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2013'06.03 (Mon)

「乾いた笑顔に」

何年か前に福袋に入っていたちょっとタイトなカットソーを着た英香です。
属にいうヒョウ柄ですかね。所々ハートの形が混じった全面ヒョウ柄。大阪のオバチャン?。
「お母さん、それ着てどっか行く気?」
起きてきた長女に目を剥かれました。
私は着るものには無頓着な方でして。
「買い物。」
おもいっきりダメ出し食らいました。別にいいじゃん。―――ダメだそうです。
日曜日はちょっと遠出をして帰って来たのが夜中でした。てな訳で1日使えませんでした。何せ自転車運営(^^ゞ。
更新です。途中迷子になってしまいましたので、長いだけで甘さはなし。すみません。危機前半辺りかな。
↓こちらから どうぞ


【More】

「乾いた笑顔に」


今日は公休日。別にすることはない。
郁は朝から洗濯して掃除して雑誌を捲る。天気はいい。
「あー、ひま……。」
トントン と戸を叩く音がした。戸を開けると業務部の子が2人立っていた。
「笠原、お願いがあるんだけど。」
俯き加減に立つ子はあまり見覚えないが、隣で手を合わせて懇願しているのは同期の渡辺。こちらも公休日らしい。
取り敢えず部屋に招き入れて話を聞くことにした。
「この子は今年入った小林さん。」
ペコリと頭を下げて上目遣いで郁を見る。肩までの薄茶の髪は軽いウェーブがかかって柔らかく揺れる。おとなしい印象の小柄な女の子だ。
「実は彼女、元カレに付き纏われてるらしいの。で、昨日しつこく復縁の電話がきて つい新しい彼氏がいるって言っちゃったらしいのよ。」
まあ、ありがちな断り文句よね~と出されたお茶を飲む渡辺は小林を小突いた。
「それで なんだけど。」
郁の正面に2人は正座した。
「あんたに彼氏役 頼めないかなあ。」
唐突な依頼に 郁は口に含んだお茶を吹き出した。
「はあ!?。」
「大丈夫、遠目に見せるだけだし 笠原なら十分いけるって。」
「んな無茶な。そう簡単に誤魔化せないって!」
いくら大女といえども男に見えるわけではない、と思う。
それまで黙っていた小林が顔を上げて郁の手を握った。
「お願いします。こんなこと頼める男性の知り合いもいないし、私 彼が怖いんです。どうしても諦めてもらいたくて。」
涙目の小林に郁は怯んだ。
「男物の服は調達してきたからさ、これ着て今からこの子とデートのふりしてくれるだけでいいし。ね、お願い!」
紙袋を差し出した渡辺に、郁はため息をついた。
「うまくいくかなあ~。」
中のジャケットを広げてみた。

明日は新しい彼氏とデートするから――そう言って電話を切ったという。必ず確認しに現れるから見せつけて、という計画らしい。
一緒に出るよりと 駅で待ち合わせする事にした。

郁はジーンズにチェックのシャツ、上は借りた黒っぽいフライトジャケットを羽織り キャップの帽子を被る。
男に――見え無くはないか。自慢したくはないが、あまり凹凸のない体型だ。スニーカーを履いて待ち合わせの駅に向かった。

5分ほどして小林が駆けてきた。
白いカットソーに花柄のフレアスカート、ブルーのカーディガンに小振りのポーチがよく似合う。
「うわあ…。」
郁の前に立った彼女は 両手を頬にあてて目を見張った。
「笠原さん、かっこいい。」
郁を見上げる小林の顔は うっとりと見惚れる女の子だ。
ちょっと懐かしいかも。高校時代、陸上部でエースだった郁には女の子のファンがついたものだ。タオルを差し出してくる子もいたりして、宝塚スター扱いに苦笑した覚えがある。
「小林さんは可愛いよ。」
いかにもデート仕様の女の子だ。
あたしはこちら側には立てないのよね。もう諦めてるからいいけど…。
寂しい気持ちは飲み込んで、クスリと郁は微笑んだ。
「あ…ありがとうございます。」
郁は真っ赤になった小林に軽く肘を突き出すと「行こうか」と促した。躊躇しながらその腕に絡めた小林だが、視線を感じてビクリと震えた。
郁は目だけで辺りを窺うと、少し離れた柱の影に1人の男が立っていた。その目は鋭く 郁の背筋に冷たいものが走る。
「青いジャケットの男がそう?」
郁は小林の耳元に囁くと ふるりと震えて頷いた小林を庇って反対方向に歩きだした。
食事をしても映画を観ても その男は一定の距離を置いてついてくる。
――まずい。見せつけて諦めるタイプに思えない。
郁はどうしようか 考えを巡らしたが、そのまま夕方になった。
公園に寄って帰ることにした。
「今日は1日ありがとうございました。」
小林はペコリと頭を下げる。
「うん。そんなの構わないんだけど…これじゃ何も解決になったとは思えないよ。ちゃんと話し合った方が良くない?」
「いいんです。最後に――。」
小林は郁に抱きついた。
「わっ、ちょっと…。」
受け止めた郁の肩を 後ろから叩く者がいた。
郁は振り向き 、咄嗟に小林を後ろに庇って対峙した。目の前に青いジャケットの男。
伸ばしてきた腕をとると 郁は身を屈めて思い切り跳ね上げた。
どさりと地面に叩きつけられた男。
「お兄ちゃん!」
小林の叫び声に郁の目は点になる。
「お兄ちゃん?」

小林と、青いジャケットの男―小林の兄が 郁に頭を下げた。
この春 家を出て入寮した小林に、心配性の兄がしつこく電話してきていたという。そこで安心させる為、というか 鬱陶しくなった小林は「彼氏が出来たから心配いらない」と嘘をついたらしいのだ。
「すみません。どんな男か確かめたくて…。」
妹を任せて大丈夫か後をつけ、そして妹に触れた事にカッとなって手が出たのだという。
「女性だったとは気が付きませんでした。」
「でしょ?。笠原さんって その辺の男より男らしくて素敵!」
自慢気な小林に 郁は乾いた笑顔を向けた。元々お姉様好きの小林は 渡辺まで巻き込んでこの際だからとこの計画を建てたらしい。これには兄から注意を受けた。
「笠原さん、ご迷惑かけてすみませんでした。お兄ちゃん、心配してくれるのは有難いんだけど、私はもう大人なんだからもう少し自由にさせて。」
妹の訴えに兄は頷いた。
「そうだな、妹離れはしなきゃだな。」
最後に 寮まで送ったら距離を置くから、と約束して 兄妹は公園を後にした。郁は「一緒に」との誘いを断って公園に残った。
1人ブランコを漕ぐ。
お騒がせにも程がある。
ため息をついて 改めて自分の装いを見下ろした。
『男より男らしい』『女性とは気付かなかった』
ま、妥当な評価よね。戦闘職種の大女。女性らしさの欠片もないのは自覚している。

「笠原か――。」
聞き覚えのある声に 郁は顔を上げた。
「堂上教官…。」
コンビニ袋をさげた堂上が立っていた。
「こんな時間に女が1人でいるな!。」
いつもの台詞が降ってくる。
「教官、よくあたしって分かりましたね。こんな格好してるのに。」
「はあ?。お前はお前だろうが。どんな格好してたって一緒だ。」
何言ってるんだ、と眉間に皺を寄せる。
「男――に見えません?」
小林に向けた時と同じ乾いた笑顔で訊いてみた。
「?女は女だろ。どうかしたのか?」

『コレに女を感じるなんて――』

そんな事を言っていた堂上は 今では殊更郁を女だと主張する。仕事の上では女だからと区別する事はないが、時折無意識に主張する事が増えてるのに気付いているだろうか。それにどれだけ郁が心躍らせているか知っているだろうか。
「ほら、帰るぞ。何か食うか。」
ごそごそとコンビニ袋を探って引っ張り出したのは アーモンドチョコレート。「ほれ」と勧められて口に入れれば 甘く芳ばしい香が広がった。思えば今日は1日口の中が苦かった。
ブランコを降りて堂上と帰路につく。隣に立つならこんな格好じゃなければ良かったな、なんて考えてしまうと どうしても一歩後ろに下がって歩く。
ピタリと堂上が立ち止まり、振り向いて郁のキャップを取り上げて自分が被る。キョトンとする郁の頭を叩くと再び歩きだした。歩調を合わせて郁の隣を。
「何があったかは知らんが自分を見失うなよ。」
数少ない堂上の言葉は いつも郁を救ってくれる。男装してても女の郁を堂上が見付けてくれたのだから――。堂上さえ見付けてくれさえすれば。
「ま、いいか。」
郁も堂上の隣を選んで歩きだした。
いつもの笑顔で。
07:21  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

郁が男装を頼まれると思いませんでした笑
堂上班にお願いして!的なお頼みかと…
それで小牧も手塚も予定が合わなくて…((((;゚Д゚)))))))
そうならなくてちょっとホッ笑ε-(´∀`; )

郁の男装は見ものかもしれないと勝手に思ってます( ̄▽ ̄)w
郁ちゃんごめんなさいm(__)m
あたしもどちらかというと小林さん的になっちゃいそうですw
でもそこでね!堂上がね!!(((o(*゚▽゚*)o)))
どこにいても郁を見つける堂上さん♡
もぅ二人素敵すぎです♡
思わずにやけちゃうお話をいつもありがとうございますw♪( ´▽`)
ももいちご | 2013年06月03日(月) 18:58 | URL | コメント編集

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