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2013'08.07 (Wed)

「偽りの樹」前編

久しぶりの夏日な気がします。プールサイドの英香です。
昨日は姪っこに赤ちゃんが産まれました。初産なのに3500の大きめ赤ちゃん。彼女は150㎝↓の小柄な女性なので 頑張ったのよ。
久々の赤ちゃんに大盛り上がりでした。
因みに同じく昨日。我が家も10万HITをいつの間にか迎えておりました。せっかくのキリ番なのですが、リク祭りも漸く折り返したところ。来月は開設1周年ですが、開催中のままになりそう(^^ゞ。
で、逆に久しぶりにリクエストでない 通常更新にしてみました。
すっかりスルーしている「心/霊/探/偵/八雲」くん。新刊文庫を漸くゲットしました。内容は舞台のストーリーなので粗方露出していて新鮮味に欠けちゃいましたが、久しぶりに八晴な世界を感じました。本編の続きを切望してますがっ。やっと甘くなってきたんだもの(//∀//)。
てな?わけで、サブタイトルを拝借して図書戦で更新です。
上官・部下の革命中です。季節ネタ? 前後編の予定です。

↓こちらから どうぞ

【More】

「偽りの樹」前編


堂上と出掛けたカミツレのデート未満と同日に起きた敦賀原電事件以降も、2人の関係は変わることなく 季節は移り変わり、夏になった。
雨の日が多い上に気温も高め。湿気の多い、気象庁をも悩ます 異常気象の夏。
当麻の亡命という作戦に向け、図書隊は大きく動いていた。そんな中でプライベートな問題を取り沙汰すべきではない。
その当麻と良化法の問題を抱えながらも 日々の業務をこなしていくのに精一杯だった。

今年最初の台風が去った後の照りつける太陽を避けるように、郁はコンビニの袋を持って 図書館の中庭に入って行った。たまには1人でのんびりランチを と思い立ったのだ。中庭にはベンチが点在している。
雨上がりで緑が濃く、木漏れ日を楽しみながら普段は行かない奥まで進む。そのうち 土を踏む足音が、自分の物だけではない事に気が付いた。
「?」
郁は立ち止まり、足音のする方を振り向いた。
そこに立っていたのは見知った男性防衛員。錬成訓練時代に共にしごかれていた同期の1人だ。
「えーと、小池?」
「あ、覚えててくれたんだ。」
にかっと笑うその顔は嬉しそうだ。
「たまたま笠原が入って行くのが見えてさ、何となくついてきたんだ。」
「声かけてくれればいいのに。」
小池はどちらかといえばおとなしい部類の男だ。集まりには必ず顔を出すが 黙々と食べて飲む寡黙なタイプ。郁はあまり話した事はないが、常にハイポートで上位にいた小池の顔は覚えていた。
「よく来るのか?」
小池は郁を通り越して あまり手入れされていない茂みに向かう。
「ここまで奥に入ることは滅多にないけどね。」
昇任試験の準備をはじめ、子供達ともこの中庭を駆け回ることは多い。しかし敷地内とはいえ、食堂からも死角になる隅は陽も届かず、足を踏み入れたことはなかった。
小池はその奥を指差した。
「知ってるか? 敷地ギリギリに立ってるあの樹。」
山茶花の植え込みの先に見えたのは、他と離れて植えられた一本の桜の樹。ひっそりと立つその樹は、大きくはないが幹は太く 半分朽ちかけている。
「あんまり手入れされてないみたいだね。」
郁はゴツゴツした樹の肌を撫でて見上げた。春になったら花を咲かせるのだろうか。人も通らないような場所で ひっそり咲いては散っていくその光景を脳裏に浮かべると寂しい気がした。
「入隊した頃 噂で聞いたことがある。」
「何を?」
小池はゆっくりと樹の周りを一周する。
「この樹の前で嘘をつくと、呪われる ってね。」
「呪われる!?」
郁は素っ頓狂な声をあげた。
小池は クッ と笑った。
「なんでも この樹の下で誓い合ったカップルが破局を迎えて、裏切られた女性がこの樹に恨み言を三日三晩聞かせた上に呪いの言葉を幹に刻んだそうだ。すると相手の男性に不幸が舞い降りた――。以来、好きな相手の気持ちを確かめるのに使うそうだよ。本当の気持ちを知りたい時にね。なんせ嘘をつくと呪われるんだ、本当の事言わないとさ。どうやら呪った女性の影に付き纏われるそうだよ。」
つらつらと話す小池は何だか不気味に感じる。こういった話に弱い郁の背筋に冷たいものが落ちていった。
「そ、そうなんだ……気味が悪いね。」
朽ちた部分は呪いが刻まれた跡なのか。辺りは暗く湿気が肌にまとわりついて気持ち悪く、早くこの場から立ち去りたいと思った。郁はブルッと身震いすると、回れ右をして離れようとした。
「笠原。」
「ひゃあっ、な、何?」
小池の固い声で引き止められた。
「笠原がこっちに向かったのを見て言おうと決心しして来たんだ。…いつも頑ってる笠原が好きだ。俺と付き合ってみないか?。嘘をつかなければ呪われることはない。逆に誓えば永遠の愛になる。」
そんな樹をバックにして申し込まれても。郁は一歩後退りした。
「や、小池の事はあまり知らないし…それに――。」
「他に好きな相手がいる?」
小池の言葉に郁の心臓がドキンと跳ねた。パッと浮かぶのは当然堂上の顔で…。このところ堂上を想うと胸が苦しくなる。いっそ気持ちを伝えられたらどんなに楽か。カミツレの喫茶店で見た堂上の柔らかい表情が、握られた手が、僅かな期待を感じさせる要因になっているから。でも伝えた挙げ句玉砕でもしたら、この微妙な距離さえ失ってしまう可能性がある。それでは立ち直る勇気はなく、下手をするとそんな思考に潰されそうになる。だから溢れる気持ちを落ち着かせに時々こうして1人になる時間を作っているのだ。
黙り込んで俯いた郁に 小池は静かに問うた。
「それは堂上二正?」
その言葉と同時に パキリと枝が折れる音がした。振り向くと今度はそこに堂上の姿が。
「こんなところで何をしている。そろそろ昼休憩も終わるぞ。」
堂上は 郁を追って小池が林に入って行くのを目撃したのだ。
入隊時こそ山猿だ何だと女扱いされていなかった郁だが、今では男子寮で時折名前を耳にする。明朗な性格は元々好かれていたが、いつの間にか女性らしい面も見せるようになった郁の魅力に、漸く男性隊員が気付き始めたのだ。小池はそのうちの1人と認識している。郁を噂しているのを見掛けた事があったから。心中穏やかではいられなかったが、たかが上官の分際で割って入るわけにいかずに今まで放っておいたのだ。
しかし人気のない庭の奥まで 郁を追っていくのを黙って見過ごすわけにはいかなかった。

「ど、堂上教官。」
話を聞かれたかと 郁は慌てて赤くなった。
小池は構わず郁に再度問いかける。
「そうなのか?」
そんなの本人の前で言えるわけないじゃない。玉砕する思考に横滑りした直後の堂上の登場に、半ば郁はパニックになる。
その様子を堂上は訝しんだ。
「どうした、何の話だ。」
どうやら堂上には話の内容は聞かれていなかったようだ。それでも――。
「違うよ!教官じゃない!」
郁は逃げるように言うと 堂上の横を擦り抜けて走っていってしまった。
「あ、おいっ、笠原!?」
堂上の声も届かない。
「何した……。」
堂上は小池に向かって 低い声で問い質した。
「堂上二正もご存知でしょう?この樹の噂。」
「ただの都市伝説みたいなものだろ。内容は詳しく知らんが。」
「信じるかどうかは人それぞれです。僕はここで笠原に交際を申し込みました。うそ偽りのない気持ちを伝えてね。」
「………。」

にやりと笑った小池の背中を見送りながら 堂上は郁の言葉を反芻した。
『違うよ!教官じゃない!』
どんなやり取りがあったのか。半分朽ちかけた桜の樹を見上げたのだった。
14:38  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2013年08月07日(水) 15:35 |  | コメント編集

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 | 2013年08月07日(水) 17:31 |  | コメント編集

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 | 2013年08月07日(水) 22:48 |  | コメント編集

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 | 2013年08月08日(木) 15:45 |  | コメント編集

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