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2013'07.23 (Tue)

「風を受けて」4完(リク20)

激しい雨が 降ったり止んだりしています。
冷房で身体が冷えると すぐ足がツルんですよね。買い物の生鮮食品売り場でカートを押してる時とか「うおっ」と なります。一番は運動不足ですがね。

更新です。完結編になります。曽根さんはメインじゃないので、説明不足かなぁ という感じですが、その内「風を受けた後で」を書く機会があればその時に、と思います。場面が変わるのがうまく書けてない気がするので、補完しつつお読み下さい←ありゃ。
今回「棚上げ堂上」と呼んで下さい。

↓こちらから どうぞ

【More】

「風を受けて」4完(リク20)


郁の後を追うように曽根は事務室を出ていった。
堂上は書類に目を落としている――が、同じ行を行き来しているだけで進んでいない。小牧と斎藤は苦笑する。
「食事にでも誘うのかな。」
「笠原はほいほい誘いに乗るような女じゃないんじゃないか?」
「でも笠原さんって 優しくしてくれる人を無下に出来ないタイプだし。」
「ああ、じゃあ行き先は『ライフ』に決まりだな。曽根一正は来て日が浅いから、防衛部の奴等と行ったっていうその店しか知らないだろう。結構気に入ったみたいだし。」
「お酒でも勧められなきゃいいけどね。なんせ笠原さん、断われないタイプだし。」
「案外悪い気はしないかもよ。」
堂上を挟んで会話する2人の視線の先は堂上の背中。
「「………」」
すくっと立った堂上に 斎藤は おっ と眉を上げた。
大股で棚まで移動した堂上は 手にしたファイルをカタンと戻した。
小牧は肩を竦める。
そこで事務室の戸が開いた。顔を出したのは、防衛部を曽根と入れ替わりに退職するという鈴木一正。
「失礼します。斎藤一正、曽根一正は帰寮されましたか?」
「ああ、曽根一正なら――。」
鈴木の後ろには見知らぬ女性。目が合うとペコリと挨拶をした。


「…堂上二正、どうしたんだい?」
曽根は机に手を置いたまま睨んでくる堂上を見上げた。
目の前の郁は その堂上に縋るような顔をしている。
笠原郁という選手の名前は 大会で何度も目にした。実際の走りを見たのはあの時が初めてだった。
郁のフォームは流れるように美しい。まるで長年撮り続けてきた自分の恋人・梓とそっくりだった。

梓とは大学新聞部のOBとして出入りしていた時に知り合った。彼女の走る姿に魅了され、練習風景から大会までを追いかけた。やがて愛し合うようになったが、医者の娘。図書隊の男との交際は反対され続け、結局認められることはなかった。
涙ながらに医者との結婚が決まったのだと言う彼女に 曽根は「そうか。」としか言えなかった。
抗争ともなると戦闘は避けられない職種だ。銃を持つような男より、身も仕事も安定した男の方が幸せにしてくれるだろう。
そんな時に異動の打診が来て飛び付いた。逃げるように関西を出る決意をしたのはつい先月だ。


「口説く相手を間違っていないか?」
静かに深く響く堂上の声に曽根は目を顰める。
「正人さん…。」
次に目を見張ったのは 現れた女性にだ。
「梓!?」
郁にも分かった。髪こそ長くなっているが その女性は写真の選手。
「どうして ここに……。」
ポロポロと涙を流しながら梓という女性は泣き笑う。
「逃げて来ちゃった。」
フラフラと近寄り 曽根に抱き付くと、曽根も思わず強く抱き締める。
その様子を見て 堂上は郁の手を取って店を出た。


堂上は郁の手を引きながら路地を歩く。俯く郁に気を遣いながら 公園に入った。
「…邪魔を、したか?」
手を離すと 郁をブランコに座らせ、自分は後ろになる防護柵に寄りかかる。
郁は軽く首を振って ブランコの鎖に手を掛けた。
「あの梓さんって女の人、陸上の選手だったんです。あたし、選手権で一緒だったみたいで…。」
「無理やり他の男と結婚させられるところだったそうだ。あのヤロ 奪い返す勇気がなかったんかよ。」
彼女の手前 男として一言も二言も言いたい事を我慢した。その上で自分も郁に言うべき言葉を飲み込んでいる事を自覚する。
「曽根さんはね、一生懸命あたしの中に梓さんを探していたんですよ。梓さんの穴を埋めるべく、梓さんの姿を追い求めて…。一生懸命忘れようとしてたみたいですけどね。」
「一生懸命の方向が著しく違うだろが。」
郁は自分の足元に視線を落とす。
「おまえは身代わりにならん。」
「そんなの、曽根さんだって分かってたと思いますよ。」
曽根が好きだと言った 郁のゴールを見据えるような目。今はいつもゴールの横に堂上がいてくれる。だからどこまでも迷いなく走れるのだ。
いつでも堂上の背中がある。それが郁のすべて。

堂上は郁の後ろに立った。

「おまえを、身代わりにやるわけにはいかない。」
堂上は郁の後ろからゆっくり抱き締めると耳元で囁いた。
「――俺じゃ、ダメか?」
回された腕に、微かにかかる堂上の重みに 郁の思考が白くなる。
「確かに優しい男ではないし、おまえの求めるような言葉はやれんかもしれない。それでも――。」
急速に色の戻った郁は 回された堂上の腕を掴む。
「教官がいいです。教官じゃなきゃあたし…。」
堂上は前に回ると 両手で郁の頬を包み込み、目を合わせる。
「たとえ誰が来ようが渡せない。過去の誰かにも。」
堂上自身がこだわっていた「王子様に昇格させられていた三正」にも渡せない。今の堂上が愛するのはこの存在。
「教官が好きです。」
ブランコが微かに軋む音がした。
寄せる唇に堂上が呟く。
「この色は 俺の隣に立つ時だけにしろよ。」

――教官、あたしの欲しい言葉をくれてますよ。
重なる吐息の中で郁は囁いた。

秋の風はまだ夏の香がした。


===========


リクエストはポンタコスさんより
「ジレジレ期のフライングが読みたいです。堂上教官が郁ちゃんと誰かとの仲を誤解してあせってとかで、後ろから抱きしめながら「俺じゃダメか?」って言ってるシーンを入れていただきたいです。」
でした。
曽根さんとの仲を誤解するところまで持っていこうかと思いましたが、捻くれそうだったのでこの辺で。ガッツリフライングのはずでしたがちょっと軽めだったのは、何故か堂上さんが動いてくれなかったから。夏バテ?。
奪い返す時のセリフですよね、コレ。奪い返す立場の人は曽根さんになっちゃいましたよ(^^ゞ。
でも楽しく連載で書かせて頂けました。ポンタコスさん、リクエスト有難うございました\(^O^)/。
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 | 2013年07月23日(火) 16:28 |  | コメント編集

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 | 2013年07月23日(火) 17:22 |  | コメント編集

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 | 2013年07月25日(木) 12:16 |  | コメント編集

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