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2013'12.18 (Wed)

「伝えたいのは」

こんばんは。
うわ、久しぶりの更新準備をしています。
バタバタとしておりましたが、復帰です。でも年末年始はまた普通に時間を取られるので、のんびりいきますね。
コメントお礼は次回に。ネタも有難うございます(//∇//)。非常に助かります。暫く乗り切れそうです。

さて、お話は1週間ぶりですか。
細切れで書いていたので何だかなあって感じの更新です。上官・部下で 県展後。クリスマス後かな。

↓こちらから どうぞ

【More】

「伝えたいのは」


12月の図書館各種イベントも無事催され、クリスマスの飾り付けも外された。後は年末の大掃除と正月準備。この時期 特殊部隊も訓練は少なく、館内警備や大掃除といった内勤が主となる。
もっとも良化特務機関が遠慮するとは限らないので、市街哨戒は欠かせないが。
堂上班は その市街哨戒にあたっていた。

郁は手塚とバディを組んで車輌に乗り込む。運転手は手塚だ。
「良化隊も正月準備が必要だろうに。このまま大人しくしててもらいたいわね。」
「統計的に動きは少なめだけどな。でも油断ならないから、気を引き締めておけよ。」
「分かってるって。──あれ?」
大型書店の前で停まっているのは 同じく図書隊の車輌。堂上と小牧の車だ。
何かあったのだろうか。しかし無線連絡はなかった。
手塚は車を後着けし、2人書店に入る。検閲に出食わしたのか。郁は緊張感を持って店内を見回した。
「ああ、手塚に笠原さん。」
小牧が声をかけてきた。
「何かあったんですか?」
訊けば車輌パトロール中に 書店から出て道路に飛び出してきた小学生を説教しているのだという。
「店先でお年寄りも転がしちゃったしね。人前じゃなんだからバックヤード借りてるってわけ。」
小牧はクスクス笑う。
「やること近所のカミナリ親父だよね。隊長みたい。」
郁は警備実習時に勝手な見計らいをしてバックヤードで堂上に説教喰らった記憶が甦って肩を竦めた。
戸を開けて出て来たのは神妙な顔をした男の子2人。一緒に出て来た堂上に向き直るとペコリと頭を下げた。
「「ごめんなさい…」」
ほら、と促されて椅子に座っていた老婦人にも謝った。
堂上は2人の頭をそれぞれぐしゃぐしゃっと混ぜる。
「偉いぞ。今度から気をつけるんだよ。」
小牧の優しい笑顔に 男の子達はホッと表情を緩ませた。そんな姿を見る堂上も一転穏やかな顔だが、多分子供達には映らない。
バイバイ と店を出ていく男の子達を見送った。
「見事なアメとムチね。」
「なかなか本気で叱る大人っていないからな。結構効くんじゃないか?」
郁と手塚がポソリと呟く。
堂上は悪いことは悪いと ハッキリ言うタイプだ。曖昧にしないのは性格なのだろう。
そんな上官に 初めこそ反感しか持たなかった郁だったが、堂上の人となりを知れば それがどんな意味を持って叱っているのかが分かるようになった。
──分かり辛いんだけどね。
今はもう、その瞳の奥に宿る優しい光を知っている。頭にのる手の温もりも。それが郁にはかけがえのないものになっている。


事務室には書類処理の内勤隊員が普段より多くいた。そろそろ一段落するところで 進藤の周りで雑談に入っていた。
「只今戻りました。」
郁と手塚がネームプレートを移動させる。
「堂上教官と小牧教官も もう帰って来るよね。コーヒー淹れてくる。」
郁は給湯室に入っていった。
手塚はブラック。小牧にはミルクだけ入れる。堂上は普段濃い目のブラックだが。
「疲れてるだろうから1つだけ入れておこうか。」
角砂糖を1つ沈めておいた。自分のは砂糖とミルクを。
トレイに乗せて 各々の机に置くと、進藤の声が聞こえてきた。

「まったく アイツはチビのくせに口煩いったらない。あんな頑なでは先が思いやられるな。」
「まあ そう言わないで。でも確かに時々そう思いたくなるよね。」
斎藤がクスクス笑う。
「大体 俺の頼んだものに文句付けるなんてけしからん。黙って受け取ればいいんだ。むしろ有り難く。」
「そりゃ無茶ってもんでしょう。進藤一正のチョイスも酷いからな。」
ワハハと皆が笑う。
堂上の話題かと郁はくっと口を尖らせた。
進藤は何かと面倒な書類を堂上に回す。このところ自分の仕事だけでも大変そうなのに、進藤だけでなく隊長の分までいつの間にか机に積み上げられているのだ。コーヒーの横には 朝より高くなった書類の束。
今日の残業は確定だ。
「この前なんか俺に指図するんだぜ。生意気だってんだ。」
「あ、その時俺も見かけたけど、言葉遣いは注意した方がいいかな。」
「可愛くないんだよ、物言いが。」
堂上の指揮は適切だと思う。指示は必要があってするのであって、進藤に伝達する時は隊員として妥当な言葉を選んでいるはずだ。
「しかしあの皺は酷かったよな。いいんですか?あんなの進藤一正に失礼じゃないかと思ったんですが。」
土井が言葉をかける。
「ま、いいさ。俺は心が広いからな。アイツが気にし過ぎなんだよ。仕方が無かったのに一々目くじら立ててさ。すぐ疑うんだから。」
眉間の皺は進藤が無茶いうからであって、好き好んで刻んでいるわけではない。進藤が自分の仕事をすればいいだけの話なのに。
郁は進藤の身勝手さに腹が立った。
「俺の格好を見て 違うって蹴られたんだぜ。結構キメてたのにさあ。」
「そりゃいかんな。」
「1度ガツンと言わなきゃわからんだろうな。」
「甘やかしてばかりでもね~。」
酷い!堂上はそんなことしない。話を盛りすぎだ。いくらなんでも謂われのない中傷なんて!
「俺は決めたね。再教育だ。あんなんじゃロクな人間に育たん。」

郁はバン と大きな音を立てて自分のコーヒーを置いた。周りに溢れたコーヒーが飛び散る。
一同シンとしてワナワナと震える郁に視線を移した。
「そんな言い方ないと思います!」
「堂上教官は ああ見えて凄く優しい人なんです!」
「必要だから言うんであって!」
「大体何でもかんでも教官に押し付け過ぎです!」
「教官の指示は適切で立派です!」
「進藤一正が無理言って眉間の皺を作らせなければ、十分カッコイイ教官なんです!」
郁は一気に捲し立てて 肩で息をしている。
「──ああ、うん。堂上はよくやってると思うよ。」
進藤がキョトンとしながら頷いた。
「そりゃ言い方はキツい時もあるけど 誠実で真面目なだからで。」
「まあ、真面目だよな。」
斎藤も頷く。
「だから迂闊な部下も見捨てないで指導して…情が深いんです。」
「面倒見いいからな。」
土井も頷く。
「じゃあ何でそんな風に言うんですか!ホントは優しくて温かい、あたし、そんな堂上教官を──」
「「を?」」
「あれ?」
郁はハタと我に返った。
「何の話ですか?」
「堂上の話か?んで、そんな堂上を何なんだ?」
進藤が前のめりで郁に詰め寄る。
「…あ、ん と…そ 尊敬、して、ますよ?。」
「「おしい!」」
その場の隊員が皆 口を揃えて悔しがった。郁はわたわたと慌てる。危うくあらぬことを口走りそうになった。
斎藤は郁の肩を叩いて言った。
「俺達は進藤一正の娘さんの話をしてたんだ。」
へ?と郁が顔を上げる。
「俺ん家の5歳の娘にサンタからプレゼントしたんだが文句タラタラでさ。」
「目つきの悪い熊のぬいぐるみにするからですよ。」
「包装頼むの忘れたって言うから 使い古しのシワくちゃの包装紙を譲ったんだよ。」
土井が説明する。
「嫁さんは文句言うわ 娘はサンタはこんな包みじゃ持って来ないって疑うわ。せっかくサンタの格好したのによぅ。」
「ミニスカサンタじゃ変態でしょ。」
業務部にそれしか残っていなかった。
「進藤一正は娘溺愛だからね。でも今 ちょっと反抗期なんだって。」
保育園で悪い言葉を覚えては使う。進藤の悩み相談だったのだ。
「上官としては文句無しだとよ。」
巨漢の土井が身体を避けると、後ろには 上戸に入っている小牧と、耳の赤い堂上。
「ど、堂上、教官…!?」
聞かれた?。郁は一気に沸騰した。
「き──」
きゃーーーと事務室を飛び出した。

ニヤニヤ顔の隊員達の視線は堂上へ。
「お約束だね。いい加減 男として、行ってきたら?」
小牧は堂上が持っていたバインダーを引き取った。
「ム…」
この場にいても冷やかされるのは目に見えている。
堂上は何も言わずに追いかけて行った。
「お、 言い訳がない。」
「そろそろ上官卒業か?」
「俺達ナイスアシスト?」
事務室は沸いた。


郁は庁舎裏の壁際にいた。
「泣いてるわけじゃないんだろ。」
「堂上教官!」
何だか照れくさくて 真っ直ぐ顔を合わせられない。
「昔はチビだ、クソ教官だと散々だったけどな。」
「ぐ、すみません、ギャンギャン吠えてただけです。」
うずくまって膝に額を押し付ける。そんな郁に 堂上は苦笑しながら近付いた。
「取り敢えず、上官として? 部下を掌握したと…ってことか?」
「いえ──あ、いえじゃなくて…あの 上官というか、その……」
「上官じゃなかったら何だ。」
ポンポンと郁の頭に手を弾ませる。
「う…」
好きだと自覚した今、『上官』だけに限定したくなくて。だからと言って何と説明したらいいのか。
「……」
いつもより長く弾ませる堂上の手に、郁はふと顔をあげる。
ぶつかった堂上の視線は優しく熱を孕んでいて。
「まあ いい。」
最後にぺしりと叩いて 郁に立つよう促した。
「飯、行くぞ。」
「…はい。」
──いつか言ってしまっていいだろうか。
郁の胸には抱えきれない「好き」が溢れてしまいそう。
追いかけ続けている背中は 近くて遠い。
「笠原。」
先を歩いていた堂上が振り返った。
思わず郁は 口を両手で塞ぐ。
「雪だ。」
「わあ……初雪ですね。」
空から雪が舞い降りる。

仕切り直そう。
伝えたいのは 聞かせたい想い。
──俺からだ。
2人同じ空を見上げた。
今も「好き」が降り積もる。


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 | 2013年12月19日(木) 10:45 |  | コメント編集

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 | 2013年12月19日(木) 15:14 |  | コメント編集

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