なになに? もしかして修羅場? 面白ーい。」
郁を取り逃がした堂上の背中を叩いて、静佳の顔は残念そうに、しかし愉しげに笑って言った。
「駄目じゃーん、チャンス逃しちゃ。」
「し――ず――か――。」
堂上の膝ががっくり折れた。

どうやって寮に戻ったのか 郁に記憶はない。心許なくてずっと抱き締めていた紙袋はぐちゃぐちゃだ。
足取り重く玄関に入った郁にソファーに座って新聞を読んでいた人物が声をかけた。
「こんな遅くまで 女1人で出歩くな。」
「……待ち伏せですか、教官。」
ここで逃げても明日から仕事で顔を合わす。元々ただの上官と部下の関係だ。上官に彼女がいたとしても部下の郁には関係ない事。そう割り切れるように頭を冷やして帰ってきたつもりだ。しかし堂上への想いが大きくなりすぎていて 胸の痛みは暫く癒えそうにはないが。
堂上はといえば、散々あの妹に振り回された後だ。今1番手に入れたいと思ってタイミングを計っている郁に偶然会えて、普段の数倍嬉しかったのが、一方的に約束をキャンセルされて珍しく焦っていた。
「いいから人の話を聞け。昼間の女は妹だ。」
「分かってます。妹なんですね!」
堂上の説明はストレートだった。
「へ?…い 妹?」
大きく頷く堂上の顔を 郁は漸く正面から見た。
「少々…いや、かなりぶっ飛んでいる 正真正銘の妹だ。買い物に付き合わせてかつ報酬まで奪い取っていきやがった。」
買い物の中身は言えんがなと溢しつつ、苦虫を噛み潰したような表情の堂上を 郁は穴があくほど見つめている。
「信じろよ。」
「そう、だったん…ですか…。」
「…でないと、困る。」
つい と横を向く堂上に郁は首を傾げる。
「何がですか?」
「いいからっ。」
わしゃわしゃと郁の頭を掻き混ぜた堂上は その手を止めて郁の顔を覗き込んだ。
「で、カミツレのお茶を飲みに行く約束は――有効か?」
「――はい、宜しければ。」
はにかんだ笑顔を見せた郁に 堂上は心底ホッとして、ぺしりと郁の頭を叩くと自販機に向かった。
「何か飲むか?」

男子寮の出入口の陰。
「ガッツリ デートの申し込みに聞こえるんだが。」
「やっぱり?。本人達は全力で否定するんだけどね。」
見付からないように巨体を小さくしている土井と必死で笑いを堪えている小牧だ。
「いつの予定だ?」
「今度の公休、15日。」
「よし、スクープだな。みんなに報せねば。」
土井はこそっと後退して部屋に向かった。
県展後の堂上の表情は 何か吹っ切れた感があった。頑なだった蓋の存在感が薄まった様で、2人が寄り添って眠る帰りのバスの中で「いつ成立するか」恒例の賭け大会が行なわれたのは当然な成り行きだ。
「俺、何も言ってないからね。」
駄々漏れなのが悪いのさ と小牧はロビーの2人を盗み見る。
郁にミルクティーを渡す堂上の柔らかな笑みは、如何に郁を愛おしく想っているかを物語っている。漸く動き始める親友の恋を 静かに応援するには、些か周りが騒がしいか と苦笑する小牧だった。


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リクエストは お名前秘密で「カミツレデート前に堂上さんと静佳さんが一緒にいるところを郁ちゃんが目撃し『彼女』と勘違いしてドタキャンし、堂上さんが必死に誤解を解いて 無事カミツレデートに持ち込む話」でした。
堂上さんの必死さより、静佳さんが楽しくて(^^ゞ。郁ちゃんと同じく土壇場では素直に。郁ちゃんの為にもスパッと誤解を否定して貰いました。多分小牧さんや静佳さんの突っ込み回避の方が大変かと思われます。
こんな感じになりました。いろいろ振り回される堂上さんが可愛くて楽しく書けました。リクエストありがとうございました(^-^)。
09:42  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2013年04月09日(火) 17:11 |  | コメント編集

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 | 2013年04月15日(月) 21:22 |  | コメント編集

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