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2013'08.15 (Thu)

「誓いの道は」4(リク8)

今年はそんなに嫁さんしてない英香です。
姪っ子の赤ちゃんの世話で忙しい義妹家族は時期をずらして墓参りするらしいし、義弟夫婦は近くでいつも来てるから気兼ねないし。
墓参り巡りをした程度で 自分ちの盆棚を設置して拝んでるだけの のんびりしたお盆です。
でも 1日中主人がいると、携帯弄ってるわけにいかないのよね。細切れにポチポチして 何とか更新です。
不定期連載の「誓いの道は」の続きです。我が家版の結婚準備、なるべく平穏を目指します。

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「誓いの道は」4(リク8)


郁は ベッドの上で携帯を睨んでいた。
柴崎は週末の読み聞かせ会の準備で残業と聞いている。寮に帰って来るのはもう少し先だが、ベッドのカーテンを引いて携帯片手にもう1時間も開けたり閉じたりを繰り返している。
アドレス画面をスクロールして表示する先は『お父さん』。

茨城県展の抗争前、訓練中に怒鳴り込んで来たのは、郁が特殊部隊所属と知った母だった。
図書館は良化隊との抗争の舞台ともなる危険な場所だ。一般業務の図書館員でさえ巻き込まれないとは限らない。母はその可能性が少しでもあるのを心配して、反対していたのだ。郁には『女の子らしく』と常に説いていたのに よりによって銃を手に走り回る特殊部隊隊員になっていたとは。
怒り狂った母と衝突した郁に 堂上が切り札として呼んだのが父だった。母の味方ばかりしていた父。母同様、郁の主張を認めてくれなかった父。
長年信用出来なくて、連絡もろくに取っていなかった。嘘までついて特殊部隊所属を黙っていたのに。ずっとわかり会えないと思っていたのに。
父は母の暴言を諌め、玄田隊長に謝罪し、郁の仕事を理解してくれていた。
今ではすべてを包み込んで 母を説得してくれているという父に―――報告しなければならない事がある。
以前より連絡は取るようになった。母の日父の日、季節の挨拶。時々母とも言葉を交わす。固さはお互い取れないが、以前とは明らかに違う。
コレもあの県展の時、「ぶつかって来い」「切り札は俺が持っている」と、きっかけを作ってくれた堂上のおかげ。部下の内面に踏み込んでくれたおかげで 郁は殻を破れたのだ。

郁は大きく深呼吸して通話ボタンを押そうとした。
そこに着信メロディーが鳴った。慌てて携帯をお手玉してから画面を見ると『堂上篤』。
「出られるか。」
「すぐ行きます。」
簡単な応対をしてロビーに向かった。
いつもの呼び出し時間より早い。落ち合うと堂上は 近くの公園まで郁を連れ出した。
「今ですね、父に電話しようと思ってたんです。」
手を取り合ってぶらぶら歩きながら郁は告げた。
『親父さん経由で話したほうが刺激が少ないかもしれん。』
早めに話を通しておけと言った堂上からの助言だった。でも気軽に報告するにはまだハードルが高く躊躇してしまう。ましてや付き合っている人がいるなんて言った事がないのに いきなり結婚とかって…。
堂上は郁の手を握りなおして公園のベンチに促した。

「今日、実家に電話しようと思います。」
郁が堂上に宣言したのは、日報を出し終えてから。決意固く握りこぶしを作っている郁に「そうか。」とだけ声を掛けた。
結婚に向けて進むのに避けては通れない第一の難関である。コレは郁がしなくてはならない。変わってやるわけにはいかないのだから。しかし未だ言いにくい関係であるのも承知している堂上は、せめて隣で支えてやりたいと思ったのだ。案の定 帰寮して随分経っても無事報告したとの連絡がなかったから。

「郁。」
並んでベンチに腰を降ろした堂上は、俯いている郁の手に自分の手を重ねて声を掛けた。
「おまえと出会って9年か。いろいろあったが 漸くここまで来たって気がする。」
「……きょ…篤さんはいいんですか?。えっと…こんなのがお嫁さんって…。」
未だ実感が湧かないでいる。
「ソレを言うならおまえのほうだろ。戦闘職種の直属の上官が相手だなんて、報告しにくいか?」
郁はガバッと顔をあげた。
「そんな事ないです!。私なんかにはホント勿体ないお相手です!。嬉しくて嬉しくて自慢したくなる――。」
堂上は郁を引き寄せ 額を合わせた。
「俺だってそうだ。正直舞い上がっている。出来ることなら、今すぐにでも手に入れたい。――しかし全ての人に祝福されなければ意味がないんだ。郁を愛している家族をはじめとした全ての人に。」
愛されている。郁を愛しているからこそ、母は心配で閉じ込めておきたかったのだ。そう気付かせてくれたのも堂上だ。
「反対されても認めてもらえるまで何回でも頭を下げるさ。そのためにある頭だ。いくらでも使おうじゃないか。」
郁を安心させようと微笑んだ。
堂々と報告すればいい。今の両親は 今の郁を受け止めてくれようとしているはずだ。堂上を信じるように父を信じよう。
郁は堂上の目を見つめて頷いた。自然と唇が重なる。注ぎ込まれるのは深い愛情と 大きな勇気。
郁は携帯を取り出し、通話ボタンを押した。

コール5回で父が出た。
『はい。――郁か。久しぶりだな。』
「ん、郁です。久しぶり。」
『どうだ。元気でやってるか?』
「あたしは元気。そっちは?」
『ああ、元気だ。母さんもな。』
「そう………。」
郁の手を握る堂上の手は 指を絡めて徐々に力が入ってくる。痛くないように気遣いながら。
郁は目を閉じた。
『どうした?』
電話の向こうで 父が優しく尋ねた。
「――お父さんにね、会ってもらいたい人がいるの。」
『………』
息を呑んだのが分かった。
「今、お付き合いをしている人がいて――結婚を考えて、います。」
『――そうか。』
電話では父の表情を窺い知ることは出来ないが、少なくとも否定的な声ではない事にホッとする。
「それで――」
『どんな男だい?』
「え? どんなって…。」
郁は堂上の顔を見た。
「しっかりしていて頼り甲斐があって、強くて暖かい人だよ。仏頂面だけどとっても優しいの。あたしがずっと追いかけたいと思ってる背中なんだけど……並んで歩んでいきたいの。支えてもらってばかりだけど…これからはあたしも支えていきたい――」
『堂上君かい?』
穏やかな声で 父は言い当てた。
「な、何で」分かったの?。
『はは、そりゃ分かるよ。彼しか考えられない。』
いつの間にやら親しくなっているらしい堂上と父に郁は首をかしげた。
『連れておいで。』
「――うん。」
『母さんにかわる。』
「へ?」
郁に動揺が走った。そこにいるの? まさか聞いてたの?。
堂上は一気に緊張した郁の肩に手を回した。
『郁。』
母の声はやはり固い。
「は、はいっ」
『…………』
「…………」
『会いたいわ。あなたにも。堂上さんにも…。』
郁はごくりと唾を飲んだ。
「うん、あたしの尊敬してる人だよ。会って欲しいの。」
そして一番祝福して欲しい。好きになって。あたしを、篤さんを。
『来月の公休が決まったら連絡しなさい。父さんも休みを取る。』
電話口に変わった父に 郁は声もなく頷いた。涙がこぼれ落ちる。
「――うん。連絡する。…お父さん。」
『なんだい?』
「ありがとう。」
会ってくれると言ってくれてありがとう。お母さんを説得してくれていてありがとう。そして、愛してくれていてありがとう。
『おやすみ。』
「おやすみなさい。」
通話を終え、はらはらと流れる涙を 堂上は拭ってくれる。
「篤さん――。」
「親父さんとは特段連絡を取っていたわけじゃない。」
堂上はポンと郁の頭に手を乗せた。
「県展以降では 当麻先生の事件が一段落した頃に俺から郁の無事を報告したな。後は親父さんから三正への昇任試験の結果の問い合わせぐらいだ。何れも事務的な応対だったんだが…。」
交際に関しては触れなかった。あくまで上官としての報告に留めたのは、やはり母親との雪融けを待つつもりだった。
「父親なんだな。」
感じるものがあったのだろう。愛する娘に虫がついたのを。

会いたいと言ってくれた母親に 郁の幸せを約束しに行こう。宣言した通り何度でも行く覚悟は出来ている。
月明かりの下、誓いのキスを重ねる2つの影が――長くのびていた。


===========


婚約から結婚まで という 凛香さんのリクエストです。
なるべく丁寧に捏造していきたいのですが(^^ゞ。そう、あくまで勝手な捏造ですのでね。生ぬるく お見守り下さい。
困ったちゃんの郁ちゃんママですが、私も同じ母ちゃんですのでね。参考に訊きたい母は今、実家の盆棚に鎮座しているでしょうか。実家には帰省しない娘です。
さて どう話が進むかな?。気長にいきたいです。
23:28  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(3)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2013年08月15日(木) 23:42 |  | コメント編集

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 | 2013年08月16日(金) 00:05 |  | コメント編集

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 | 2013年08月16日(金) 07:59 |  | コメント編集

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