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2013'11.29 (Fri)

「信じることを」4

あ、ギリギリ更新の英香です。
今日は小学校で 地震を想定した「児童引き渡し訓練」でした。
メール配信の後、子供を学校まで引き取りに行くわけです。徒歩でも車でも、とのことで、割と近いし散歩がてら徒歩で──寒いから車で行きました。
各地で雪の声が…。苦手です。が、年に1度 でっかい雪だるまを作るのは定番です。凝り性なの。

更新です。続きです。
捏造ですのでね、深く突っ込みないようにお願いいたします(・∀・)ノ。

↓こちらから どうぞ

【More】

「信じることを」4


郁は食堂で急いで昼食をとる。
「お先に失礼します。」
堂上達に挨拶をすると トレイを持って立ち去った。
「例の レファレンスかな。」
小牧は堂上を一瞥する。堂上は黙ってお茶に口をつけた。
「3日と開けずに来てますよね、あの男の利用者。…どこかで見た様な。」
手塚がぼそりと呟いた。
「おかしいんですよ、あの娘。」
「何がだい?」
一緒に食事をしていた柴崎に小牧が訊ねた。
「笠原に何度あの利用者の素性を問い詰めても 絶対に口を割らないんですよ。そろそろボロを出すかと思ってたんですけど、話を振ってもはぐらかしてばっか。」
柴崎の追及に耐えるとはなかなかだ。
「どんな本を勧めてるんだろう。」
「最初はスポーツ関連みたいでしたけどね、今は多岐にわたってるようで。」
ガタリと椅子を鳴らして堂上が立ち上がる。
「順調に本が紹介出来てるんだろう。熱心でなによりだ。」
そう言って1人食堂を出て行く堂上の背中を 小牧と柴崎は見送った。
「気になるなら直接笠原に聞けばいいのに。」
「だいぶわかり易くなったんだけどね。」
せっかく動き出す雰囲気を醸し出していた堂上が 再び蓋をしてしまう。
──何やってんのよ。
もどかしい2人に 柴崎はため息をついた。

「読んだ?どうだった?」
「んー、まあまあかな。」
最初借りた本は 半分も読めなかったらしい。──文字ってめんどー。途中で寝たのだと。
取り敢えず分かったのは、展開が早くて 勧善懲悪がハッキリした内容が好みだということ。
「単純なのがいいみたいね。そうだ、今映画でやってる原作本が人気なんだけど、分かりやすくていいかも。」
嬉々として検索をかける。
ム~と顎に手をあてながら本を物色する郁に 伊東は笑って肩を竦めた。
「ホントに本が好きなんだな。」
「へ?当たり前じゃん。」
「笠原さんはどんなのが好きなの?」
質問で返されて 郁は小首を傾ける仕草をする。伊東はその仕草を可愛いと思った。
「難しいところは正直苦手だけど、割と何でも手に取る方かな。アクションも恋愛も…ファンタジーも。」
「へー、ファンタジー。」
堂上と出会うきっかけになったのは 高校生の時に10年ぶりに出版された童話の完結巻。生き生きとした異世界を綴った温かな物語。
「どうせ似合わないって思ったんでしょ。」
郁はプイっと横を向いて書架横のワゴンを探ると、丁度返却処理されたという原作本を伊東に手渡す。
「いや、全然。なあ、どうせなら映画の方を観に行かないか?。」
伊東は本をパラパラ捲ってから近くの机にポンと置き、キョトンとする郁に提案した。
「は?なんでよ。」
「んー ほら、映画で内容を知った上での方が読みやすいかな、とか。」
「それは言えるかもだけど、却下。あたしは本のレファレンスしているのであって…」
「あんた こうして本を紹介してる方が似合ってるんじゃないか?。よりによって危険な特殊部隊なんかにいなくても、充分本に接せられるだろ。」
訝しげな顔をする郁に 伊東は続ける。
「良化隊員にも女はいるけど、大抵は現場に出ないし 出たとしても後方支援程度だ。好き好んで戦闘に関わるやつはいない。」
「…ただ戦闘をしたいんじゃないわ。本を守る為に戦闘という手段を取らざるを得ないだけよ。あたしは自分の手で本を守りたいの。」
そんな郁を眩しそうに見て、伊東は1歩郁に近付いた。
「笠原さん、もし──」


食堂を出た堂上は ぶらぶらと図書館に向かった。午後は事務室で内勤だ。時間までは余裕がある。目的もなくロビー脇の階段を上がると 書架の間に、郁と男の姿が見えた。ふと足を止めて手摺にもたれた。
体格のいい男だ。2人談笑する姿に心が乱れる。郁のことだ、何の思惑がある訳でなく、純粋にレファレンスをしているだけ。それを面白くないなどとは、上官として間違った感情だ。
ただ素性も分からない男というのは引っかかるが。
堂上は見ているのも居た堪れない気がして その場を去ろうとした。

「堂上教官!」
柴崎が声をひそめて声をかけてきた。後ろに手塚が続いている。かなり深刻な顔だ。
「堂上二正、あの男は良化隊員です。先日の抗争で笠原をエレベーターに引き摺りこんだ。」
それを聞いて堂上の脳裏にフラッシュバックで蘇る。非常階段で揉み合いになってリぺリングで逃れて行った良化隊員。鋭い目付きが特徴的だった。
「まさか。」
「笠原は知ってて…だから素性を明かさなかったんだわ。何てこと。」
堂上は慌てて書架に目をやるが2人の姿はない。カウンターに視線を移すと貸し出し手続きを経て玄関から出て行くところ。堂上の姿を見咎めると 足早に走り去った。確信犯か。
「っ!」
郁を見付けると 堂上は乱暴に郁の腕を掴んで手近な資料室に放り込んだ。手にしていたカバンが吹っ飛ぶ。
「教官!?」
突然のことに 郁は訳がわからない。
堂上は郁の胸倉を掴むと壁際に背を打ち付けた。
「痛っ!」
堂上の後ろには柴崎。手塚は部屋の外で人が来ないか辺りを伺っている。
「…な?」
「あの男は何者だ!」
堂上が至近距離で問い詰める。
「え…あの…」
郁の目が揺れる。
「イベント図書持ち去り未遂の良化隊員だよな。」
ドアに張り付いている手塚が指摘すると 郁は項垂れた。
「アホか貴様! 良化隊員を館内に連れ込むなんて!」
「違うんです! ただ…本に興味無いから本を狩るんだって言うから、本を好きになれば──」
「本を狩らなくなるって?──バカバカしい。」
「バカって──」
堂上の言葉に息を飲む。正面から見た堂上の顔が苦痛に歪んでいたからだ。
「おまえの短絡的な行動がどういう結果を及ぼすか考えてみろ。おまえは図書隊という組織の人間なんだぞ。」
掴んでいた郁の胸倉から手を外した堂上は、とん と郁を押し離した。
「それでもあの男と関わるというなら勝手にしろ。その代わり 図書隊を辞めちまえ!」
ドカドカと足音をたて勢いよくドアを閉めた堂上を 郁は呆然と見送った。

「バカよ。あんた自分が何したのか分かってないの?」
「あ、あたし…」
「これが公になれば査問は免れないわ。前代未聞よ。良化特務機関の内通者として吊るし上げられるのは間違いないでしょうね。」
「そんなつもりじゃなくて──」
「つもりも何も あんたの只の思い付きは、例え良かれと思った行動でも、図書隊全体を揺るがす問題よ。考えも及ばなかったの? 上官である堂上教官もただじゃ済まなくなる…。」
「!?堂上教官も?」
郁は慄いた。
「あの男1人本好きにしたところで検閲がなくなるとでも思ったのか?」
手塚の言葉に唇を噛んだ。
本を紙くずと言い切った伊東に 意地でも本を好きにさせてやる、と思った。図書隊とか良化隊とか関係なく。
「今更自覚なかっただなんて言い訳にもならないぞ。」
「それとも このまま堂上教官の言う通り、彼と手に手をとって図書隊を去るとでも?」
「そんなの…」
郁はぶんぶんと頭を振る。
「大体伊東さんとは…」
「危険を犯してまでも会う相手。図書隊よりも大切な存在。」
柴崎は 堂上を図書隊と言い換えた。
「堂上教官は少なくともそう理解したでしょうね。」
うそ。
「次 あの男が来た場合は、あたし達も 勿論堂上教官も黙って見ている訳にはいかないわ。」
どうするつもり?
柴崎の本気の心配。
郁は1人資料室に残された。のそのそと飛ばされたカバンを拾い上げるとギュッと抱えた。
中には2冊の本が入っていた。
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 | 2013年11月30日(土) 02:29 |  | コメント編集

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 | 2013年11月30日(土) 22:11 |  | コメント編集

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