All archives    Admin

07月≪ 2020年08月 ≫09月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031

2013'04.29 (Mon)

「憂鬱な時を」4

映画を観てきたぞーの英香です。
が、とにかくバタバタな1日でした。
その辺は後で書くとして、日付け変わっちゃうんで更新です。切りどころが分からなくなりましたが 続きです。

↓こちらから どうぞ


【More】

「憂鬱な時を」4


男女各4人が向かい合って座っている。
木村が中心となって順に自己紹介から始まった。
集団見合いか。場違いが気になって興味なさ気な堂上の分は木村がフォローした。そつなく話す木村に アピールする武田。もう1人のメンバーである安藤は真っ赤な顔で自己紹介を終えた。
女性陣は第二図書館の業務部仲良し4人組 との事だった。歳は25・6。カウンター業務で培われた笑顔が振る舞われていた。それぞれ自己紹介し 最後は篠田。目の前の堂上に視線を向ける。
「篠田ゆかりです。学生時代はバスケットをしていました。身長があるので男性には敬遠されますが…。」
女性としてはコンプレックスなんであろう、俯く姿に部下が連想される。
「堂上なら大丈夫だよ。免疫あるから。」
木村のセリフに堂上はぎろりと睨んだ。
「ホントですか?良かったあ。私、堂上二正が第二図書館に来られる時いつも遠くからお見かけしてて かっこいいなあって思ってたんです。でもこんな大女だし…。」
「それを言うなら こんなチビでがっかりしたんじゃないか?」
堂上が自嘲するように言うと篠田はブンブンと首を振った。
「そんなの関係ないです!堂上二正は堂上二正です!」
「なら問題ない。デカくても自分は自分だ。」
誰に向かって言ってんだか。堂上はグラスに注がれたシャンパンを呷った。細身のグラスはお洒落な演出か。物足りない堂上の眉間に皺が寄った。
「あ、ビールの方が良かったですか? すいませーん。」
真っ赤になった篠田はすかさず店員を呼び止めビールを2つ注文し、料理も追加する。テキパキとした動きは要領のよさを裏付ける。飲み会では常に受け身のよく知った部下とは違うタイプか。
特殊部隊での飲み会は 大量の料理とアルコールでテーブルが埋め尽くされる。アルコールに弱い郁が堂上に制限された飲み物を傍らに 出された料理を片っ端に平らげる。それは見事に。
堂上はその郁の食べっぷりが好きだ。量は多いが、厳しい母親の躾の賜物か、姿勢良く綺麗に食べる。見ていて気持ちがいいのだ。
ただ、ちょっと目を離した隙に 悪のりし過ぎる隊員達に酒を飲まされては寝落ちするのも定番で、それをつい甲斐甲斐しく世話する自分に気付く。元々の性格もあるが 始めは上官の仕事として、次第に上官と言い訳をして、今ではその世話を誰にも譲るつもりはない。他の男に寝顔を晒させたくなくて自分の上着で隠してやると、もぞもぞとその上着を握る郁の仕草に 自分の庇護欲やら独占欲が満たされる自覚がある。
堂上は目の前の料理とアルコールを黙々と口にする。周りの話には適当に相槌を打っておけばいい。何かと郁を思い出すのは 合コンなどと男女の出会いを強要される場だからか。郁との強烈な出会いほど印象に残るものはない。まさかこんな感情を持つ事になるとは思わなかったが。
「堂上二正、堂上さん!」
その声に意識を引き戻された。
「話 聞いてますか?…つまらないですか?」
目の前の篠田が眉を下げて訊いてきた。
篠田は積極的なタイプらしい。盛んに話し掛けてくる明るい性格だ。「ああ」とか「うん」しか返さない堂上に めげずにアピールする。改めて篠田を見やる。女性としては綺麗な部類だろう。鼻筋の通った洗練された美しさがある。堂上のグラスが空けば自然に注ぎ足し、料理もせっせと取り分ける気が利く女性。多分十分魅力的だと男どもは感じるだろう。
隣の女性はサラダを中心にちまちまと料理をつつく。小さくしたものを小さな口に少しずつ運ぶ。その点篠田は豪快だ。新しく運ばれてくる料理に次々手を出し、ビールも呷る。ふと堂上と目が合うとぴたりと箸を止めた。
「私 よく食べるんですよ。横にこないで上に伸びたみたいです。」
「そんな感じだな。」
堂上は郁を連想してふわりと笑った。
その笑顔は この時間を心ココにあらずと黙々としていた堂上からは想像できなかった程の威力だった。篠田は持っていた箸を取り落としそうになった。

たまたま来た店が堂上の合コン会場。んな訳あるかい と郁は柴崎を見るが後の祭り。案の定いかにもつまらなそうな堂上の顔をチラチラ見ながらの食事になった。
確かにこういう場は苦手そうだよね とは思う。しかし合コンという特性上、そして今回は手紙の女性がいるということで どうしても推移が気になる。
相手の女性は郁に背中を向けている形をとってはいるが、先程立ち上がった時に 堂上より明らかな長身だとわかった。
大きくったって 好きになったら関係ないよね。
傍からみたらあたしと教官のバランスってあんな感じなのかな。
ぼんやり見ていたら柴崎が囁くように言った。
「気になる?」
「そっそんなの――」
当たり前。
グラスを傾けて またチラリと見れば ふわりと笑った堂上が目に入った。
やだ。
あんな顔するんだ。あんな柔らかい、あたたかい笑顔は――あたし、知らない。他の人には見せるんだ。
郁の胸にモヤモヤとしたものが渦巻いた。

木村が「さて。」と声をあげた。
「そろそろ場を移すか。二次会でもどうだい?。呑むのもいいし、カラオケにでも行くか。」
そうしよう と各人が賛成する中、堂上は先に席を立った。
「悪いが明日は訓練が入っている。俺はこれで失礼する……。」
「あ、じゃあ私も!」
篠田も慌ててバッグを取った。立ち上がって堂上に寄ると、ふらりとバランスを崩した。自然と堂上に縋れば たくましい腕は難なく支えてくれた。
「危なっかしいな。堂上、送っていってやれよ。」
ほろ酔いの武田が堂上の肩を叩いた。
「いえ、私 マンション近いので…。」
恐縮する篠田を皆が堂上に押し付ける。
堂上がため息をついて出口に向かうのを 篠田は追って行く。郁はその姿を寂し気に見送るしかなかった。
23:59  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://746754.blog.fc2.com/tb.php/239-18d297d5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |