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2013'12.08 (Sun)

「信じることを」7

あらら、間が開きました。
なかなか時間が取れない中、レオタードなんぞに手をいれてみたり。Twitterの方に写真なんぞあげてみました。って見た目にあまり変化なく…。
1番は「革命」の文庫本が行方不明だったことですね(;^_^A。2冊もあるのに…。ありました。

原作なぞるお話の更新です。

ああ、ここだったのね。と思って下さい。ここに行き着くための捏造でした。へへ──長かった(/ω\)ハズカシーィ。

↓こちらから どうぞ

【More】

「信じることを」7


年末年始の多忙をこなし、漸く堂上が郁と取り付けたカミツレのお茶を飲む約束が実現したのは半年前。
身近な者から見れば確実に纏まる、そんな2人が一緒に出掛けるのだ。帰って来たら良い報告が聞けるに違いないと思ったその日に 事件が起こった。

敦賀原発事件である。

国際無差別テロと認定され、そのテキストとなった可能性のある著書を執筆した当麻蔵人は 良化特務機関から狙われる事になった。執筆制限処分や連行処分を強行しようとするメディア良化委員会との対決はいよいよ裁判へ。
図書隊は表現の自由を守るための長い戦いに入っていた。裁判が敗訴になれば亡命を──。
当麻の身辺警護の中心は堂上班だ。
堂上と郁は動くはずだった関係から進む事も出来ず、季節は夏へと移り変わっていた。

「堂上。」
ノックと同時に堂上の部屋に顔を出したのは小牧だ。
「いよいよ明日だね。」
「ああ。」
小牧は缶ビールを1本堂上の前にも置いて定位置に座る。明日は早い。深酒の予定はない。
堂上は簡単なつまみを広げてからビールのプルトップを開けた。
明日の最高裁判決で事実上表現の自由が侵害される結果が出たら、その足で当麻を連れて大使館へ急行する計画だ。
「最高裁、どう出るかな?」
小牧はアーモンドの袋を開けながら 堂上に投げかけた。
「俺たちの目的が全面勝訴である以上、これまでと同様 難しいだろうな。テロの全容解明なんて出来ないだから、白黒はつけられんだろう。現段階ではメディア良化法、図書館法──それぞれ憲法とのグレーゾーンがある限りな。」
堂上はビールの缶を凝視する。
「亡命はそれを前提とした対策だ。手筈は整えた。一気に成功させるしかない。」
窓に小枝がぶつかる音がした。夕方過ぎから風が出てきていた。
「台風か。明日は朝から雨足は強いらしいよ。」
時折風の唸る音がする。
「味方につけてみせるさ。」
そう言って勢いよく缶を傾ける堂上を小牧はニコニコ笑って見る。
「……なんだ?」
気持ち悪いな、と堂上が苦る。
「いや?頼りにしてるよ 班長。」
ニコニコからニヤニヤへ。こんな時の小牧はよからぬ事を言うに決まってる。
「む、明日は早いんだ。帰れ帰れ。」
何か言われる前に切り上げるに限る。堂上はザラザラと最後の柿の種を口に流し入れて 空の袋をゴミ箱に放った。
「やだな、今の堂上には力強さを感じるって思っただけだよ。」
ここぞという時の指揮力は的確で、抜群の統率力を発揮する堂上だ。弄られることも多いが、特殊部隊の若き指揮官として信頼されている。
「この間さ、久しぶりに毬江ちゃんに会ってきたんだよ。」
なかなか会う時間が取れないのに、毬江は文句1つ言わずに待ってくれている。自分の出来ることで協力してくれる。無事を祈ってくれている。桜の季節に贈った指環を胸にあてて。
「こんな時だからこそ 彼女の笑顔が力をくれるって実感するよ。」
「──そうだな…。」
するりと零した堂上の言葉に、小牧は1度目を見張った後 小さな笑みをつくる。
今 誰を思い浮かべたか なんて、野暮なことは訊かない。
しかしちょっとだけ遊びたくなるのはお約束。
「そういえば あの伊東って良化隊員、あれっきり来なくなったね。」
「…自分の正体が他に知れたと分かったら いくらなんでも警戒するんじゃないか?」
伊東は自分が泳がされてると言っていた。
「なかなかの御執心に見えたけどね、堂上が焦るくらい。」
「なっ、バカ言うな。」
やっぱりきたか と顔を顰める。
「いやあ、気にしまくり? まあ 少しは焦ったほうがいいとは思ったけど、良化隊員の顔を判別出来ないなんて、笠原さんを笑えないよ。」
「悪かったよ。もう同じ轍は踏まん。──でも、アリガトな。」
郁の隣に自分でない男が立つ事に苛立ちを覚え、自分の青さを露呈した。小牧の指摘は正しかった。おかげで自分を取り戻した。
いつになく素直な堂上を小牧はまじまじと見た。
「あんまり殊勝なこと言うなよ。悪いことの起こる前触れみたいだ。」
「何を!下手に出れば──」
ケタケタ笑う小牧を部屋から蹴り出した。


天気予報通り この夏1番の台風が関東に上陸した。激しい雨を伴う雨台風。
そんな中 最高裁判決が出た。
メディア良化法を批判する内容だとはいえ、当麻に執筆制限を課された 事実上の敗訴。

堂上達は当麻の亡命への計画を実行すべく走った。
オランダ大使館は既に良化特務機関に張られ アメリカ大使館には直前で妨害が入り間に合わなかった。
車を捨てて緒形・小牧・手塚組が囮となり、当麻を堂上と郁で警護しながら基地へ戻らねばならない。
しかし今日を逃せば 亡命への道は確実に絶たれる──当麻の思い切れない様子に 堂上に迷いが生じた。
イギリス大使館。
郁は堂上の手を握って提案した。
「行ってみるってどうですか? ちょっとだけ覗いて…無理そうならまた逃げる とか──」
堂上は郁の目を見る。その目に光を見い出し、雨に濡れて冷たい筈の手から 温もりと力が注ぎ込まれるようだ。
堂上から迷いが払拭される。郁の手を強く握り返した。
「よし行こう。せっかく精鋭が囮になっているんだ。無策で逃げ帰るのもつまらないしな。」

半蔵門駅を降りると 更に雨風の勢いが増していた。
少し歩けば目の前がイギリス大使館。但し白く高い壁に阻まれている。正面は良化隊が警戒しているかもしれない。
堂上の思考が隊長張りの無理無茶無謀な域まで廻る。多分昔の堂上が 郁に引き摺られて顔を出している。
そんな堂上を見るのも楽しい。今は不謹慎か。
郁は自分が正門の様子を見てくる事を提案し、なるべく一般女性を装って石畳を歩く。叩きつけるような雨と体を持っていかれそうな風で、華奢なビニール傘が翻弄されるように煽られる。
こんな時って一般女性はどんな風にするんだろう。女子力のなさを頭に掠めつつ、意を決して正門前を通りかかった。
正門周辺には黒いレインコートの良化隊員。
不自然のないように様子を確認して通過した時だった。風の向きが変わり一瞬で傘の骨が折れた。
「キャア! やだぁ、もうっ!」
敢えて黄色い悲鳴を上げて 急いで立ち去る。そして堂上達に合流し報告する。
「駄目です。良化特務機関が張ってました。」
「先生、駅向こうのアイルランド大使館とポルトガル大使館の方に向かいましょう。規模が小さい分、可能性があります。行ってみますか?」
「そうですね。」
堂上の提案に当麻が頷き 歩き出そうとした時だった。

「おい、そこの!」
良化隊員の居丈高な声が追いかけてきた。
ぎくりとする。心臓がバクバク跳ねる。
堂上はとっさに当麻を隠すように立ち止まり、出来るだけ平常心を取り繕って郁が振り向いた。
「何ですか?」
追いかけてきたレインコートの良化隊員は 自分には必要のないビニール傘を郁に差し出してきた。
「さっき傘を壊しただろ? これでよければ……」
濡れ鼠の郁の顔を見て驚いた。
目を見張って動きの止まった良化隊員を 改めて見た郁も息を飲む。
「か、笠原さん……!」
郁の後ろの堂上と当麻の姿を見咎める。
「い、伊東さん?」
激しい雨が痛いほど容赦なく4人を叩きつけていた。

11:00  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2013年12月08日(日) 12:39 |  | コメント編集

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