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2013'05.05 (Sun)

「憂鬱な時を」7(完)

良い天気。でも風がある。
今日は大掃除をすると 迷惑な宣言をしている主人に、家族がため息ついています。風呂敷広げて全部棄てて 後は宜しくってのが、いつものパターンですもの(-ω-)。
今のうちに更新です。分ける話じゃないのでこのまま完結話にしました。あ、甘さが足りない?。精進します(T_T)。忘れてたよ。
オリキャラ出張るので毎回連載ものは大丈夫かなあとちょっと心配。感想いただけると幸いです。

↓こちらから どうぞ


【More】

「憂鬱な時を」7(完)


堂上の合図を待たずして親子が動いてしまった。
犯人の銃口が親子に向けられる。篠田の目に銃口がきらりと光ったように見えた。
「堂上さん!」
思わず篠田が目の前にある堂上の背中に縋りついたのと同時に、郁が親子を庇うように咄嗟に飛び出した。
銃声は2つ。
郁が倒れていくのを見て 堂上の頭は真っ白になった。
「笠原!」
背中の篠田を振り切り 弾丸の様に飛び出していく。銃を弾かれ右手を押さえる犯人の腕を取り、力任せに身体を跳ね上げ床に叩きつけると、斎藤が駆け付けそのまま確保した。
堂上は郁の元に駆け寄った。
「笠原!おい笠原!」
横に倒れて動かない郁を抱き起こし、懸命に呼び掛ける堂上の顔は苦痛に歪むようだ。
「――大…丈夫です。」
堂上の腕の中で、郁は手を僅かに上げた。力なく瞼を開ける。
「へへっ びっくりしちゃいました。」
へにゃりと笑った郁を 一瞬きつく抱き締める。
「あほう、心配させるな。」
郁を解放した堂上は心底ほっとして肩の力を抜いた。
篠田の指先は痺れていた。縋りついた篠田の指を力の限り振り払った背中が あっという間に遠くに駆けていった。
顕らかな拒絶。
「笠原」と呼ぶ女性隊員の無事を確認した堂上の表情は、戦闘中のそれとは全く違う。
今でこそ「反射で動くな」「案件は脳まで持っていけ」と拳骨を与えているが、大切に想っているのがありありと伝わってくる。

合コンの夜、マンション前まで送ってくれた堂上を 思い切って誘ってみた。「お姫様がいる」と木村二正から聞いていたから、生半可な誘いは届かないと思ったのだ。本来の自分では考えられない程大胆に。
「私のこと、もっとよく知って下さい。私の部屋で飲み直しませんか?」
足が震えた。でも堂上さんになら――。
「いや、結構だ。」
あっさり駅に向かおうとする堂上の腕を離さない。薄々脈が無い事は感じていた。でももう少し。
「…それは 私が大女だからですか?。釣り合わないから?。」
「あのなあー。」
堂上は大きくため息をついた。
「大きいとか小さいとかは問題じゃないと言っただろが。そんな事言ってたら 俺なんか惨めだぞ。」
「あ、そんなつもりじゃ…。」
篠田は慌てて手を離して首を振った。
堂上は篠田に正面から向き合った。
「そんなに自分を卑下してやるな。背の高いのはマイナスじゃない。立派な魅力の1つになる。」
「でも…。」
長年のコンプレックスだ。簡単には拭えない。
「俺の知ってるヤツは その高さや能力を十分活かして自分の居場所を作っている。なにも小さくて可愛らしいばかりが女っていうもんじゃないしな。おまえの気の利くところや積極的な性格を気に入る奴も多いだろ?。」
「…堂上さんには気に入って貰えないんですね。」
篠田は俯いた。堂上は何も言わない。言われなくても分かる。
「…据え膳なんですが。」
「勿体ないとは思ってる。」
堂上の言葉に篠田はクスリと微笑んだ。

去っていく堂上の後ろ姿が見えなくなるまで見送ったのは昨夜のこと。篠田にはまだ完全に諦めるに時間を必要としていたのに、目の前の現実は胸に刺さった。

犯人が親子に向けて発砲するまえに 手塚の狙撃によって銃が弾かれた。その弾みで犯人の弾が逸れて 飛び出した郁の脇を掠めていったのだ。怪我こそなかったが 一歩間違えれば生命に関わる。
発砲や狙撃によって散乱した破片や犯人の血痕の始末をしながら堂上の説教は続く。郁は自分の軽率な行動で堂上に心配させた自覚があるものの 些かげんなりだ。
「はあ……もう駄目だ。」
郁はその場に座り込んだ。
「どうした、どこか怪我でもしてたのか――。」
堂上は駆け寄ろうとした。
「お腹空き過ぎて死にそう……。」
「…さっさと手を動かせ。」
ううっと唸りながら 郁は足元に散乱した破片を集める。
ふと前のガラスに目がいった。
そこに映る郁の後ろにいる堂上の姿。優しい 暖かな目の柔らかな表情で郁を見つめている。微かに上がった口角のその笑顔は今まで見たことのない堂上だ。郁の心臓がドキンと跳ねて 思わず後ろを振り向いた。
堂上はいつも通りてきぱきと動いている。
――見間違い?
郁は首を傾げた。

ああ、本来あの笑顔は彼女に向けるものだったのね。篠田は合コンで射ぬかれた堂上の笑顔を思い出した。少しの間 夢を見られただけでも幸せだったかもしれない。
第二図書館は事件があったことを忘れるかのように いつもの空間に戻りつつある。篠田は2人の姿を胸に納めて 防衛員に促されながらその場を去った。


「よう 堂上。先日はお疲れだったな。」
食堂で昼食を取っていると また木村二正に声をかけられた。先日というのは 第二図書館で起きた3人組の発砲事件の事であろう。結局良化隊とは無関係な暴徒の犯行という事であった。
「今度は何だ。面倒な事はゴメンだぞ。」
堂上はおよそ警戒しながらソースカツを齧る。
「まあまあ そう言うなって。この前は世話になったなっていう挨拶だよ。」
木村はトレイを置いて席に着いた。
郁はあの事件以降も 堂上の合コンでの話は聞いていない。話題にものぼらなかったが気にはして悶々としていたからつい耳がダンボになる。
「彼女がさ、笠原さんにごめんなさいって謝っておいてくれって。」
「え、あたしですか?」
いきなり振られてびっくりした。
「何でも 自分が余計なことして笠原さんが撃たれそうになったって。」
「へ?。あれはあたしが勝手に飛び出しちゃったからで…。」
郁は堂上のフォローが遅れた理由は知らない。そもそもそれどころではなかったのだ。
「脊髄で動いたヤツが悪い。」
堂上の言葉に「どうせ成長してないですよーだ」と舌を出す。
「ま、とにかく彼女、堂上には振られたようだから 後はこちらが頂くとするよ。」
へー 振ったんだ、と胸の内で安堵してから?となる。
「何の話だ。」
堂上も木村を見る。
「いや~、アプローチしようと声掛けたら いきなり恋の相談なんだもんな、参ったよ。しかも他の男が好きだからどうしたらいいかなんて訊かれたってどう答えたらいいんだか。でも相手は堂上だっていうから、応援したって無駄だしさ。」
郁の「何で?」という疑問は無視された。
「ここはサッサと玉砕して貰って 彼女を慰める役を買って出ようと。」
木村はうどんをすすって咀嚼する。
「傷心した女は落としやすいってな。」
似合わないウインクをする木村に一同開いた口が塞がらない。
「おまえは絶対OKしないって分かってたから 安心して焚き付けられたよ。さっぱりした方が新しい恋に向き合いやすいだろ?。思ったより早くて助かったよ。」
外回りの仕事をする人間らしくペラペラ喋って うどんの汁まで飲み干した。
「木村、おまえ 最初っから…。」
睨む堂上にVサインを向ける。
「勿論。言ったろ?。チャンスは逃さないって。」
木村は席を立ちながら堂上に手紙を渡す。
「これ、彼女から。」
いらない と断る堂上に笑顔で言う。
「俺も読んだ。別にラブレターって訳じゃないし。お礼の手紙かな。他のヤツが読んでもいいみたいだぞ。」
堂上は渋々手紙を広げると 興味津々で小牧や柴崎、郁までもおずおず覗き込んだ。手塚は遠慮した。
内容は先日の事件での救出のお礼。いろいろ迷惑おかけしましたがありがとうございました と締めている。
その下。
皆 書類処理に長けているエリート達だ。文字を読むのは早い。――郁以外は。
堂上は下まで目を走らせ終わらない内に慌てて手紙を閉じてポケットに突っ込んだ。
「あ、まだ最後まで読んでないです!」
郁の声に堂上は「必要ない!」と怒鳴って制す。
何で何でと問う郁を無視して 堂上は真っ赤になって、笑って食堂を後にする木村に噛み付いていった。
「きーむーらー!」
小牧と柴崎は腹を抱えている。郁と手塚は意味が分からないと顔を見合わせた。

ポケットの中の最後の一文。
『早くお姫様を捕まえて下さいね 王子様』

彼女もまた 夢見る乙女だった。
11:29  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

Comment


 こんにちは!
 「憂鬱な時を」完結お疲れ様です!

 すっごく面白かったです(笑)

 次回はどんなssが書かれるか楽しみです!
 次回の作品も楽しみにしています。
 頑張ってください!
                 From 凛香
 
凛香 | 2013年05月05日(日) 22:33 | URL | コメント編集

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