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2013'07.21 (Sun)

「風を受けて」3(リク20)

今日もザリガニ釣ってました。ちびの方が大きかった。悔しくてポチポチやる暇なく竿を垂らしていました。
昨日の長男、何時まで寝ていたと思います?。夜は12時半頃に寝て――昼過ぎになっても起きてこないのはザラなので、放っておいたら夕方6時半。生きているか確認の為に口元に掌をあてて漸く現実世界へ。18時間寝っぱなし。
いい加減にせいっ(`´)。

更新です。
次回で終われるかな?。あ、INDEXも更新しました。

↓こちらから どうぞ


【More】

「風を受けて」3(リク20)


午後の業務は何事もなく終わった。
堂上も何事もなかったように業務にあたった。
気味が悪いほど。
郁もコレといってミスもなく、日報に判を捺してもらう。
「ん、お疲れ。」
そのまま渡され 目も合わせない堂上に「どうかしましたか」など 到底訊けやしない。だってどうもしてないとしか見えないんだから。
「…お先に失礼します。」
結局何も言えないまま 郁は事務室を後にした。
「じゃあ 俺もお先に。斎藤一正、明日もう1日お世話になりますね。」
曽根はにっこり挨拶すると、郁の後を追うように出ていった。
「笠原さん!」
廊下で郁を呼ぶ声が漏れ聞こえた。

「…いつまで拗ねてるつもり?」
「別に拗ねてない。」
小牧の言葉に反論する。
「曽根一正、付き合ってた彼女と別れてこっちに来たってよ。もういい年だし 早く決めたいって言ってたな。笠原は好みにドンピシャらしいぞ。」
斎藤は椅子をクルリと回して堂上に言った。ほれほれどうする?と、楽しそうだ。

堂上は机の上に積まれたファイルを手に取った。
手に届きそうで届かない。郁という存在は 自分の中で処理出来ない位置にずっとあった。郁に「王子様」と昇格させられた過去の自分はもういない。自分から名乗り出る選択肢はあり得ないし、郁自身「王子様卒業」を宣言しているのだからこだわる必要はもうないのかもしれない。
今はただ、郁の上官として 彼女を育てる事に専念している。実際もう頼りない新人なんかではない。手塚にひけをとらない信頼のおける自慢の部下だ。郁の延びシロは長い。
但し時折頭を擡げる感情を持て余している自覚はある。それを無理やりねじ込んでいるものは何なのか。

「…個人の自由ですので。」
堂上は書類に目を戻した。

「笠原さん。」
庁舎を出たところで曽根は郁に追い付いた。
「はい?」
「良ければこれから 外に食事に出ないかい?」
曽根は郁を誘った。
「え、でも…。」
「見せたいものがあるんだ。」
胸ポケットから取り出したのは1枚の写真。
「これ、笠原さんだよね。」
写し出されているのは確かに自分。ユニフォームにも覚えがある。
「多分君が大学2年の時の選手権大会だ。」
「え?何で。」
「この年は愛知県が開催地だったんだよね。俺も行ったんだ、写真を撮りにね。」
結局誘われるままに食事に出た。

基地にほど近いレストランに入る。腰を落ち着け 注文を済ませて、郁は曽根に問うた。
「朝、言っていたのはこの事なんですね。」
懐かしいなあ、と3枚の写真を手に取る。
「残っていたのがその3枚さ。びっくりしたよ、あの時の選手がこんなところにいるなんて。」
「でもどうして。」
もう何年も前だ。しかも大会は3日間、数いる中の1選手に過ぎないのに。
「一緒に出ていた選手を撮るために行ってたんだよ。」
ほら、と指差すのは、郁の後ろで控えている女性選手。
「彼女はこの時4年生で 最後のレースだったんだ。」
全国から集まる選手と全て面識があるわけではない。まして顔覚えの悪い郁だ。しかし緊張感のある引き締まった表情のその選手は輝いて見える。
「彼女のレース以外では めぼしい選手を撮っていたんだ。笠原さんはその1人。しかもフォームの美しさでは目を引くものがあったよ。」
だから一目見て分かった。あの時の選手だと。まだ2年生、決勝までは進めなかったが印象に残っていたのだ。
「この選手は…?」
郁の質問に 曽根は微笑むだけで答えない。食事が運ばれてきた。
「笠原さんはてっきり実業団にでも入って陸上を続けてるものだと思ったよ。」
それだけ才能に溢れていた。カメラ越しにも伝わる才能が。
「いえ あたし、大学入る前から決めてたんです。図書隊に入るって。」
郁の目は真っ直ぐだ。その決意は固かったのだろう。
「うん、そのゴールをとらえているような目も変わらないね。好きだな。」
「へ?。ちょっ ちょっと。」
食堂の時といい、曽根は好意を寄せているらしい言葉を羞かしげもなく口にする。そんな事に慣れない郁は頬を染める。
「冗談は…。」
「冗談なんかじゃないよ。君の走りは迷いがない。それは君自身を反映してるよ。そんなところに惹かれてるんだ。」
ストレートな物言いにドギマギする。
「口紅も似合ってる。」
郁はハッと顔を上げた。
微笑む曽根は優しい視線を投げている。郁はその視線から逃げるように目を逸らした。
はじめは小さく。やがて大きく首を横に振る。
自然に滲む涙は形になってほろりと零れた。
違うの。気付いて欲しかったのはこの人じゃない。
「あたしの走りはあたしのすべてじゃない。それはほんの一部であって もっとまるごと見てくれる人がいる。」
郁はとうの昔に知っている。迷惑ばかりかけちゃってるけど、呆れられてばかりだけど、あの人は温かい。眉間の皺は心配してるから、痛い拳骨は注意を促してるから、そして時々見せる眼差しは郁の心を鷲掴みする。

バンッとテーブルを叩く音が響いた。

「堂上…教官…?。」
曽根を睨む堂上が立っていた。

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 | 2013年07月21日(日) 22:09 |  | コメント編集

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