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2013'10.04 (Fri)

「光を拾って」7(完)

うおお、ギリギリです。
詰め込み過ぎて長くなっちゃって、削ってみたり入れてみたり。敢えて書かなかったモノもあるんですが、いろいろ言い訳してると日をまたぎそうなので、そのまま更新です。疑問の残る終わり方かも?。力量不足は中林君だけではありませんね(>_<)ゞ。
あ、「光──2」はカテゴリが未分類だったんですね。ママさんご指摘ありがとうです。カテゴリから来て下さる方には行方不明だったわけです。成る程。ちょんたさん、すみませんでした(^^ゞ。

いかん、ホントにギリギリだ。長いですよ。(我が家比)

↓こちらから どうぞ

【More】

「光を拾って」7


時折冷たい風が吹く。
中林の言動に不安を抱いた柴崎は小牧に連絡を入れた。きけば堂上は郁と外食に出たらしいと。
この時間、隊の食堂は閉まっている。中林も外にでも出たであろう。ついでもあって柴崎も小牧と出ることにした。

「小牧教官、中林二正はどうして異動されたんですか?」
中林は小牧達が特殊部隊入隊後 程なく中部図書基地に異動していった。実家が名古屋であるから無理な話ではないが、防衛部から業務部への部署の変更もされた。
「家庭の事情としか聞いてないけど…。本人からの申請らしいよ。」
「そうですか…。」


郁に査問会から出頭命令が下った時、柴崎は稲嶺に許可を取り 査問記録を閲覧した。
査問会出頭者リストには当然堂上篤の名があった。
その時の始末書や報告書も山のように纏めてある。その量たるや追求が多かったことが伺えた。
今ではデータ処理する方式をとっているが、まだ当時のものはそのまま残されていた。悪筆ながら几帳面に並べられた文字。
それらを年度順にファイリングしてある表紙裏に 閲覧記録があった。
名だたる幹部の中に見知らぬ名前。
「中林秀哉」
改めて堂上の記録をめくると 当時の連絡調整欄にも名前が出てきた。茨城市立図書館と基地間での情報提供。時折不利な項目も。
後に分かったのは この人物が堂上と同期であること。
そして頻繁に他の情報をも引き出した形跡からわかることもあった。


案の定 公園で対峙する3人の姿。
そして中林の主張に辟易した。何て勝手な言い分だ。あんたにこの2人の絆の強さは見えないの?。惹かれ合う2人を邪魔することに意味を見いだせるの?。

「でも追いかけて来ちゃったんですよ、その娘は。」

情報操作なんかに負けるような絆ではないのだから。
「情けなさすぎ。あたしの先輩格がこんな男だなんて。」
「先輩格?柴崎さん、何か知ってるの?」
小牧が怪訝な顔をする。
中林は柴崎から目を逸らした。
「図書大学校閉校と同時に、当時理事長でもあった稲嶺顧問が構想されていた部署が実験的に立ち上がろうとしていました。中林二正、拝命されましたよね。」
柴崎は詳しい言及は避けたが その場にいる者には察しがついた。中林はその初代の候補生。
「その権限を悪用したとは…あってはならない事だわ。」
柴崎の冷たい視線は痛かった。
「…そうさ、俺は最低さ。稲嶺司令にも顔向けできない。堂上に何の罪もないのも承知している。」
中林は低く喉の奥から絞り出した。
「ただただ遣りきれないんだよ。おまえらのように涼しい顔して何でも手に入れる奴がいるのが。」
堂上を 小牧を 睨み付ける。
常に3番手。
「俺の欲しい物 全て──。力も能力も、信頼も…一途な愛情も。」
ちらりと郁を見た。

──助けて貰ったお礼が言いたいんです。大好きな本とあたしを守ってくれた図書隊員に。
勢い込んで弾けるように 茨城市立図書館のカウンターで訴えていた。キラキラと輝く目は元気な恵美と同じ。
これ以上お前に必要ないだろ?
少女を体よく追っ払うのは簡単だった。

「その上 奪うのか?」
中林の目に光は宿らない。


「ごめんなさい。」
か細い郁の声がした。
「あたしが考えなしに抵抗したばかりに、教官に約束破らせちゃって…恵美ちゃんに寂しい想いさせたんですね。」
中林は郁を見て唇を噛んだ。
「大事な手術の前に、不安で不安で仕方ない時に 教官が元気付けてあげられたら良かったのに──あたしが邪魔しちゃったんですね。」
郁の声が震える。
「郁。それは違う。」
「あたしばっかり浮かれて、その間教官を査問で苦しめて、中林二正や恵美ちゃんまで……」
郁の言葉が途切れる。
「郁、話を聞け!」
堂上は郁の両肩を掴んで体を向かい合わせるが、郁の顔は苦しそうに俯いたまま。
「ごめんなさい ごめんなさい」
郁の目からは涙が止めどなく流れる。堂上が揺すっても 頑なに目を閉じ 首を横に振り続ける。王子様だ何だとのぼせ上がっていた自分が申し訳なくて。
「郁!郁!!」
郁の抵抗が激しくなり、堂上の手を振り解こうともがき始めた。
「っ!!」
堂上は郁の手首を掴んで体をぶつけるように引き寄せると、嗚咽を絞り出す郁の唇を塞いだ。自らの唇で。
反射的に身を引こうとする郁の後頭部を押さえて深く口付ける。固く閉じた郁の唇をこじ開けるように割って入ると、堂上の胸を拳で叩いて抵抗をみせていた郁も やがて力を抜いて身を預けてきた。
大人しくなった郁から唇を離すと、肩口に郁の頭を抱え込んだまま 中林に向かい合う。

「見計らい権限を行使したのは勝手な俺の判断だ。浅はかな行動だったが今でも後悔はない。」
郁の体をギュッと抱き直す。
「──それに、恵美ちゃんは 俺を待ってた訳じゃないだろうしな…。」
中林は堂上の言葉に激昂した。
「今更何を言う!恵美の気持ちを踏みにじるつもりか!」
「手術が決まったら応援に行く、という約束を破ったのは事実だ。それは本当に悪かったと思っている。でも恵美ちゃんが1番に望んでいたのは違うんじゃないか?」
その場にいる者は堂上が云わんとすることが分からなかった。
「中林、恵美ちゃんはな 俺が見舞いに行くと、お兄ちゃんのことばかり話して お兄ちゃんのことばかり自慢して、そしてお兄ちゃんのことばかり心配していた。」
「え?」
「図書大学校で兄が何を学んでいて、どんな生活をして、どんな友達がいて──お前、恵美ちゃんに自分の事を話してやってたか?」
「そんなこと…。」
中林は眉間に皺を寄せる。
「恵美ちゃんは自分中心にお前が考え過ぎる事を心配していたよ。俺はお前とそんなに親しくはなかったからな、事実を話して聞かせるだけだ。周りの大人みたいに調子よく話を合わせないのがいいってさ。」
どういう意味かは知らんがな、と呟く堂上は郁の背中をポンポンと叩く。
郁は落ち着きを取り戻していた。
堂上の誠実な言葉は誤魔化すことはしない。信用できるのだ。それは堂上の人柄が反映される。病気を抱え 気を使われてきた恵美には逆に嬉しかったのだろう。時に要らんこと言いだったり言葉足らずだったりはするが、恵美との会話にそんなややこしい事態は起こり得ない。無論そこに憧れや恋心も付加されたことだろうが。

ふと 堂上の肩越しに 柴崎と目が合った。

柴崎も郁と目が合った事に気付いて笑みを浮かべる。
それはそれは艶やかに、意地悪気に。
「!?」
ちょっと待て。この状況は。ってか、さっき何てことを!。柴崎の目の前でっ!。
チラッと視線を動かす。
こ 小牧教官もいるし!
「~~~~~っ!」

「恵美ちゃんにはお兄ちゃんが一番だ。感謝してたし、信頼していた。それを兄貴が疑うのか?」
「………」
「恵美ちゃんにはお前がついていた。心細くも何ともなかったろうよ。手術には希望を持って臨んだと思うぞ。欲しがるばかりじゃ 手に入れた物に気がつかない。案外自分から捨ててる物が多いんじゃないか?」
恵美の本心も稲嶺の期待も。
「信じてるんだろ?恵美ちゃんが目を覚ました時、1番に会ってやるために 業務部に転身してまで傍にいてやるんだから。」
あんなに拘っていた特殊部隊を目指すのをやめてまで選んだみちだ。
「知っていたのか。」
「情報はおまえ等だけのもんじゃないからな。恵美ちゃんが生きる原動力なら自分がどれだけ彼女に支えられているのか思い知れ。」
堂上は郁の肩を抱いて踵を返すと公園から出て行った。柴崎と小牧も続く。
後に残った中林は暫し動かない。
彼に光は戻るのか。堂上の言葉を繰り返し噛み締める姿は 冷たい風に晒されていた。


「堂上、お前どうして中林の攻撃を甘んじて受けてたんだ?」
小牧は訊いた。
「中林は余裕が無さ過ぎたんだ。無理してるのに支える事しか知らない。もっとも妹と母親を守る自分にしか存在意義を見いだせない男だからな。恵美ちゃんの話からヒシヒシと感じたよ。怒りをぶつけることしか出来ない男の攻撃なんか痛くも痒くもないさ。」
器の大きさはこういうところに表れる。小牧の頬は緩んだ。
「言ってやれば良かったのに。」
「親しくなかったからな。教えてやる筋合いはない。」
あ、怒ってたんだ。郁は肩を竦めた。
「俺には 小牧を始め、理解者がいると信じられた。その差は大きい。自分を支えてくれるものを信じる事は大きな力になる。」
名も知らぬ少女がどれだけ占めていたのか。郁の肩から外さない堂上の手に 小牧と柴崎の視線が注がれた。
「で、火がついている堂上は これからどうする?」
「へ?火?」
未だ真っ赤な顔の郁が小牧を見た。
「そりゃもう熱烈な火が見えましたもの。」
柴崎もニヤニヤ笑う。
「…忘れろ。」
堂上の眉間に定番の皺が寄る。
「これは笠原さんにしか鎮火出来ないよね。」
いや~いいもの見た と小牧の上戸が発動寸前だ。
このまま帰れば盛大なからかいが待っているのが決定だ。
「くそっ、頼む!」
郁の手を引いて反対方向に進み出した堂上に、外泊届けはお任せあれと 小牧と柴崎はひらひらと手を振った。困惑する郁が小さくなるまで見送った。
「強いお酒が飲みたいですね。」
「手塚も呼ぼうか。」


1つ1つ拾い続けた光が大きく輝く。堂上と郁の進む先が明るいように 大切な事に気付いた男にも光がさすのを祈ろうか。
眠れる姫が目覚めると信じて。
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