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2013'12.04 (Wed)

「信じることを」6

朝、遠くの目覚まし時計の音で目が覚めました。
3時45分。夜中じゃん。
一向に鳴り止まない目覚ましの犯人は長男の部屋から。
ジャンジャカ鳴る時計を枕元にスヤスヤ寝ている長男。音を止めて揺り起こしてみれば…「ん、いいや。」
どーせ課題が残ってるから朝起きてやるつもりじゃなかったんかい!
寝るんだったら目覚ましかけんなや!
ってか止めろ!
ぎゃあ 課題やれよ!
全部飲み込んで寝直─せなかった。目が覚めちゃったよ。

更新です。期待?外れだったらごめんなさい。そして終わりません。まだ目的地じゃないの。もう1・2回かな。

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【More】

「信じることを」6


そんなに遅い時間ではない。酒は程々に切り上げた。勢い付けるくらいは許して欲しい。
すっかり空気は冬仕様。冷たい風が吹き抜けていく。
堂上は 月に押されるようにして寮に戻り、玄関に入った。

「お、堂上 戻ったな。」
玄関ロビーで出迎えたのは 緒形副隊長。玄田同様寮暮らしだが若い隊員に威圧感を与えないようにか、用がないからか、いつもは滅多にロビーに居座ることはない。
これから部屋に赴くつもりだったから 丁度良かったといえばそれまでだが、いきなりの対面に少々言葉を失った。玄田が入院している今、特殊部隊の最高責任者は緒形だ。緒形への報告義務がある。
緒形の周りには小牧以下、手塚と柴崎も勢揃いだ。幾分柴崎の機嫌が悪い。
「…何ですか、これは。」
堂上はロビー入口で立ち往生するしかなかった。
「笠原のことだ。」
緒形の語り口は穏やかだがストレートだ。言いにくいこともハッキリ伝えてくる。
ああ、もう良化隊員との繋がりは知られているのか。
堂上は覚悟を決めた。

緒形はソファーに深く座っていた。
「残念ながら笠原には荷が重かったようだ。」
「………?」
堂上には緒形の言う文脈が分からなかった。説明を求めるように小牧に視線を移す。
「笠原さんには指示が出てたんだよ。『伊東という良化隊員を泳がせろ』って。」
「伊東?」
「笠原さんがレファレンスしてた良化隊員だよ。」
酒場で出くわしたあの男の名か。。
堂上は緒形の真摯な瞳を凝視した。
「ご存知だったんですか?」
「小牧からの報告でな。」
「小牧!?」
どういうことだ と堂上は小牧を睨んだ。
小牧は肩を竦めてから説明に入った。
「俺はあの男が来館した時に既に疑ってたんだよ。見覚えある気がしてさ。あんな堂々と入ってくるからまさかと思ったけど。お前フィルターかかってるからかあれだけ監視してたくせに気付かないし。」
クッと堂上の眉間に皺が寄る。
「課業後笠原さんにカマをかけたらビンゴ。俺はあの時カウンターに入ったからね。他の館員が手続きしたけど近くで顔を確認できた。」
小牧は緒形の横に立った。
「笠原さんは話すつもりなかったみたいだけどね、緒形副隊長に一緒に報告したんだよ。」
「何故俺を飛ばすんだ。先ずは上官である──」
「笠原さんは緒形副隊長に報告するなら先に堂上にって必死だったよ。でも悪いけど─堂上に報告するのを止めたのは俺だよ。」
小牧は小さなため息をついた。
「冷静に対処出来るか疑問だった。いや、冷静であろうとするだろうお前が危ういと思ったんだよ。良化隊員を呼び込んだ時点で黙ってられないんじゃないかってさ。」
実際そうだった。
「伊東が何の目的で来たのかが分からなかったからな。本のレファレンスだけだという笠原の話だけでは信憑性がなかった。こんな時期だしな。取り敢えず事実だけを俺に報告に来たんだ。」
小牧と緒形の説明に釈然と出来ないまま 堂上は黙っていた。常であれば小牧がこんな判断をするはずがない。その考えに至らせたのは自分の責任だ。口に出さなかっただけで冷静でいられていなかった自分の焦りを 小牧が感じ取っていたのだ。
「それがかえって笠原さんに混乱を与えたみたいで悪かったよ。副隊長からは伊東を泳がせて目的を見極めるよう言われたんだけど、笠原さんは純粋にレファレンスにのめり込んでくし、伊東は…まあその…。」
口説いてたみたいだし。
柴崎も憤然と声をあげた。
「あたしにまで黙っていたなんて許せません。悔しいわ、正体に気付かなかったなんて。」
「まあ、どう見ても笠原さん目当ての一般利用者だったから。」
敵地に足繁く通う良化隊員なんて聞いたことがない。
「どうやら笠原に情報を──あ、笠原。」
柴崎の視線の先、女子寮の入口に郁がやって来た。
郁は堂上の姿を見て躊躇した。堂上に迷惑をかけた。勝手な事をした。そして、心配させた と。
「笠原に男を手玉にしろ、とは酷だったな。玄田隊長の指示とはいえ、頑張ったが。」
ベッドの上からも無茶振りするのか、あのおっさんは!
自分の知らない間にこの場にいない隊長にまで話がいっていた事に脱力する。
不思議と怒りは湧かなかった。
手塚も緊張から放たれる。
「隊長の指示だったんですね。じゃあ笠原の査問は…」
「あるわけないじゃない。命令に従っただけなんだし。その上この娘、相手の脅迫にのらなかったんだから。」
図書隊として誇りを捨てなかった。
「あたしだったら脅迫に従ったふりをしてガッポリ情報流させるけど。」
良化隊員と繋がりを持ったことを取り引きの材料とされるところだった。行政派にしたら恰好の的だろう。
「ま、1人でよく頑張っ──」
「すみませんでした!あたし、心配ばっかり……」
柴崎のため息と同時に郁が頭を下げた。下げた先は皆当然察するところ。
「頭冷やして来ます!!」
郁は寮を飛び出した。
呆気にとられる堂上に皆の視線は集中する。
「飲み物かな。」
「1番近い自販機はここですね。」
ロビーに立ち並ぶ自販機を小牧と手塚は見やる。
堂上は無言で郁を追い掛けるように出て行った。


公園の手前で堂上は郁に追い付いた。そのまま腕をとり 公園に入っていった。
堂上は郁の腕から掌へと繋ぎ直し、公園奥に進む。やがて歩調はゆっくりとなり、立ち止まる。郁のすすり泣きが闇に吸い込まれる。
「あたし、堂上教官に真っ先に相談するって宣言しておきながら…すみませんでした。」
手を繋がれたまま 郁は堂上の後ろ姿に頭を下げる。
「いや、俺こそ気付いてやれなかった。スマン。」
堂上は手を離し、郁に向き合った。
郁は俯き、その頬には幾筋かの涙の跡が流れていた。
俺は泣かせてばかりだな。郁が関わると冷静でいられない自分を自覚する。
そんな堂上を 小牧も緒形も 勿論玄田も正確に把握済みなのだろう。
自分が計画から外された とか、伊東に宣戦布告された とか、どうでもよかった。
小牧によれば、郁は先ず俺にと言っていたらしいし、伊東の口説きにも応じず、脅迫にも自分の意志で突っ撥ねた。文句のつけようがない。
俺が守らなきゃとばかり思っていたのに、既に郁自身がしっかり対峙していたのだ。手塚慧の時もそうだ。昇任試験も自分で考えクリアした。とうに認めていたはずなのに。
見くびり過ぎだな。ただ、俺が勝手に守りたい、そう思いたかっただけなんだ。
寂しくはない。郁は助言をもらうべきところは臆せず求めるじゃないか。

堂上は郁の頬に指を滑らす。
「酷い顔だな。」
「なっ!?」
慌てて顔を隠そうとした郁に 堂上は笑いがこみ上げてきた。いや、郁にではない。自分にだ。
「はっ───」
1度声に出せば止められない。
堂上は背を丸め、腹を抱えて笑い出した。公園中のキンとした冷たい空気に響き渡るような、郁が今まで聞いたことのない堂上の笑い声。
「きょ、教官?」
あんなに心配した。苛立った。不安になった。腹が立った。覚悟した。そして心底ホッとした。
──全ては郁へ。
「酔ってます?」
わけわかりません、と涙を拭う郁の手を取り引き寄せる。
堂上は力いっぱい抱き締めた。
「ああ、それはもう しこたま飲んできたからな。」
「ちょっ」
「足がおぼつかないから支えてくれ。」
更に力をこめる。
あの とか、え とか暫くあたふたしていた郁だったが「仕方がないですね。」と大人しく抱かれる。
郁はゆるゆると腕を堂上の背中に回し キュッと上着を握ると、すりすりと堂上の肩に頬をすり寄せた。
「酔ってるんですよね。」
「ああ。」
月が2人の影を縫い止める。
頼りになる部下。支えられてるのは俺の方。
今、自分が欲しているのは女としての笠原郁。
伊東じゃないが 上官だとかはクソ喰らえ。
──俺は郁に酔っている。
堂上は自ら上戸に陥った。

22:27  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2013年12月04日(水) 23:35 |  | コメント編集

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 | 2013年12月05日(木) 00:42 |  | コメント編集

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 | 2013年12月05日(木) 09:20 |  | コメント編集

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 | 2013年12月05日(木) 14:25 |  | コメント編集

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