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2013'12.10 (Tue)

「信じることを」8(完)

久しぶりの雨でした。
しかしよりによって今日。
朝から長男は大学見学に東京まで出掛けていきました。
逆立ちしたって入れない大学へ 見学くらいは気持ちよく行かせたかったなあ。しかし先生もよくあのコースに長男を入れたもんだ。単なる遠足ですな。

午後からは晴れましたが凄い風です。荒れた1日でした。

更新です。
駆け足で 時間が行ったり戻ったり。もっと分かり易い書き方がないものか、とは思いますが。読みにくかったらスミマセンm(__)m。
完結になります。

↓こちらから どうぞ

【More】

「信じることを 」8(完)


伊東は懐から取り出した無線機を握り締めた。
──日本中を揺るがしているこの事件。君は最前線に立っているのか。心底信じあって2人で任務をこなしているのか。
お互いを支え 共に本を守る信念を貫く為に。

─────────


夏ならばまだ明るい時間も 既に日が落ちている12月。
郁はとぼとぼとコンビニへ。1人で行くな とは言われていても、すぐそこだからと つい出歩く。
昨日堂上に 良化隊員である伊東と館内で接触していたのが発覚した。柴崎や手塚にも。
黙っているつもりだったのに 自分1人で対処できるわけでもなく、指摘された小牧に促されて緒形に報告した。玄田に指示された事であっても、堂上に相談しなかった事実は心苦しかった。
あんなに心配かけたのに、結果的には何の情報も得られなかった。
こんな頼りない部下じゃ 教官の足でまといになっちゃう。
公園の横に差し掛かって思い出すのは あの日の酔った教官だ。本気で叱られた後、珍しい全開の笑い声に 飲んでちょっぴり高めの体温。
あれは 抱き締められたのかな。
県展で初めて人を撃った郁を 「よくやった」と強く抱き締めてくれた。あの時と同じ力・同じ鼓動・同じ匂い。
そこに思い至って ボッと顔を赤らめた。

「そんな顔して歩いてると また襲われちゃうよ。」
ぎくりとして声がした方を見ると そこには伊東が立っていた。
「ちょ、何で平気な顔して来られるのよ!」
郁はキョロキョロと辺りを見る。
「笠原さん口説くには ここまで来なくちゃ会えないからね。」
「く、口説くって…」
「ストレートに言わなきゃ分かんないだろ。本じゃなくて映画観に行こうよ。」
「行かないって。」
「良化隊員じゃまずいんなら…」
「だから そういう問題じゃなくて!」
郁はわたわたと慌てる。
「ほら、映画とかは好きな人と行きたいし。」
「可愛いこと言うなぁ。試しに付き合ってみるとかは。」
伊東は構わず口説きにかかる。
「他の人じゃヤダし。」
「誰ならいいの?」
「え あの…」
郁は頬を染めて俯く。
「あの頭の固そうな上官とか? 」
「か、固いわけじゃない! 本気で心配して 本気で叱って 本気で…優しい人よ。」
手にしたカバンをギュッと抱える。
「あたしが迂闊だから…。そのくらい怒ってくれるのが丁度いいの。それが─あったかいの。あたしはあの人だから信じて追いかけられる。」
目を瞑って満足そうな顔をする郁を 伊東は眩しそうに見た。
「宣戦布告 してきたんだけどな。」
ポツリと呟くと 郁が怪訝な顔で小首を傾げた。
「彼が好きなんだね。」
「──うん、──大好き。」
この気持ちは止められないんだもの。王子様とか上官とか 図書隊とか良化隊とか、どれも関係なくあの人が好き。
伊東がここまで出向いてくるのも ちょっぴり分かるかも。
「そっか。」
伊東はため息をついたが、笑顔は崩さない。
「あ、本。あたし借りたんだ。映画は一緒には行けないけど 読んでみる?」
ゴソゴソとカバンを探り出した郁に伊東は爆笑した。
「この後に及んでレファレンスかい? 笠原さんには負けるよ。」
月は又も笑い声を吸い取った。

──────────


「伊東、どうした。」
別の良化隊員が不審に思い向かってきた。そして郁達3人を見、特に当麻を見咎めた。
マズイ!
ごめん。傘を壊したあたしを心配してくれたのに。悪い人じゃないのは分かってる。
でも 伊東さん、やっぱりあたしとあんたは敵同士なんだ!
郁は壊した傘を思いっ切り伊東に投げつけた。
後から来た良化隊員が無線機を取り出した。
堂上は当麻の手を引いて駆け出し、郁もそれを追い掛ける。細い裏道をいくつか飛び込む。
「なんとか半蔵門駅に入って撒きましょう!出口を替えれば大使館に近くなる!」
良化隊の追手から逃れるように細々と道を折れ フェイクもかける。息の上がった当麻を支えて走るが、どこから回り込もうとしても良化隊が立ち塞がり、次第に反対方向の九段通りに追い込まれていた。
「車!車を停められるか!」
「やってみます!」
郁がタクシーを停めるために車道に飛び出そうとした時だった。

パァン と何か弾ける音に郁は振り向いた。
堂上が後ろに捻れるように倒れていく。

「堂上教官!」
郁は咄嗟に駆け寄った。



伊東の先で 仲間の良化隊員が郁達に銃を向けるのが見えた。
「!やめろ───」
パァン と雨音を貫く音を聞いた。
捻れるように倒れる影が雨のカーテンの向こうに見えた。

撃ったのか。この狭い歩道で。一般人も通る場所で。この強風の中、どう逸れるかも分からないのに!。伊東の拳がフルフルと震える。

倒れた者に駆け寄る影。
「堂上教官!」
悲痛な叫びが聞こえた。
すぐさま威嚇の銃弾が放たれる。同時に伊東は撃った良化隊員に殴りかかった。
「貴様!何故撃った!こんな街中で狙うなんて─」
無我夢中で拳を振るって いつの間にか他の良化隊員に羽交い締めされていた。
「何故撃ったーーー!!」
「やめろ 伊東!」
雨の中 数人の良化隊員に取り押さえられる。池のようになった地面に這いつくばった。
遠くで大きな事故の音がした。
「なんだ!」
上に乗っていた者達が急行して行った。
その場に残された伊東は暫くうつ伏せになっていてから、のそのそと体を起こした。
黒いレインコートは用をなさない。
伊東は 他の良化隊員とは反対方向にふらふらと歩き出した。


───────────


今年の主な出来事の総集編がテレビや新聞を賑わす。
1年はあっという間に過ぎていく。
先日流行語大賞が発表された。
重大ニュースの筆頭に敦賀原発事件。付随して当麻の事件も報じられる。しかし終息したのは夏過ぎ辺り。また新たな事件もあったりで 既に過去の事件として扱われつつあった。


「おーい 伊東。」
飲み屋の前で手を振るのは久しぶりに会う友人だ。
「よ、元気か。」
学生時代の仲間と会うのは何年振りだろう。5人ほど集まり店の中へ。
乾杯の後 一気に飲み干す。
「伊東は再就職先、決まったんだって?」
隣に座った奴がビールを注ぎながら声をかけてきた。
「まあ、何とかな。」
「このご時世、俺らの年で再就職は難しいもんな。よく見つかったな。おめでとう。」
カチンとグラスを合わせた。
「お、珍しく伊東がいる。」
遅れてきた男が座敷に入ってきた時、トンと伊東のカバンを足に引っ掛けた。
「悪い。──あれ?伊東って本読む奴だっけ?」
伊東のカバンからこぼれ出たのは1冊の本。
「あ、いや。んー、お守りみたいなもんかな。」
「お守り? あ、俺この本知ってる。今年やった正月映画の原作だろ?見に行ったぞ。アクションとかCGとか凄かった。」
ドンパチ賑やかな映画だったらしい。
「せっかく買ったけど 半分読んだだけだな。」
伊東は表紙を撫でてカバンにしまう。
「読まないなら貸せよ。買うと高いんだろ?勿体無いな。」
出された手を伊東はしっし と払う。
「ダメだ。明日読む気になるかもしれないだろ。いつ読むか分からないから持ち歩いてるんだ。」
なんだそれ と、笑われる。
良化特務機関を辞め、小さな民間警備会社へ。伊東は新しい生活を始めた。
こうして気楽な仲間と飲むのも復活させた。
「よし、二次会行こうぜ。」
メンバー変わらず店を変える。〆はラーメンか。
忘年会の月はクリスマスの月でもある。
街は煌びやかなイルミネーションに彩られていた。
「仕事見付けたのはいいけど、早いとこ彼女も見付けたいんじゃないか?」
駅前の噴水周りはカップルが数組。伊東の目が止まっているのを友人がからかった。
「全くだ。」
肩を竦めてニヤリと笑う。
「お互いな。」
今夜は小説の続きを読むことにしよう。伊東は踵を返す。
賑やかな集団が夜の街に消えて行った。


「綺麗ですね。教官。」
噴水に映るイルミネーションが水飛沫に揺れて輝くのをのぞき込む。
「図書隊にクリスマスなんて楽しむ余裕はないからな。珍しく時間が取れてもこのくらいしかしてやれん。悪いな。」
「いいえ。教官とここに来れただけでも嬉しいです。」
堂上はコートのポケットに引き込んだ郁の手をギュッと握る。とびきり甘い笑顔を向けて。
知ってますか?この噴水に一緒に映ったカップルは幸せになるんですって。
2人のシルエットが水面に揺れて輝いていた。







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 | 2013年12月10日(火) 19:29 |  | コメント編集

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 | 2013年12月11日(水) 07:09 |  | コメント編集

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