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2013'11.27 (Wed)

「信じることを」3

というわけで、連続投稿だったりします。
投稿しとかないと 次が書けない性分なのです。
えっと、Twitterの問い合わせも頂きました。アカウントってやつですね。(と訊く時点で使いこなせていないのがバレバレ)
@ichikanomarch です。
が、まだそんなにつぶやいていません。他のお部屋も覗いていいのかビクビクしてます。お声かけ下さると有り難いかも。裏設定とかつぶやけばいいのかな?。

更新です。続きます。

↓こちらから どうぞ


【More】

「信じることを」3


翌日の午後は館内業務。
郁は配架図書を抱えて歩いていた。主には季節書架の設置。クリスマスに向けて 関連図書を集めていた。
「笠原さん。」
声を掛けてきたのは伊東だ。
「わ、ホントに来た。」
「ひどいな、来いって言ったのは笠原さんだろ。」
声をひそめながらも肩を揺らして笑う伊東は、黒いジーンズにチェックのシャツ、緑のジャンパーという無難な装い。見事なリぺリングを見せていただけに肩幅は広くがっちりした体型だ。
「よく堂々と入って来れるわね。」
ぱっと見 ガタイのいい普通のあんちゃんだが 目つきは鋭い。
「襲撃以外は滅多に来ない場所だからな、どうも場違いな気はするよ。」
キョロキョロと辺りを見回すが 元々動じない性格か、どっしり構えているようにも見える。
「ちょっ、下手なこと言わないでよね。聞かれたらややこしくなるでしょ。」
郁はグイグイと伊東の背中を押して一般図書の並ぶ書架に案内した。
武蔵野第一図書館は関東屈指の蔵書を誇る。必ず興味を引く本があるはず、と早速郁は息巻いた。
「それにしても 結構人がいるんだな。」
平日の午後だが 閲覧室は静かに本を読む老若男女の姿が多く見られる。
「検閲で自由に本が買えないからよ。価格も高くなってるし、読みたい本が狩られる今 図書館でしか読めない本がたくさんあるんだから。」
プリプリ怒りながらスポーツ書架に入っていく。
「取り敢えず野球関係?。選手の伝記とか…あ、何年か前に賞をとってた小説が球児の話だったな。」
別の書架にも回り 数冊手にとって唸る。
「野球、やってたの?」
内容を絞るのにいくつか質問する。
「学生までだ。最後は肩を壊したからモノにならなかったけどな。」
「そっか…選手にとって故障は命取りの時があるよね。」
スポーツをしている者には大きな問題だ。陸上でも故障でグラウンドを去っていく仲間の背中を何度も見た。
「取り敢えず読みやすいのがいいよね…コレとか コレとか、どう?。」
伊東に本を渡す。
「…飽きっぽいのは自覚してるから 薄い本にしとくよ。」
「まずは1冊ね。いいと思うよ。お薦め。」
郁はにっこり笑うと胸を張った。

「誰?あれ。結構親しげだね。」
小牧が郁と男の姿を見て 堂上にこそっと耳打ちする。
「利用者にレファレンスしてるだけだろが。」
堂上は郁をちらりと見て配架作業を続ける。
「彼の方は真っ直ぐ笠原さんのところに行ったみたいだけどね。」
一瞬手を止めた堂上に 小牧はため息をつく。
「気になるんだろ?。」
視界から外れないところで仕事してるのバレバレなんだけど、とクスクス笑う。
「うるさい。仕事しろ、仕事。」
滞りなくレファレンスが出来たならよしとする。助けが必要なら と頭を掠めただけだ。
堂上は ひとり理由を並び立てる。
…気にならない訳ではない。
ひたむきに王子様を追い掛けてきた郁。ひたむきに本を守る郁。その眩しい程のひたむきさが 僅かに自分に向きつつあるのを感じられる。
王子様王子様と憧れを口にされる度に 変わった自分を否定された気分になって、─口に出したくはないが─勝手に苛立って…小牧の言葉を借りるなら、拗ねていた。
しかし 郁も王子様を卒業して、大きな抗争を経験し、成長し、広い視野をもつようになった。頼もしい部下として接すると同時に、1人の女性として意識している自分を自覚する。
「のんびりしてる間はないと思うよ。贔屓目なしで笠原さんは十分魅力的だからね、いくらでも人が寄ってくる。勿論、男もね。」
小牧はそう言うと、並びはじめたカウンターを手伝いに 堂上から離れていった。
──分かってるよ、とは口に出さない。聞かれたら確実に小牧は上戸に陥る。
手を止めて郁の方を振り返るが 既に男の姿はなく、柴崎の手伝いをさせられていた。柴崎の手が届かないところの装飾だ。
無邪気な郁の笑顔に思わずムッとする。
不安にさせるな。おまえの隣に他の男を立たせるな。ひたむきな気持ちを俺以外に向けようとするな。
そこまで考えて視線を外す。こんなこと言える立場でもないのに。未だスタート地点にも立っていないのに。
堂上は頭を振ると再び図書を手にした。


「ねえ、さっきあんたがレファレンスしてた男性は知り合いなの?見たことない顔ね。」
柴崎は脚立の上の郁にオーナメントを手渡しながら探るように訊いた。
「あ、うん。ちょっとね。あんまり本を読まない人らしくて いろいろ紹介することにしたの。」
天井から紐でぶら下げる。
「本には興味ないの?」
「らしいよ。だからどんなのなら読めるのか手探りなんだけどね。取っかかりとしては簡単のから。」
「じゃ、また来るのね。」
「ん。でもあたしが館内に出るのは限られるから、今度は休み時間にってことにした。」
他の館員のレファレンス中に 良化隊員だとボロを出されたらまずい。
「へー、わざわざ?」
「だって本の良さを知らないんだよ。絶対本を好きにさせてみせるんだから!」
星のオーナメントを振りかざす。
「なんでそんなに力入れてんのよ。」
「へ?。なんでって…。ど、どうしても好きにさせたいの!」
本の事を好きになれば 本を狩るなんて酷い事を止めるかも。
柴崎は、眉間に皺を寄せる誰かさんみたいな顔をした郁を下から見上げる。
──好きになるのは本だけとは限らないわよ。
無自覚で無防備な友人に ため息をついた。

01:45  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2013年11月27日(水) 05:11 |  | コメント編集

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 | 2013年11月27日(水) 12:31 |  | コメント編集

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