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2013'05.01 (Wed)

「憂鬱な時を」5

おはようございます。
今朝は旗振りでウルトラの母してきた英香です。…みどりのおばちゃんね。分からなければスルーして下さい。
なんかね、ふと気付くとニヤニヤしてる自分がいます。パンフレットの岡田教官の正面ショットが…。彼の目には吸い込まれますね。
図書戦の世界が彩りよく感じられるようになりました。
映画は別物だからっていう作品も多いですが、こんなに原作を大事にされたのは それだけ魅力的なお話だからですよね。つい自分の話に作り替えちゃいがちな中、弄らずに大切にしたくなる世界観がここにあるよね~。そんなことも思いました。
さて 更新です。あと2回くらいかな って感じです。

↓こちらから どうぞ


【More】

「憂鬱な時を」5


篠田が堂上に追い付くと腕を絡めたのが見えた。
郁はその様子に目を逸らすと箸を置いた。
「どうした 笠原。」
急に大人しくなった郁に手塚は眉をひそめた。
「んー、たまたまここが堂上教官の合コン会場だったみたいよ。」
しれっと言う柴崎に手塚は目を剥いた。
「な、覗き見しに来たみたいじゃないか。」
郁はきゅっと唇を噛んだ。
「覗き見、だよね…。」
「敵情視察とも言うわね。」
どうする?と柴崎は郁に笑顔を向ける。
「尻尾捲いて逃げるもよし、乗り込んでいくのもよし。」
「た、只の部下にそんな権利ないしっ。」
氷で薄まったチューハイを飲み干して タンとテーブルに置いた。
「あ、そ。じゃああたしと手塚は店を変えるわね。あんたはどうするの?」
勝手に話を進める柴崎に何か言いた気な手塚を制しながら郁に訊いた。
「あたしは…帰る。」
ふらりと立ち上がって会計を済ますと 郁は柴崎達と別れて1人で歩いて行く。
「おまえ、何考えてるんだ。」
別れたものの 郁の方に振り返りながら手塚は訊いた。
「別に。問題は自分で解決するとしたもんでしょ。あんた、何年堂上班にいるのよ。あの娘のフォローは誰がするの?」
「しかしだな――。」
「あら、あの教官があたし達に気付かなかったとでも思ってるの?」
周りの気配に聡いあの人が。
「狙ってたのか。」
「さあねぇ。」
さっさと歩きだす柴崎に問う。
「でも何で。」
手塚の疑問文に柴崎は小さくため息をついた。
「あんた まだそこなの。まあいいわ、飲みましょう。」
「はあ?」
分かってそうで分かっていない手塚を引いて 柴崎は馴染みの店に向かった。

篠田は堂上に絡めた腕を引き寄せた。
「ちょっと酔ったみたいです。」
しなだれかかると 不意に堂上は腕を解く。
「…酔ってないだろが。足取りはしっかりしているし 酒には強いとみたが。」
「ばれちゃいましたか。いい雰囲気に持っていけると思ったんですけど。」
篠田は肩を竦めた。
「したたかな女は嫌いじゃないが、武器にされるのは好みじゃないな。」
そのまま歩きだすと 声だけかける。
「駅でいいか。」
そこまでは送ってくれるらしいと分かって 篠田はホッと微笑んだ。
「私、駅裏のマンションなんです。そこまでいいですか?」
小走りで堂上の隣に寄り添って暫く歩いた。
「木村二正から聞いてます。堂上…さんには大切にしてるお姫様がいるって。」
「…あのヤロ。」
チッと舌打ちする。
「でも お付き合いしてるわけではないですよね。」
駅を抜けて裏のターミナルを過ぎる。
「私、ずっと見ているだけでした。でも木村二正に相談して勇気を出そうって決めたんです。」
マンション前で立ち止まった。引き返そうとする堂上の手を取る。
「私のこと、もっとよく知って下さい。私の部屋で飲みなおしませんか?」
篠田の顔は最大限に赤く。
声には強い意志が感じられた。

駅を通らず小道に入る。図書隊の寮への近道になる。
大通りから一本入った辺りの飲み屋街に差し掛かったところで 見知った顔が向かって来た。
「あら、堂上教官。」
声をかけてきた柴崎に堂上が片眉を上げる。
「何があら だ。――2人だけか?」
一緒のはずの部下が1人足りない。
「そろそろメールを差し上げるところでした。迷い犬が出没中って。」
「1人で帰したのか?」
堂上は手塚を見た。
「あ、えっと…すみません。」
おろおろと手塚は一歩引いた。
「ネズミに引っ張られなきゃいいですけど。」
人差し指を顎に当てる仕草をして上目遣いで見る柴崎の肩を、堂上は軽く叩いて2人の間を擦り抜ける。
「笠原なら何かあっても自分で叩きのめすんじゃないのか?」
堂上の背中を見やりながら言う手塚に苦笑する。
「はいはい。行くわよ。」
柴崎は手塚の背中を押しながら暖簾をくぐった。

郁の携帯が鳴った。
堂上からだ。
恐る恐る出ると電話の向こうから焦った堂上の声。
『どこだ。』
「へ?」
『今どこにいる。』
「え、あの……」
辺りを見回して目印になるものを探した。
「基地手前の児童公園が見えるところです。ポプラがある…」
『いた。』
ぷつりと通話が切れた。
「笠原!」
後ろから声がかかった。
「教官…。」
郁は何故堂上がここにいるのか 不思議に思った。
「どうしたんですか? だって教官は―。」
あの女性と腕を組んで行ってしまったんじゃなかったの?。郁は唇を噛んで横を向いた。
「義理を果たしてきただけだ。」
走って来たらしく 額の汗を拭いながら堂上は息を整えると、一歩郁に近付いた。
「ん、そんなに酒は入れてないみたいだな。」
郁の首もと辺りの匂いを嗅ぐ。
「ひゃあ!犬ですかっ。」
郁は首を手で押さえておののいた。
「こっちは迷い犬がいるって聞いたぞ。」
「犬って…。」
「お互い様だ。…こんな夜に1人になるな。」
堂上は顎をしゃくって歩みを促した。児童公園の自販機前に立って小銭を入れる。
「飲みなおすか。」
「お酒ですか?」
ガコンと落ちてきたコーヒーを取り出す。
「あほう、明日は訓練だ。だいたい児童公園に酒が販売されてたらおかしいだろが。」
もう1本はホットのミルクティー。郁に手渡すと近くのベンチに腰を下ろした。
「ありがとうございます。」
郁も躊躇しながら 人一人分空けて隣に座る。
静かな夜の空間にプルトップを開ける音が響いた。温かく甘い液体が口の中に広がって ホッと息をついた。
合コンはどうでした? あの女性とはどうするんですか?
訊くに訊けない。覗き見していた後ろ暗さがある。
「今日は肩が凝った。」
堂上からぼやきが漏れた。
「ああいう場は2度とごめんだな。いつもの宴会の方がよっぽど酒が旨い。」
堂上はコーヒーを口に含んで両手で缶を包み込んだ。
「近々班で飲みに出るか。イベント準備で忙しくなるからな、息抜きも必要になるだろう。」
グッと飲み干して立ち上がると缶をゴミ箱に放り投げる。
「はい。」
堂上はここにいる。それだけでモヤモヤしていたものが半減するようだ。手にした缶を見つめて肩の力を抜いた。
郁を見下ろす堂上は愛しい者を慈しむ視線を投げ掛けている。勿論郁の目には映らなかった。

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