All archives    Admin

07月≪ 2020年08月 ≫09月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031

2013'08.11 (Sun)

「偽りの樹」後編

男組がキャンプから帰って来ました。釣りというよりヤス突きに夢中になって遊んだようです。
そして入れ替わりに 明日、女組の私と長女はディズニーシーへ。このくそ暑いのに!ですが、どーしてもディズニーがいいそうです。あ、婆さんは耐えられないのでお留守番。
始発で出て終電で帰る強行軍。私の性格上 行くからには目一杯アトラクション巡りをしなきゃ気が済まない貧乏性。
母ちゃん体力もつか?
てなわけで明日は多分お休みです。

更新です。続きです。長い後編はいつものこと。この後が気になるかもしれませんが、一応完結です。

↓こちらから どうぞ


【More】

「偽りの樹」後編


データ入力のミスを訂正する。堂上も半分手伝ってくれる。
堂上の机の上には隊長から回された書類もある。郁は申し訳なく思いながらパソコンに向かっていた。
「笠原。」
「はい。」
堂上の声に郁は固い声で答えた。
「おまえ 何か心配事でもあるんじゃないのか?」
「あ…いえ…。」
そりゃ変に思うよね。郁はパソコンのキーを見つめて肩を縮めた。でも 偽りの樹の前で嘘をついたから呪われてるかも知れないなんて言えない。現場に来た堂上は 小池とのやり取りは聞いていない素振りだった。下手な事を言ってそれを説明するのは嫌だ。「どんな嘘か」なんて訊かれたって言えるわけない。だってそれじゃあ 告白するのと同じ事。
あれ?でも最後の捨て台詞は……。
堂上に聞かれたかも と今更ながら思い至った時、郁はどこからか視線を感じた。咄嗟に振り向く。
「どうした。」
赤くなったかと思ったら急に青くなって挙動不審になった郁の視線を追って、堂上は席を立った。郁は何かを探すように視線を彷徨わせた。
「見られてる…。」
郁の視線はやがて窓へ。陽はすっかり落ちていた。堂上は窓を開けて見回すが ここは誰かに覗かれる高さではない。銀杏の木が2本あるだけだ。青々とした葉が繁っているが、人が登れる木でもない。
堂上は窓を閉めてカーテンを引いた。
「大丈夫だ。何もない。」
堂上は俯く郁の頭に右手を置くと ポンポンとはずませた。情けない顔で見上げて無理に笑顔を作ろうとする郁に 少しでも安心させてやりたいと、その手で軽く郁の頭を揺らした。俺が着いてると伝わるように。
そこに内線がかかってきた。堂上が出ると相手は会議に出ている玄田隊長からだった。
「今すぐですか?」
会議に必要な書類を至急届けてくれ との要請だ。堂上は内心舌を打って受話器を置いた。玄田の机に乗っていた書類を掴んで、郁の縋るような視線を感じながら事務室を見回す。
残っているのは進藤をはじめ隊員が5名。何かあれば頼りになる特殊部隊の猛者共だ。階は違うが会議室までの往復なんて数分の事。堂上は「すぐ戻る。」と 足速に事務室を出ていった。
残された郁は、パンッと頬を叩いてパソコンに向かう。心配かけている自分の気を引き締めるために。
「笠原ぁ~、おまえどうしたあ?」
進藤が近付いてきた。さっきの堂上とのやり取りが目についたようだ。
「確かに今日1日元気ないよな。」
堂上に叱られてる訳ではなさそうだし、逆に堂上が気に掛けてるのが丸分かりだし、とニヤニヤ笑う。
「よし、笠原。これ持って会議室に届けて来い。」
「何ですか?これ。」
受け取った書類と進藤の顔を交互に見る。
「さっき堂上が持って行った資料の残りだ。コレがないと成り立たない。」
実はまだ完成していない書類だったとペロリと舌を出した。
「なっ…。」
郁は慌てて堂上を追って走って行った。
「どうせ堂上とかち合うだろう。ここより外の方がイチャつけるんと違うか?」
進藤なりに気を遣ったつもりだが、今の郁には実は迷惑であることを知らない。

普段堂上から走るなと言われている廊下を全力で走って会議室に着いた。玄田に書類を届けて事務室に戻る。
ふと気付けば 薄暗がりの廊下に1人歩いていた。
「教官と会わなかったな。」
独り言も廊下に虚しく響く。
「早く戻ろ。」
郁は足を速めようとした時、音にならない音が聞こえた気がした。
びくりと固まる。
感じるのは事務室での同じ視線。
静かに歩を進めると 後ろからヒタヒタと着いてくる気配。足を止めればその音も止む。再び歩けば またヒタヒタと着いてくる。距離を縮める気配はない。
背筋に冷たい汗が流れ、郁の体はガタガタと震えてきた。


堂上が事務室に戻ると郁の姿がなかった。訝しんで部屋を見渡していると 給湯室から進藤が出て来た。
「なんだ、笠原と一緒じゃないのか?」
進藤はのんびりコーヒーをすすった。
「…笠原は?」
質問で返す堂上に 進藤はヘラヘラと答えた。
「追加の書類を隊長に届けるように頼んだのさ。行き合わなかったのか?てっきりさっきの続きでもしてるかと思ったよ。」
進藤得意のトム笑いに 堂上は顔を赤らめて怒鳴った。
「いらんこと考えないで下さい。こっちはコピー室に寄って余分な仕事をさせられてたんです!。」
「まあまあ、そんな怒んなよ。それにしてもどうしたんだ笠原は。いつもと様子が違うが。」
進藤なりに気に掛けているのだろう。堂上はごく簡単に説明をした。
「ああ、『偽りの樹』か。へー、今の若い者には呪いの方で知れ渡っているのか。」
「方?」


郁の後ろの廊下の蛍光灯は今にも切れそうに点滅を繰り返していた。
郁の足は貼りついたように動かない。
点滅を繰り返していた蛍光灯がやがて切れたままになってしまった。
「ひゃっ」
――恐る恐る郁は振り返る。見るなと頭は警告するが、首は何かの力に引かれるように回り 闇に包まれたその一角に動く影を見た。そして何かが光った。

「キャ――――!」

廊下から聞こえた郁の叫び声に堂上は飛び出した。遠くではない。廊下を曲がったところに郁は蹲っていた。
「笠原!」
堂上が駆け付け郁の肩を揺すると、郁はガバッと抱き付いた。
「いる!いるいるいる!何かいる!」
郁は錯乱状態で堂上の首に腕を回して泣き叫ぶ。
「嘘ついてごめんなさい!好きな人は堂上教官じゃないなんて嘘です、嘘なのー!」
堂上は追及したくなるのを押し留め、ぎゅうぎゅう押し付けてくる郁の体にくらくらしながら、闇の先に目を凝らした。闇に光る2つの点。やがてヒタヒタと近付いて来るのを、郁を背に庇って身構えた。

「ニャー。」
闇から現れたのは一匹の猫。
「…猫だ。」
「へ?猫?…あ!」
すりすりと郁の足元に擦り寄って来たのは、このところベランダにやってくる猫。寮だけではなく 庁舎で郁を見掛けて近付いてきたのだ。銀杏の木から事務室を覗いていたのも、郁がずっと感じていたのはこの猫の視線だったのだ。
「なんだあ~。」
力の抜けた郁は その場にへたり込んだ。猫の首もとを撫でると気持ちよさそうにゴロゴロ喉を鳴らした。
「進藤一正の聞いた偽りの樹の都市伝説を知ってるか?」
「え?」
猫から堂上の顔に視線を移す。
「偽りの樹の前で言った言葉は 『偽り』になる。つまり 好きだと言えば嫌いに、嫌いだと言えば好きだ という意味になるそうだ。」
「ソレって……。」
「進藤一正は2種類の伝説を聞いた事があるそうだ。あまりにも逆過ぎて信憑性ないからって今じゃ『偽りの樹』自体が廃れた伝説になってるらしいぞ。」
小池は呪いの伝説しか知らなかったのか。
じゃあ あの時の言葉は…。
「で、おまえは なんて嘘を言ったんだっけ?」
「うう……。」
何だかどさくさに紛れて とんでもない事を口走ったような。
「ん?」
屈んで郁の顔を覗き込む堂上の顔は 意地悪そうで楽しそうで。
ニャーと猫が一鳴きした。

夜 男子寮の一室で恒例の怪談話が繰り広げられていた。
コンコン。
ノックに出たのは部屋の主の1人である小池。
「よう、手塚か。オカルト同好会にようこそ。」
「いや、結構だ。ただちょっと耳に挟んだ話を伝えに来た。」
「何だ?」
手塚は小池を人気のないロビーに呼び出した。
「おまえ、偽りの樹の前で 笠原に告白したそうだな。」
「ああ。俺の嘘偽りのない気持ちを告白してきた。きっと笠原にも俺の誠意が伝わったと思う。」
マジか。手塚は呆れてこのオカルトかぶれを見やった。なるほど。
「偽りの樹には影の伝説があるそうだ。」
「何!影の?」
食い付いた。
「偽りの樹の前で好きだと告白すると 相手は嘘だと思って絶対気持ちは伝わらないってな。だから笠原はおまえの告白を本気と受け取る事はないだろう。残念だな、偽りとなった告白は撤回出来ない呪いが掛けられてるらしい。諦めた方がよさそうだぞ。」
手塚は進藤からの少々脚色されたメール内容を小池に伝えた。
「うおぉ、『偽り』とはそういう意味もあったのかあ!。笠原には告白を嘘としてしか伝わらないのか。撤回出来ない呪いとは恐ろしいぃ。」
どうやら呪いを信じて苦悩する小池を 手塚は放って自室に向かった。
オカルト同好会。何よりも伝説・呪いを信じる集団。関わらないに限る。


以後 小池は郁を諦めたのか呪いを解く研究をしているのか、接触してくる事はなかった。
23:15  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(3)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 | 2013年08月12日(月) 00:32 |  | コメント編集

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 | 2013年08月12日(月) 09:31 |  | コメント編集

こんにちは、すぎですヾ(=^▽^=)ノ 夏コミ行ってきましたっ&生還しました(笑) 対策充分してったけど、倒れるかと思う熱さでした☆   やはり助けてくれたのは堂上さんでしたねo(^∇^o)(o^∇^)o♪ 偽りの告白の呪い(*^m^*) フライング? 郁ちゃんあわあわしちゃってるとこに堂上さんが辛抱堪らずちゅう♪しちゃえ~(*/ω\*)思いました♪ 手塚くん、上手く〆てくれてありがとー(≧ω≦)!
 | 2013年08月13日(火) 11:00 | URL | コメント編集

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://746754.blog.fc2.com/tb.php/338-6c5d43d8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |