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2013'10.13 (Sun)

「予感」(リク26)

昨日は法事が終わったその足で主人は出張へ。行き先が京都ということで、長男と義弟も同行して行きました。主人は仕事で別行動なので、叔父さんが一緒で安心です。産まれて数ヶ月はここにいたのよ、と母ちゃんも行きたいところですがね。残念ながら母ちゃんお留守番です。
只今ちびと公園へ。例の如く勝手に遊ばせて母ちゃんポチポチやってます。

更新です。リクエスト内容は最後に。恋人期でムツゴロウ後の設定です。

↓こちらから どうぞ


【More】

「予感」(リク26)


陽気も穏やかな春。
図書館内に射し込む陽も柔らかだ。
「すっげえ。こんなに広い図書館だとはな。」
この日初めて武蔵野第一図書館に足を踏み入れた男は ぐるりと館内を見回した。
ロビーは広くとられており、アーチ型の天井は高く開放的だ。カウンター前を過ぎて歩を進めると、木目調の本棚がずらりと並ぶ。スチール製の本棚より重厚さがあり 落ち着いた雰囲気で、自分にはあまり縁のない場所だがちょっと腰を落ち着けたい気分になる。
「へぇー。」
目に付いた特設コーナーには、新緑を楽しむ山登り関連の雑誌から専門書が並べられている。
学生時代に山岳部に入ったのは子供の頃から慣れ親しんだ山遊びの延長だ。パラパラと写真集を捲って眺めていた。

今日は祝日。閲覧室には子供から高齢者まで、いろいろな年代の人が本を読んでいる。
静かな時間が流れる空間に 突然女性の声が響いた。
「誰か!スリよ!」
声がした書架から男が飛び出してきた。進路に立つ利用者を突き飛ばして真っ直ぐに玄関目指して走っていく。
「待ちなさい!」
別の書架から出てきた女性が追いかけると あっという間に差が縮まった。右手が犯人の後ろ襟にかかるところで男が振り向いた。
「郁!」
横から声が響くと女性は身を低くとり、振り向きざまに振り回してきたカッターを避け、そのまま叩き落とした。そして怯んだ犯人の懐に入ると見事に大外刈りを決めた。
流れるような動きに目を奪われる。そして更に驚いた事に、犯人に馬乗りになっている女性はよく知る人物なのだ。
「確保…!」
しかし後ろ手に拘束されたまま 体格の良い犯人は渾身の力で起き上がろうとして女性の体が一瞬浮いた。咄嗟に助けに入ろうとしたところ、横から風のように追い越してきた男が更に犯人を押さえ付けた。
観念した犯人は大人しく別の図書館員─多分防衛員だろう─に連行されていった。

犯人を取り押さえた2人の館員はその場に残っていた。男の方は女性の怪我の有無を確認し 頷くとポンと斜め上にある女性の頭に右手をのせた。その瞬間、犯人に対峙していた凛々しく厳しい表情から一転し 花開くような眩しい笑顔に変わる。
「いつの間にあんな顔するようになったんだ?」
つい抱え込むようにしていた写真集を棚に戻して、並んで歩き出した2人の館員に声をかけた。
「郁!」

堂上の耳に入ってきたのは知らない男の声。振り向くと郁の名を呼んだ背の高い男が立っていた。手塚程の身長で肩幅が広い。人懐っこい顔に見覚えがあるようなないような。
「お前すげーな。」
親しげに郁に近付く男は郁の知り合いか。気安く名前を呼ぶ男に堂上は眉間の皺を寄せた。
「な、何で?」
隣りの郁が僅かに後退る。その様子に堂上は2人の間に割って入り、郁を背に庇う。
「失礼ですが、うちの館員に何か?」
警戒しながら しかし一般利用者として問いかけた。
郁からストーカーの類の報告は受けていない。年からして30前半で 郁の同級生とかの仲間には見えなかった。
怪訝な顔をして堂上を見やった男が、「ああ」と納得して 堂上の後ろで隠れるように小さくなっている郁に声をかけた。
「郁、説明。」
堂上は郁からの答えを待った。男から目を離さない。
「あ、えと、兄 です。真ん中の。」
ペロリと舌を出しながら堂上に紹介する郁は、悪戯が見つかった子供のようだ。
「え?」
予想していなかった相手で珍しく間が開いてしまった。しかし道理でどことなく感じた空気を纏っている。
「──それは失礼致しました。」
気を取り直して礼をする。
「中兄、あの…上官の堂上二等図書正。…凄くお世話になってるの……。」
どう紹介したらいいのか。課業中だから上官としてだけでいいよね、と簡単に済ませた。
「妹がお世話になっています。」
堂上に握手を求めてくるこの兄は かなりフレンドリーだ。
「たまたま仕事で東京に出て来ててさ、ちょっと足をのばしてみたんだ。こんな立派な図書館で働いているなんて びっくりした。」
ニカッと笑う顔は流石に兄妹、よく似ている。郁も久しぶりに会う兄に嬉しげだ。
「笠原、もう昼休憩の時間になる。せっかく会いにいらしたんだ、早めに上がるといい。調書はこちらでとっておく。」
堂上はチラリと腕時計を見て郁に提案した。兄妹積もる話もあるだろう。実家に帰らずにいるが、兄妹仲が良いのは普段の会話で知っている。かなり激しいスキンシップのある兄妹だ。
「いえ、仕事の合間に来ているのでこれで。郁、夜はあいてるか?」
「へ?う、うん。」
「じゃ、食事でもしようぜ。えーと、堂上さん。」
「はい。」
「ご一緒して頂けますか?普段の仕事ぶりも聞いてみたい。」
初め遠慮していた堂上だが、兄の誘いはどことなく有無を言わせず、その笑顔に圧されて同席する事になった。
「じゃあ中兄、あたし調書とってくるから。」
「ああ、じゃ夕方な。」
手を上げて郁に応えた。
堂上は一礼して防衛部取調室に向かう。郁もその後を追った。
「……ふ~ん。」
兄は2人の後ろ姿を見送ると、目を細めた。


定時に仕事を終え、郁は連絡を入れて武蔵野駅で待ち合わせた。2駅先にホテルをおさえてあるらしい。
近くの居酒屋の暖簾をくぐる。個室の多いこの店なら、ゆっくり話も出来るだろうとの堂上の案内だった。
只の上官としか紹介されていない堂上の立場は微妙で、この場にいていいのだか少々疑問だ。しかし構わず話かけられ酒を勧められるがまま、いつしか兄のペースにのせられる。
子供の頃の話からお互いの近況まで。そんな話題は耳に心地良い。
薄めたサワーでもほんのり赤くなった郁が揺れ始めた。
「大丈夫か?」
「ん、ちょっと 御手洗い…。」
ふわりと立ち上がって廊下に出ていく郁は、特殊部隊での飲み会とはまた違った様子だ。安心しきった表情が少々幼く見えるのは、幼き日々を想像しながら話を聞いた影響か。堂上からふっと笑みが零れる。
「へえー、そんな顔するんだ。」
中兄と呼ばれる兄が、正面でニヤニヤしている。
「小難しい顔する男だなって思ってたけど、案外甘々?」
ぐっと固まる堂上に 小牧張りの笑いが浴びせられた。
「調書とりに行くって言った2人の距離は上官部下の距離じゃなかったんだよね。ここ来た時も郁のヤツ躊躇なくあんたの隣に座ったし。」
指摘されて あ、と堂上も気がついた。
「郁の酒の量も把握してるみたいだし?」
甲斐甲斐しく世話をする上官の図は見ものだったよ、と腹を抱える。
意識していなかった と堂上も縮こまる。
戻ってきた郁と当たり障りのない話をしているうちに、郁の目がとろんとしてきた。机に突っ伏した体はやがて自然と堂上の膝に。頭の収まりが落ち着くと軽い寝息が聞こえてきた。
その頭に軽くポンと弾ませた手で、柔らかく髪を梳く仕草を見せる堂上を、兄として複雑かつ暖かく見詰める。

仕事の為 家を出ている。去年の正月だったか、実家の集まりで親父と大兄から郁が図書隊の防衛員、しかも特殊部隊に所属していると聞かされた。驚きはしたが、俺達兄弟は郁の性格や能力を把握しているだけに 受け入れるのは早かった。驚きは別の事に対してだ。
ヒステリーに乗り込んで行ったという母の行動に呆れはしたが、異常なまでの女らしさを要求していた経緯を知っているだけに想像出来た。しかし コレまでその母を咎める事のなかった父親が、郁の進路に理解を示し 妻を説得しているのだ。
大兄に探りを入れると、どうやら父には郁の周辺に信頼の出来る人物を見出しているらしい。
頑なな母を時間をかけて解している。郁の方も電話をかけて来るようになった。ほんの少しだが歩み寄りが見られる家族の雰囲気は嬉しい。母の愛は深いのだから。
目の前の男が要になっていると確信した。
男兄弟に揉まれて逞しかった妹が、全幅の信頼を寄せている。それもすこぶる綺麗になって、幸せな予感を漂わせている。
「大事にしてくれてますね。」
いろんな意味を込めて投げかけた。
「──はい。」
堂上が姿勢を正すのを見て、手で制した。
「あ、続きはいらないから。それ、俺の役目じゃないし。」
兄は満足して伝票を掴むと席を立つ。
「あ、それは。」
「これは笠原家の必要経費。堂上さんはコイツを責任持って届けてやって。」
美味い酒だったよ とヒラヒラ手を振って出て行った。

膝の上で幸せそうに眠る郁を見ながら残りの酒を飲み干した。
「とんでもなく緊張したの、分かるか?」
兄貴の値踏みは厳しいからな と苦笑する。もっとも郁を両親に会わせた無茶振りは先だけど。
柑橘系のアルコールに甘く浸かった郁の唇を一撫でする。
今日は兄貴の手前真っ直ぐ寮に戻ろうか。せめて と、あどけないない寝顔を堪能した。


=================


リクエストはるいまおてぃさんより
「恋人期、ムツゴロウ後。大兄・中兄・小兄を登場させたお話(誰か一人でもいいですが、二人いたら嬉しいです)。突然図書館にやってきて、郁の捕りものを目の当たりに(防衛部所属はバレている設定で。特殊部隊なのはどちらでも)。夜呑みにいって、最終的に堂上教官と郁のいちゃいちゃラブラブに充てられる。」
まんまです…。ひねりも甘さも加えそびれました(*_*;。毎度コメント頂いてるのに申し訳なさでいっぱいな。
中兄を誤解させて堂上さんヤキモキって話はありきたりだしって、敢えて普通にご対面です。日常が好きなので、とっても我が家らしい作品かなって、勝手に思っています。
きっと中兄は家族には敢えて報告せず、婚約後に「実は俺先に飲んでるんだぜ」なんて自慢しそうです。認められない相手だったら全力で潰しにかかるつもりだったかも?。
因みに私自身、実家の兄2人を「大きい兄ちゃん」「小さい兄ちゃん」って呼んでました。2人とも165だから「大き」くはないですね。細いから堂上さんよりずっと華奢。今や立派なおじさんです。
兄弟の話は好きなんです。るいまおてぃさん、リクエストありがとうございました(o^^o)。
16:20  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2013年10月13日(日) 17:52 |  | コメント編集

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 | 2013年10月13日(日) 17:58 |  | コメント編集

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 | 2013年10月13日(日) 20:29 |  | コメント編集

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 | 2013年10月13日(日) 22:20 |  | コメント編集

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