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2012'10.21 (Sun)

「特別な名前」

今日は村をあげてのスポレク祭。ムカデ競争に出場する村民の英香です。
さて、更新です。いつもより長いです。読みにくいかなぁ。恋人期で入院中。以前書いた「リハビリ室」とリンクしています。すみません、記事のリンクの仕方が分かりませんが10/11の記事です。オリキャラ有りです。都合良すぎ?。


↓こちらから どうぞ


【More】

「特別な名前」


堂上の入院中、郁は時間を見付けては病院に通っていた。仕事の都合上 そう毎日は行けないが、出来るだけ会いたい。元々毎日顔を合わせていた訳だから、会えないのはひどく寂しく感じていた。
「昨日もお見舞いに行ったんでしょ?。1日くらい会えなくったっていいんじゃない。」
残業で遅くなった郁を部屋で迎えた柴崎が お茶を淹れながら声をかけた。
「べ、別に何も言ってないし!。」
郁は出されたお茶に口をつけて「あつっ」と離す。
「顔に書いてあるわよ。会えなくて寂し~いって。」
柴崎はふふん と郁の鼻を突いて微笑んだ。
「ホント、くっついた途端にラブラブよねぇ。あんな教官が拝めるなんて、思いも寄らなかったわ。」
先日のリンゴ事件のことだろう。リンゴを剥く練習に付き合ってもらっている以上、からかわれても何も言えない。
「2人っきりだと どう呼んでるのよ。い・く?。いくちゃんとか?。く~、どんな顔して言ってんだかっ。」
「……呼ばれてない。」
「は?。…まだ笠原なの?。」
膝を抱えてブスくれる。
「どっちもなし。おい とか おまえとか。」
「熟年夫婦?」
む~と郁はうなだれた。


リハビリ室では堂上が汗を流していた。
「最早 リハビリと言うよりスポーツジムだな。」
堂上の横で 理学療法士の須田は呆れていた。一通りメニューを終えた堂上は そのまま自主トレに入り、熱心に鍛えていた。
郁が小牧から書類を預かってきたのはその頃だった。堂上はいつもこの時間はリハビリ室にいるので 直行することにした。
郁の前を女性が歩いていた。小柄で綺麗な女性だった。年は郁より少し上か。(患者さんの御家族かな。)リハビリ室に入っていくのが見えた。
「また入院してるんですってね。怪我の具合はどうなの?」
女性が気軽に堂上に話し掛けたのを見て、咄嗟に郁はドアのかげに隠れた。古くからの知り合いらしく、親しげに話している。その内須田を「お父さん」と呼ぶのを聞いて、須田の娘だというのが分かった。
『こんな男が相手ならって狙ってたんだよ。』
須田の話を思い出してバクンと心臓が音を立てた。華奢で綺麗な女の人。端から見たらお似合いだ。堂上の声が聞こえた。
「―――ミキもだろうが。―――」
ミキ?。堂上が女性を下の名前で呼んでいる。突然息が苦しくなって心臓は痛いほど激しく打っている。グラリと身体が揺れると ガタンとドアにぶつかった。堂上と目が合う。 郁は慌てて書類を抱えたまま踵を反して走りだした。

ロビーまで来ると 立ち止まり、書類を眺めた。
「病室に置いてこよう。」
ポツリと呟いて階段に向かった。『ミキ』堂上の声が耳から離れない。堂上が女性を下の名前で呼んでいるのは聞いたことがなかった。それだけ特別な女性なんだろうか。過去にどんな関係があったっておかしくない。でも…。
「郁!!」
大声で名前を呼ばれた。はっと顔を上げると 階段の上から大きな音を立てて何かが転がって落ちてくる。判断が遅れた。ぶつかる――。
横からの衝撃で突き飛ばされたのが分かった。落ちてきたのは薬品や処置器具を乗せたワゴンだった。割れた瓶や器具が散乱している。上から真っ青になった看護師が駆け降りてきた。「大丈夫ですか!」
「郁!!怪我はないか!?」
肩を掴まれ揺すられる。堂上が飛び込んで来たのだ。
「郁?」
暫く頭が働かなかった。何かが違う。
「堂上さん、自分が怪我人だって忘れてたでしょう。」
松葉杖を持った女性が近づいてきた。
「ああ、すまない ミキ。」
堂上の言葉に郁は顔を背けた。
「ひとみ、堂上君の彼女の怪我を確認してくれ。」
須田が『ミキ』に声をかける。
ひとみ?。女性が自己紹介をする。
「私は 三木 ひとみ。旧姓は須田 ひとみ。このおじさんの娘なの。」
一応お医者さんだからね。と郁の手足を検分した。
「ん、大丈夫そうね。堂上さんも無理しちゃって。傷口開くわよ。まあ、彼女が大事で仕方ないってのは分かるけど。」
はい、と松葉杖を堂上に渡した。郁は慌てて立ち上がり、堂上を支えた。
ワゴンを片付けた看護師に丁重に謝られ、無事だったからと 須田とひとみとも別れて病室に戻った。
「教官、傷口大丈夫ですか?。すみませんでした。助けて頂いて。」
堂上をベッドに誘導し 松葉杖を定位置に立て掛けた郁は頭を下げた。
「いい。郁が無事だったんだから。どうした、元気がないぞ?。」
どこか痛めたのか と郁の頭に手をのせた。
「教官――、名前…。」
指摘されて 堂上は バッと口を押さえた。
郁をギロリと睨み、「嫌、か?」と聞く。照れているのだ。
郁はにっこり笑うと、「嬉しいです。」と答えた。
堂上はホッとした顔になり、「郁。」と呼んで引き寄せるとキスをした。
「三木さんって、下の名前かと思いました。」
堂上の腕の中で 郁は呟いた。
「あほう。大体あっちは新婚だ。お互い幸せだね なんて話をしてたんだ。おまえ、ろくに話を聞いてなかったんだろ。」
三木と敬称なしで呼ぶように言われていたんだと、背中をポンポンと叩きながら話した。
「名前で呼ばれると 何だか特別って感じがします。」
「当たり前だ。俺にとっては郁だけが特別だ。」
郁――コツンと額を寄せる堂上に 郁は照れながらも微笑んだ。優しいキスから深いキスへ。何度も名前を呼ばれては重ねていった。
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