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2013'05.24 (Fri)

「支え」後編

無理やり後編にした英香です。
何かと自分が凹んでいると、お話が凹みがち。堂上さんが弱くてやーねー ってのはすみません。
更新です。端折りましたけど長いです。分かりにくいかも?。そして書けなかったところは番外編でUPする形にしました。

↓こちらから どうぞ


【More】

「支え」後編


堂上を「パパ」と呼んだ女の子を抱き上げた。
「大きくなったな 愛ちゃん。でも俺はパパじゃないぞ。」
苦笑する堂上に女性は肩を竦めた。
「ごめんなさい、最近は男の人のこと やたらパパって言うようになってて。こら愛、堂上君が困ってるでしょ。」
「堀田さん、お久しぶりです。そうか、去年は事件の真っ最中で愛ちゃんに会えてないのか。そりゃ見違えるはずだ。」
小牧が堂上から愛を引き取ると、愛は小牧にも「パパ」と呟く。
「それより そこでフリーズしてる笠原さんを解凍してあげて。どうせまだ話せてないんだろ。」
堂上が見ると 郁はがっちり固まっている。目が合うとぎこちなく頷いた。
「だ、大丈夫、で す。どんと来い です…。」
郁は頭の中で「信じろ信じろ信じろ」と唱えるが 元々緩い涙腺だ。堂上は声が震える郁の肩を抱いてぽんぽんと叩く。
「すまない。ちょっとタイミングが悪かった。」
堂上の後ろから堀田という女性も声をかける。
「あなたが笠原さんね。堀田久美子といいます。会いたかったわ。」
弾んだ声で挨拶をした。
小牧は愛をおろして 取り敢えずと提案した。
「第一会議室をおさえてくるよ。…おっと ここにもフリーズしてる奴がいる。」
黙って固まっているのは手塚だ。説明はこっちでするから、と手塚を連れて使用手続きの為に先に歩いて行った。
「郁、こちらは堀田久美子さん。元特殊部隊 堀田英司二正…二階級特進した堀田英司三監の奥さんだ。」
二階級特進したという事は…。
「主人はここで殉職したの。」
久美子は静かに微笑んだ。

第一会議室には小牧と手塚は来なかった。
「主人はね、堂上君のこと 本当の弟のように思ってたわ。歳は3つ離れてたけど、図書大からの 先輩後輩だったの。」
久美子は椅子に座ると郁に話した。
「もうね、2人して潰れるまで飲みくらべはするわ 夜中に寮を抜け出して大目玉食らうのはしょっちゅう。挙げ句に……」
「ちょ、ちょっとその辺は。」
堂上が慌てて止めに入る。苦虫を噛み潰したような顔に 郁はクスクス笑う。
「主人と私は高校の同級生同士だったの。手紙には堂上君のことばっかり。妬けちゃったわ。早めに結婚して――堂上君の査問についても 主人は『アイツらしい』って かえって応援してた。」
「え?」
郁は久美子の顔を見た。
「堂上君が特殊部隊入りしてすっごく喜んでた。主人は運悪く この子の顔を見ないで逝ってしまったけど 私は幸せだった。」
隣でおとなしく絵を描いている愛を撫でながら話す久美子は 悲しい話を愛しげに口にする。その顔は多分悲しみを乗り越えた者にしか出来ない表情。
「身重だった私は狂ったようだったわ。泣いて泣いて恨んで恨んで…。でも堂上君始め 特殊部隊のみんなが寄り添ってくれた。昨日はね、主人の命日だったの。」
堂上は毎年手を合わせにきてくれてるのだと嬉しそうに話す。
「そうだったんですか。」
郁は久美子の胸中を想うと胸が張り裂けそうだった。愛する人を突然失う悲しみを、2人の愛の結晶を父親の腕に抱かせることも叶わなかった無念を。
「私、再婚することにしたの。」
久美子は静かに言葉にした。
「愛がね、父親を欲しがってるの。保育園のお友達が羨ましいってね。去年あたりから気に入った男の人をみると「パパ、パパ」って…。英司さんの話はしているし、写真を見て 話を聞いて父親は英司さんだってのは分かっているの。…でも温もりを知らない。私は思い出だけで 愛がいてくれるだけで生きていけるって思ってた。」
そして目を閉じて背筋を伸ばす。
「こんな私達親子を 英司さんのことまでまるごと受けとめてくれる男性(ひと)がいるの。私も彼を愛してる。」
久美子は目を開けると堂上に体を向ける。
「英司さんの事を忘れるわけじゃないの。愛も彼が父親になってくれるのを望んでる。私もこれからは彼を支えていきたいと思ってる。――ごめんなさい…。」
久美子の目からは涙が流れ続けている。堂上は久美子の前で膝を折ると 固く握られた手に自分の手を重ねて弾ませる。
「どうして謝るんですか。久美子さんと愛ちゃんの幸せを1番望んでるのは英司さんですよ。俺は英司さんが心から喜んでいると思う。おめでとうございます。お幸せに。」
絵を描いていた愛が顔を上げて郁に言う。
「もうすぐね、新しいお父さんが迎えに来てくれるの。」
郁は愛の頭を撫でてにこりと笑って問うた。
「優しい?」
「うん!。優しいし面白いの。写真のお父さんみたい!。」
満面の笑みの愛が描いているのは2人の人物画。
「こっちが写真のお父さんで こっちが新しいお父さん。」
2人もいるの、いいでしょう。そう自慢気な愛が幸せそうで。久美子が父親の事をどう伝えてきたのかが伺える。
突然バーンと戸を開けて入って来たのは玄田隊長だ。
「お、久美子さん 久しぶりですな。お元気そうで。愛ちゃん 大きくなったなあ。」
ひょいと愛を抱き上げる玄田の顔を 愛は少しびっくりして見た。特に物怖じするタイプではないらしい。
「おじちゃん こんにちは…。」
さすがに『パパ』とは呼ばない。

堂上が笑っている。
その背中に寂しい影を感じるのは 多分郁だけ――。

夜は外で食事をした。帰りに寄るのはいつもの公園。
2人ベンチに座り 堂上は郁に話す。
「英司さんは俺の目標だった。強くて柔軟で…憧れていた。あの茨城の件で査問にかけられていた時、職場でも寮でも針のむしろのようだったのが、堀田夫婦に随分助けてもらったんだ。官舎に呼んで食事を食わせてもくれた。味を感じられたのは久々だった。あの頃の堀田夫婦と小牧には世話になったよ。」
ポツリポツリと話す堂上の横で 郁は静かに聞いていた。
「被弾は運が悪かったとしかいいようが無かった。弾は急所を外れてた。たまたまヘルメットも弾き飛ばされて 倒れた時の打ち所が悪かったんだ。病院に駆け付けた時にはもう――きれいな死顔だったよ…。」
顔を両手で拭うと 天を仰ぎ大きく息を吸った。
「昨日はちょっと整理仕切れなかったんだ。大切な人を残していくことに、残されることに…。その後の事も。そんな覚悟、当にしてると思ってたのに。」
ベンチに置かれた郁の手を握るとぼそりと呟いた。
「怖くなった、なんて――大概弱い男だよ。」
こんな弱音を吐く堂上を初めて見た。それだけ堀田の存在が大きかったのだろう。郁は握られた手を上から握り返した。
「そのくらい吐き出して丁度いいんです。教官は何も言わないから……あたしもいろいろびっくりしたんだから!」
「う…すまん。郁に絡む話もあったから ちょっと言いそびれてた。」
査問下りの事であろう。あのあと郁もちらりと久美子に聞いた。
「ダメです。目、瞑って下さい。」
「む…。」
郁が立ち上がって堂上の前に立った。殴るか、グーで。堂上は歯を食い縛って目を閉じた。
――堂上の額に落とされたのは 柔らかい温もり。目を開けようとすると「まだです。」と 今度は左右の瞼に落ちてくる。
ふわりと肩に手を回した郁は 堂上にキスの雨を降らせた。
「あたしはここにいますよ。最後まで一緒の光景を見るって言ったじゃないですか。」
郁は身を預けると 堂上の首筋に唇を寄せる。
「堀田さんは久美子さんや愛ちゃん、堂上教官の中にいます…いつまでも。だから―。」
堂上を頭から抱え込んだ郁は囁いた。
「みんなの幸せを祈りましょう。」
ゆっくりと 静かなキスの雨が降り注ぐと、やがて2人の唇が重なった。長く 深く――。
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 | 2013年05月24日(金) 21:37 |  | コメント編集

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