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2013'11.25 (Mon)

「信じることを」2

日にちを跨いだ英香です。へへ、寝落ちです。
昨日は長男の誕生日でした。プレゼントは毎年釣竿です。現在渓流は禁漁なので、テスト終わった来週末に釣り堀に行くらしい。主人は仕事なので叔父さんと。趣味が一緒だと便利です。
更新です。続きです。今回の連載は全体に低糖ですが、お付き合い頂けると嬉しいです。

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「信じることを」2


数日後に開催されたイベントは 何事もなく終了した。
「次はクリスマスイベントだからね。業務部の方は同時進行だったんだから、やんなっちゃう。良化隊も大人しくしてくれればいいのに。」
柴崎の愚痴もごもっとも。先日の抗争では備品や施設の損傷はなかったものの、年末にかけて忙しくなる時期に出来るだけいざこざはあって欲しくない。
「じゃ、堂上教官。明日からお手隙の際は笠原の業務部派遣を許可して下さいね。」
館内飾りつけには 手先の器用な郁も駆り出される事も多くなる。柴崎は要件だけ言うと さっさと業務部に戻って行った。今日は残業らしい。
「忙しくなるのは こっちもなんだがな。」
「こっちでミスられるより向こうで少しでも役に立った方が…」
堂上の後に続いた手塚のセリフに郁が憤慨しながら 日報を提出する。
「あたしだって結構役に立ちますよ、ね!」
必死に堂上に同意を求める郁を 小牧がクスクスとフォローする。
「まあまあ、統計的に良化隊の襲撃も減る時期だし、柴崎さんの期待に応えるのもいいんじゃない?。彼女には世話になってるしね。」
すっかり仮堂上班員と言われても不思議ではない柴崎だ。逆らわない方が身のためというもの。
「明日の午後から手伝ってやれ。よし、帰っていいぞ。」
班長会議を控えた残業の堂上は、判を押すと郁の頭をぽんと叩いて作業にかかる。
「…お先に失礼します。」
稲嶺の辞任で大きく揺れている図書隊ではあるが、利用者に不便を強いるわけにいかない。予定通りイベントを催す、郁に出来る事の1つだ。裏で堂上達上官が奔走しているのも。
その忙しい中 ふとした表情が柔らかく感じる時がある。意識すればするほど 落ち着かないのはこんな時。触れられた場所が熱い。
郁はパタパタと廊下に出た。
すっかり日が落ちるのが早くなった。赤くなった頬を夕陽に隠すように足早に庁舎を後にした。

寮に入るところで 郁は思い立ってコンビニに足を向けた。
買い置きのお菓子が底をつきそうだったっけ。残業後の愚痴を聞きながらつつくのに必要だ。日が落ち切る前に出掛ける事にした。
秋冬には新製品のチョコが出回る。なかなかの戦利品を手に入れ 店を出た。
「あっという間に暗くなるのよね。」
コンビニ袋をぶら下げて 郁は帰り道を急いだ。
鼻歌を歌いながら歩いていると ふと視線を感じた。基地まであと少し。駆け足で路地を抜ける。
と、電柱の影から腕が伸びてきた。
「!?」
点灯し始めた街頭の脇、暗がりに引き込まれる。後ろから口を塞がれ 利き腕を封じられた郁は、無我夢中で身体を捩る。隙間から片腕を外して相手の腕を掴み──。
「おっと、これ以上噛み跡を付けないでくれ。」
襲ってきた男が口を開いた。
「大声出さないなら手を外すよ。」
案外落ち着いた声に 郁は動きを止めた。
「突然悪かった。大人しくしてくれ。」
こんな襲われ方をされて大人しくなんかできるわけないのだが、危害を加える雰囲気ではないようで、取り敢えず郁は頷いた。
お互い警戒しながら体を離す。
郁は鞄でガードしながら男の足を強かに踏みつけると、2·3歩飛び退いて向き合った。
「痛いな。さすが特殊部隊。威勢がいい。」
踏まれた足を大袈裟に痛がりながら、男はニヤリと笑った。
「…誰?」
郁はジリジリ間合いを取る。
「笠原さんの歯型がここにくっきりと。」
男は右の手をひらひら振って見せる。
「あんた、まさかあの時の良化隊員!」
先日の図書回収の際に郁をエレベーターに引き込んだ良化隊員だ。
「正解。因みに君の名前はあの時別の隊員が呼んでたのを聞いたんだ。」
へらへらと男は笑う。
「ちょっ、ここは図書基地の真ん前よ!。良化隊員がこんな所に何の用があって──」
「笠原さんもなんでまた図書隊の、しかも特殊部隊なんかにいるんだよ。」
「は?」
質問を質問で返されて郁はキョトンとした。
「なんでって、本を守るために決まってるじゃない。」
「別に前線に出る必要無くない?女の子なのに。」
郁は男を凝視する。
コレは何だ?。敵に心配されてるのか?。
「あんたに関係ないでしょ。そっちこそなんで良化隊なんかに。」
「公務員だからな。」
「はあ?」
さも当たり前のように男は答えた。
「手当ても出るし、別に不服はない。」
「良化特務機関は自由に本を読む権利を取り締まる一方的な組織なのよ。あんただって好きな本を狩られる身になったら…」
「本には興味ないからな。ただの紙くずだろ。」
顔色も変えずに言ってのける男に 郁は喰ってかかる。
「なんですって!?。あんた本を読まないの?」
「メディア法に則った書物だけを読めばいいだけだろ。敢えて検閲されるような本は必要ないんだから さっさと引き渡せばいい。君みたいな女の子が危険を犯すなんてバカバカしいよ。」
「ば、バカバカしいですって!?。ドキドキわくわくしながら読む本を勝手に狩る方がおかしいでしょ。」
「他の本を読めばいい。」
「その本じゃなきゃダメなのもあるの!」
高校生の時の童話のように。
「思い出が詰まってたり、出会いがあったり──」
「そんなもんか?」
「あんただって趣味とかあるでしょ。」
んーと男は考え込む。
「野球とかサッカーとか。」
「んじゃ、プロ野球は見てもいいけど草野球はダメ とか、勝手に決められていいの?」
更にんーと考え込む。
「じゃあさ、明日午後から図書館に来なよ。あたしがレファレンスしてあげる!。絶対面白い本があるからさ。」
話が変な方に転がっていったが ココまでくると意地だ。何としても本の良さを思い知らせたい。
「わかった。俺は伊東だ。そんなにいいもんなら楽しみにしてるよ、笠原さん。」
伊東と名乗った良化隊員は、踵を返すと闇に紛れていった。
来るのか、ホントに。良化隊員が。
郁は ポカンと暫く闇を眺めていた。

「笠原。」
呼ばれてギクリとする。堂上だ。
「柴崎が寮に帰ってもおまえがいないって連絡をよこしてな。」
落ちていたコンビニ袋を拾い上げて眉間に皺を寄せる。
「何か あったのか?」
訝しげな目で見る堂上に 郁はぶんぶんと首を振る。
「い、いえ。ちょっと新製品を選ぶのに手間取っちゃって…」
良化隊員のことは言わない方がいい。余計な心配をかける。
「暗くなった。物騒になる。さっさと帰るぞ。」
郁に背を向けた堂上を見詰める。
図書を守る為に戦う。図書隊に意味はある。
例え本に興味ない人がいても、伝えて行くべき歴史や想いを残すは書物の役目。伊東が疑問も持たずに奪おうとした古来のならわしをしたためた図書は、私達を形作った大切な教え。
中には今でこそ間違った考え方が記されていても、それを知った上で我々が考える事に意味がある。
先日のイベントでの利用者の感想に教えられたこともある。守って良かった。守るべきだ。
この人と共に。
02:03  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2013年11月25日(月) 09:59 |  | コメント編集

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