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2013'12.02 (Mon)

「信じることを」5

おっと またギリギリの英香です。
今日は滅多に行かないデパートに御歳暮の発送を頼みに出掛けました。久々に行ったら、真っ直ぐ進まねばならないのに、車の流れのまま左折レーンに入り、目の前が目的地だったのにどんどん逸れていく…。どこまで行くのか自分でも不安になりました。
帰りはこれも久々にブック○フ。特に新しい本を開拓する訳でなく立ち読んで来ました。
ちょっと自分に御歳暮。1人ドーナツなんぞしてきました。
ら、夕方婆さん調子を崩してまた病院へ。様子見で入院するかと勧められましたが、帰りたいってんで帰って来ました。バタバタです。仕方なし。

更新です。実は1話分が長くなったので途中だったりします。あらら。取り敢えずここまでです。

↓こちらから どうぞ

【More】

「信じることを」5


堂上は1人酒場に来ていた。酒は飲みたいが誰かと一緒にとの選択はない。部屋にいれば小牧あたりが顔を出すだろう。
しかし 1人になりたかった。
小牧の正論を借りれば動かなければならない立場であるが。

カウンターで酒を傾ける。
直情径行な部下の思考回路は単純だ。どうせ本の楽しさを伝えたい、ただそれだけだったはずだ。組織だ体制だといった頭はなかったのだろう。
しかしそれでは済まない立場だというのが、何故分からない。
近々また現れると思われるあの男は、司令交代の今 図書隊を崩しにかかるためか、他に目的があるのか。
冷静にならなければならないのに、あの男の事を考えると 隣で笑っていた郁の顔が思い起こされる。愛しいと思うはずの郁の笑顔を苦痛に歪ませたのは自分だ。
泣かせたいわけではない。純粋に本を愛する心を否定するわけではない。
優しく 分け隔てないのは彼女のいいところだ。──時に面白くない程。

「結構 酒、強いんだな。」
堂上の隣に1人の男が座った。
「お、おまえ!」
ガタンと音をたてて 堂上は腰を浮かせた。あの男だ。
「一々騒ぐなよ。プライベートだ。」
伊東はマスターに堂上と同じ酒を頼んだ。
「…何を企んでる。」
最も会いたくなかった相手だ。どこから湧いて出たのか。
「何も企んじゃいないさ。頭の固い男だな。その分だと何も聞いてないな。こりゃ笠原さんに分が悪い。」
ふん と鼻で笑う伊東に、堂上は眉間の皺を増やす。
郁に近付き、敵地である図書館に堂々と赴く図太い神経。揉み合った時に感じたのはかなり鍛えられた体をしているということ。鋭い目付きは強い意志を持つ証拠。
グラスを傾けこくりと喉を鳴らしながら酒を流し込む男を見据え、堂上は警戒しながら座り直した。
「本ってのはお堅い文字の羅列でつまんないもんだと思ってた。」
いきなりの話題に 堂上は伊東の横顔を見やった。
「学校の国語の時間は睡眠時間。手に取る本はマンガ本。情報はテレビかインターネット。本とは無縁の生活だ。」
伊東はグラスを揺らして氷を馴染ませる。
「何の不自由もない。本を楽しいだなんて思ったことないね。それを彼女が絶対に面白いのがあるっていうからさ。」
クスクスと肩を揺らして伊東は笑った。
「…何故 笠原に近付いた。」
「はあ?興味を持ったからに決まってるだろ?。女だてらに特殊部隊で前線に出てるなんて驚いたよ。気持ちがいい位 胆も座っててさ、そりゃ口説きたくなるってもんだ。」
「な…」
「図書隊はプライベートで女口説くのに文句があるのか?」
開いた口が塞がらないとは こういう事か。だからって敵地に足を踏み入れるのか?。堂上は正面から伊東を凝視した。伊東はニヤリとした顔で酒を口に含む。
「俺は回りくどいのは嫌いだからね。押しが強いのが自慢さ。しかし彼女の鈍さは相当なもんだったよ、レファレンスってのに夢中なんだから。」
郁の鈍さは筋金入りだ。
「まあ、彼女のレファレンスなら 面白いと感じるんだから 不思議なものだ。」
「しかし笠原もお前も立場を危うくする。そこまでして…」
「そこまでしても欲しくなる相手だったから仕方が無い。ただあくまでもプライベートだ。組織なんかクソ喰らえだ。」
なんとも自由奔放な。なんて危うい。
「でもあんまり可愛いから 今日は仕事の話を振っちゃった。」
「なにぃ!」


自分の手で 本を守りたい。
そう言う郁は誇らしげだった。その目はレファレンス中のキラキラ輝かしいそれとは違う、自信と使命感に溢れている。自らの意志で前線に出て、仲間を信頼し、かつ支えられている者である事が伺える。
図書隊の 特殊部隊の一員として何がそんなに掻き立てるのか。
「そんなに本が好きになるもんなんだ。」
自分にない感性に感心する。
「本にはいろんな想いが込められる。その1冊がびっくりする程の奇跡を起こす事だって…。」
棚に収まった本の背表紙を指先で撫でる。愛しげに。悩ましげに。
「危険な場所は怖くないのか?」
「あたしには尊敬出来る上官がいる。何があってもついて行く。ただそれだけ。」
郁は一点を見詰めている。
「笠原さん、もし次の襲撃の日時が分ったら、危険は減るのかな。」
つい、と出たのは思わぬ言葉だった。なかなかなびかない彼女の気を引くためか。守る方法の1つになるか との甘い考え。
「何を言い始めるの?ここは図書館よ。良化隊員としての発言なの?仲間を裏切る気?」
声を落とし、一気に険しくなる郁の表情は、初めて対峙した時と同じ。ああ、この目に惹かれた。
「良化隊に未練はないと言ったら? 別にメディア法とやらに興味はないし、正直しがない公務員としてしか在籍してない。興味ない分容赦なく本を狩ってきた気もするけどね。」
ただ目の前の仕事をするだけ。奪う・破壊する行為は性に合っていた。
「そんないい加減な理由で狩ってるの?。」
郁は拳を固く握った。
「笠原さんは俺を利用しようと思わないのか? 出来る立場なんだけど。お互いに。」
話が話だけに体を寄せれば、ふわりと香る郁の香り。抱き寄せたくなる。
「俺を良化隊員と知っててレファレンスした笠原さんは、このまま俺を返していいのか? 俺はこのままここで仕事していっていいんだぜ。黙ってて欲しければ──」
欲が頭をもたげる。
「あたしは伊東という人物に本を読む楽しさを知って貰いたいだけ。」
郁は机の上に置かれた本を伊東に渡さず胸に抱えた。
「ここは自由に本を読む人が来るところ。そんな話をするところじゃない。」
構える郁から伊東はひらりと間を取った。
「俺は笠原という女にしか興味無いね。」
伊東はぐるりと辺りを見回した。階段上で見覚えある図書隊員がやり取りをしているのが視界に入った。自分の存在を知られている。泳がされてるのか。
「本を好きになってもらいたかったな。」
「関心は、持ったさ。」
伊東は足早に玄関へ向かった。


「あんたが指図してるのかと思ったよ。折角宣戦布告をしに来たのに。」
「何をだ。」
「いや、何にしろ 彼女に落ち度はないってこと。プライベートで男に言い寄られただけだ。その上妙な口車にも乗らなかった。誉められることはあっても咎められることはない。そうだろ?」
「何がプライベートだ。事実はこれから──」
「あんたは彼女を守らないのか。そんなんならどんな手段を取ってでも俺はモノにするぞ。奪うのは本職だ。俺はてっきり──まあ いい。図書隊、特殊部隊である笠原さんに惹かれたんだ。例え敵でもな。彼女には特殊部隊にいてもらわなきゃ 劇的な再会が出来なくなる。 」
「お前は良化隊であり続けるのか?」
「そうだな、しがない公務員も気に入ってる。もう本を紙くずだとは思わないが、やっぱり読むのは面倒だし 狩れと言われれば狩る。それだけのことだ。」
「そんな奴にアイツはやれん。」
「お、言うね。」
酒を飲み干し 満足気に息を吐く。
「人間 欲望には正直になった方がいい。じゃ。」
伊東はカウンターに金を置くと そのまま立ち去っていった。

プライベートなら何をしても許されるものではない。下手な形で公になるよりも、報告だけは上げねばならない。上官として それも彼女を守る為。
もう覚悟は出来ている。酒の力を借りずとも。上官だけでない自分に出来るのは ただ郁を信じる事。支える事。この先どう転ぼうが傍を離れるつもりはない。
半分残ったグラスを置いて 堂上は店を後にした。


23:59  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(3)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2013年12月03日(火) 09:37 |  | コメント編集

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 | 2013年12月03日(火) 15:26 |  | コメント編集

こんばんは

ほっとしましたよ

伊東さん骨のある人でしたね
郁も図書隊としての信念貫きましたね
良かった、あと堂上さんがどう出るかですね
楽しみです、待ってます
me | 2013年12月03日(火) 17:12 | URL | コメント編集

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