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2014'01.25 (Sat)

「同じ気持ちで」(生誕祭回収作品)

この辺は今週末は暖かいみたいです。
半壊?しているパソコンにCDドライブってのをつけたら曲が入るようになりました。また娘の曲を編集しています。このまま図書戦でいこうよ、ですが 毎日毎日やってると飽きてきたみたいで。只今曲探しです。うーむ。

さて、週末はなかなか自分の時間もないので。生誕祭の回収作品で更新です。
これ、「信じることを」の最終回と並行して書いていたので 何となくリンクした終わり方になりましたね。ご愛嬌(^^ゞ。
生誕祭ではたくさんの素敵な作品が楽しめました。参加することに意義がある、ですが 自分の拙さも痛感したり。でも、書く人読む人 みんな堂郁が好きなんだよね~と思うとニヘニヘしちゃいます。やっぱり書かせてもらえて良かったです(#^_^#)。

↓こちらから どうぞ

【More】

「同じ気持ちで」恋人期


たとえ恋人がいようが クリスマスなどという個人的なイベントは存在しないのが図書隊関係者だ。
年末年始の休館の前に児童向けクリスマスイベントを控えた上、警備強化週間が 慌ただしさに拍車をかける。
各部署仕事を回しながらこのシーズンを乗り切るのだ。
特殊部隊も最低限の休暇を取りつつローテーションを組んでいる。

「せっかくのお休みにお手伝いに来てくれるなんて悪いわねぇ。」
稲嶺顧問の自宅の家政婦であるフクさんが、脚立の上の郁に新しい電球を渡す。
郁は手際よく廊下の古い電球を取り外して付け替えた。
「いえ、あたし午前中はこれといって用はないし、当麻先生と逃走したまま こちらにはご無沙汰しちゃいましたので。」
フクさんには お世話になりましたと 挨拶もできなかった。
ごく平凡で善良な婦人が、良化隊員に脅されて盗聴器を仕掛けさせられたのだ。その時の恐怖は如何ばかりだったろう。
「うふ、でも有り難いわあ。高いところはどうしてもねぇ。助かるわ。」
ああ、教官と一緒じゃなくて良かった。軽く肩を竦めた。

フクさんにお茶を勧められ 居間に通されると、車椅子に座った稲嶺とにこやかに談笑する。
「この時期の図書隊員の公休が貴重なのは存じてますよ。今日は堂上君は一緒じゃないんですか?」
開口1番に「おめでとう」なんて言われた時は面食らった。どうやら当麻事件の顛末報告の際、玄田が堂上と郁の交際の事も面白おかしく話したらしい。稲嶺も 郁入隊の経緯は当然承知しており、その笑撃的な推移を楽しんていた1人だ。
郁が真っ赤になって立ち竦んだのは言うまでもない。
「堂上教官はどうしても片付かなかった書類があるとかで 少し事務室に寄ることになったんです。」
「では午後からデートですね。」
えへへ と頬を染めて、郁はお茶に口をつける。
「笠原さんには拉致事件や当麻先生の警護でもお世話になったり、ご縁があるようで嬉しいですよ。 」
「いえ!お役に立てたなら あたしも光栄です。」
「堂上君にね、拉致事件の後にちゃんと報告したんですよ。」
「はい?」
郁は首を傾げた。
「『笠原一士は立派に仕事しましたよ』ってね。」
拉致された車の中で わざと笑いを含めて取り交わした言葉を、稲嶺は約束ととってくれたのだ。
「あの時 こちらの車椅子であったなら、貴女に勇姿を見せられたかもしれませんね。」
稲嶺は座っている特注の車椅子の手すりをポンと叩く。
「仕込み車椅子ですね!後から聞いてびっくりしました。だから当麻先生の身代わりと 侵入者を引き付けるのがお1人でも可能だったんですね。」
勿論 修羅場をくぐり抜けてきた稲嶺だからこそなのだが。
「カッコイイです。」と 物騒な話題に全く引かない郁も強者である。
「警護ではありましたが、共に過ごせた時間は楽しかったですよ。貴女と堂上君との絆もじっくり観察出来ました。当麻先生からお2人がデートされてたらしいともお聞きしましたし。」
な、なんて事を話題にされてたんだと縮こまった。
「いえ、まだ その時は──」
「笠原さんの面接の時から皆で見守って来ましたからね。こうして良い報告を聞かせて貰えてうれしいですよ。」
「面接の時からですか!?」
「私の顔も覚えて頂けませんでしたからね、堂上君の顔も覚えていなかったのも頷けます。」
司令をおじさん呼ばわりした新人だった。何も言い訳出来ない。
「拉致事件の後、彼は呟いていましたよ。未熟だった自分を追いかけて来た貴女を危険なめに合わせたと。初めの頃は混乱もしていたんでしょう、彼は無駄に責任感の強い質ですしね。だからこそ自分で育てた部下が立派に仕事した事が誇らしげでしたよ。」
稲嶺と堂上でそんなやり取りをしたのであろうか。初耳だった。
「私は検閲に対抗して武装化組織である図書隊を設立しました。貴女のような人に銃を持たせるような──。」
「あたし、図書隊の存在があって良かったです。好きな本を好きに読める、そんな当たり前のことが出来ない世界で本を守ってくれる。少なくともあたしには正義の味方でした。」
郁の面接が思い出される。
「今はあたしも図書隊員です。教官と本を守れるのが嬉しいです。きっかけは…」
稲嶺も郁の事情は知っているので 今更照れる事ではないが。
「追いかけたい背中があったからなんですけど。やっぱり本が好きだし、きっとどんなきっかけだったにしろ、あたしはこの図書隊を目指したと思います。」
「そうですか…亡くした妻がどう思うかは分かりませんが、貴女にそう言って貰えると 私も心が軽くなります。」
辞して1年、妻が生きていたら──そう問いかける時もある。
「稲嶺顧問が作った図書隊なら、どんなきっかけで入っても…」
「堂上君を見付けて追いかけたんでしょうね。」
郁の言葉を稲嶺が続けた。つと 視線が動く。
またしても一気に茹だった郁であったが、穏やかな稲嶺の笑顔につられて肩の力を抜く。
「自宅にいる時くらい、ただのおじさんですよ。」
まさかまさかとさすがに郁は首を振ったが、溢れるのは堂上への想い。
「尊敬出来る上官のもとで大切な本を守る。同じ志しを持って此処にいられるのが幸せで、それが大好きな人となら 尚のこと力が湧きます。」
「本当に素敵な人と巡り会いましたね。」
稲嶺は郁の後ろに投げ掛けた。
「稲嶺顧問、言わせましたね。」
聞きなれた声に 郁は振り返った。
部屋の入り口に立っているのは、ひと仕事してきた堂上だ。
「あらあら、盛大に惚気けてもらいましたね。」
ころころと笑うフクさんは 新しいお茶を淹れなおしたトレイを手にしている。
「おまえは何を口走ってるんだ。」
そういう堂上の耳はほんのり赤い。
堂上は稲嶺に挨拶をすると 勧められて郁の隣に座る。
「お似合いのお2人を見てると若返る気がしますわね。和市さんと奥さんもそれは仲が宜しかったんですよ。」
「そうですね。惚気け合戦なら負けませんよ。」
ハハハと笑う稲嶺に堂上も和む。
暫し雑談をして堂上と郁は稲嶺邸を後にした。


ヒト1人分空けて歩いていた郁の手を取りに行く。隣に引き寄せると ほんのり赤らめた郁の顔がほころんだ。
「へへ。稲嶺顧問に おめでとうって言ってもらっちゃった。おめでとう、なら教官にですよね。もうすぐお誕生日ですし。」
「あー いらんいらん。30男には必要ない祝辞だ。」
大事なイベントですよ、と膨れる郁の頭をくしゃくしゃっと混ぜる。
『おめでとう』だなんて、堂上としては自分の誕生日なんかより 先走りそうな思考をさせられる言葉だが、今は敢えて言うまい。まだまだ恋愛初心者である恋人の この初々しい反応を見るのもまた楽し。
ただ。
たまには触れたい、と思うのは 当然の事として許して欲しい。
郁の柔らかな唇を知ってからは 欲してやまない余裕のない自分に呆れるほどだ。何せ数年分のツケがある。
入院中は個室であることから 割と自由に郁を引き寄せられたが、寮暮らしとなるとそうもいかない。しかも退院を待っていたかのように仕事もどんどん回って来る。性格もあるが 鈍った身体も早く戻したくて、時間があれば体力作りにも時間を割く。
結果どうしても触れる機会が減っているのだ。
それに 奥手の郁に がっついた男だと怯えさせる訳にもいかず、せめて余裕ある年上の男の振りをするのが精一杯。
だが 久しぶりの公休だ。半日 潰れはしたが、残りの時間はデートらしく過ごしたい。

ランチの後はぶらぶら歩いて映画館へ。日が短い季節なので、終わって外に出れば すっかり暗くなっていた。
「郁……」
「あ、サンタの格好してる!」
街に入れば賑やかだ。店先には小振りなツリーが飾られている。子供達に配る風船を持ったサンタが闊歩していた。
「指をさすな、指を。」
くい、と腕を取って公園に向かう。2人になる空間が欲しかった。
規模は小さいが イルミネーションが点灯している公園だ。
「郁。」
「そういえば教官!稲嶺顧問から頂いちゃいました。」
肩を引き寄せようとした堂上に、にこやかに郁が突きつけたのは──
「…当麻先生の本?」
しかも『原発危機』だ。
「ここ見て下さい。」
表紙を捲ると 当麻蔵人のサイン。
「サイン本か。」
「堂上教官に、ですって。」
当麻のファンである事は知られている堂上だ。これは素直に嬉しい。
「持ってますか?」
「ああ 当然持ってはいるが、これは保存版だな。」
謀略物でありながら、たしかこの話は恋愛色のわりと濃いシリーズだ。
「おまえも読んでたんだよな。」
ちらりと郁の顔を覗く。
「キャラ読みですけどね。たしか工作員の主人公が仲間に裏切られて恋人と逃避行──でしたよね。恋人を守る為に姿を消すところは涙が出ました。」
んと、とくるりと目を回して思い出す仕草を見せる。
「感動の再会はどんなでしたっけ?」
怪我を負った主人公を恋人であるヒロインが見付け出し──
「敵味方入り交じった戦闘の最中、こうするんだ。」
堂上は郁のマフラーをクイと引き、唇を重ねた。
「!へ?」
首から上を真っ赤に染めた郁を しれっとした堂上がその場から連れ出す。
どこからか口笛が聞こえた気がした。
「ちょっ、こんなところで!」
日が落ちているとはいえ、少なくはない人通りのある公園のイルミネーションの前だ。
あたふたと慌てる郁の手を 自分のコートのポケットに突っ込んでポツリと呟く。
「あほう。話を逸らしてばかりいるからだ。」

キスがしたい。
がっついているのは自分ばかりか。我慢の出来ない30男だ。
ちらりと郁の横顔を見れば、恥ずかしがりながらも嬉しそうにもう一方の手で口付けの感触を確かめるように唇を撫でている。
同じ気持ちであればいい。
堂上は見えない向きで破顔した。

肩を寄せ合い 賑やかな街に溶け込む2人に、サンタクロースが赤い風船を差し出した。
ジングルベルの音楽に揺れる。


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