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2014'01.03 (Fri)

「参考に」

寝正月な英香です。
朝部活ないと楽ですね。つい布団でぬくぬくしてしまいます。
明日からは主人仕事だし、そろそろ3学期の準備なので 生活戻さねば。
ってか、出費がハンパないのでさっさと通常モードにもどしたい。

更新です。
ちょっとネタいただいたので。taroさん有り難うございます。
某後日談です。婚約後です。

↓こちらから どうぞ


【More】

「参考に」


最近 女子寮内で出回っているものがある。
「ほらほら、回ってきたわよ。」
隣の部屋の小野が持って来たのは薄い本。自費出版のオフセット本だ。
郁と柴崎も興味津々で覗き込んだ。
先週辺りから各部屋を転々としており、噂によると寮生が書いた小説らしい。
「恋愛小説で、すっごく萌えるんだよ~。最初はコミカルなんだけど、気持ちが通じ合ってからは甘いのなんの。」
本好きの集まりである図書隊で高評価を得ているらしい。
「素人が書いたとは思えない出来ね。」
パラパラと柴崎が本をめくって、つ と手を止めた。
「……あたしは後でいいわ。笠原、先に読む?」
「え、いいの? 読む読む~。」
郁は嬉々として手に取った。食堂で話題になっていたので、順番がくるのを楽しみにしていたのだ。
本は『上巻』とある。
「続きはあるの?」
読み始めた郁の横から覗き込みながら柴崎が訊いた。
「執筆中らしいわよ。っても 誰が書いてるか分からないんだけど、そこがまた想像を掻き立てられるわよね。早く回ってこないかしら。」
読み終わったら隣に回してね、と小野は自室に戻っていった。
郁は暫くにやにやしながら読んでいた。恋愛小説もよく読む方だ。しかし時々ページを戻したり 首を捻ったり。後半になると考え込んだり。
「どうしたのよ。」
不審に思った柴崎が声をかけた。
「んー、なんか読んだことあるような気がするのよね。」
郁は読み終えた本を膝に置いて腕を組んだ。
「所詮は素人の作品なんだもの、参考にした話とか似たような話があって それを読 んだことがあるんじゃないの?」
ところで、と本を受け取り 柴崎はニンマリ笑顔を郁に向けた。
「仲直りしたカップルは明日のデートでどこに行くのでしょーか。」
1ヶ月の冷戦を抜けていきなり婚約報告をした郁達を、仲間のみんなが肩の荷を下ろしたようにホッとして 歓迎したのは記憶に新しい。
「エヘヘ、明日は息抜きに映画を観に行くんだ。」
結婚準備に明け暮れるばかりでは疲れるだろうからと 堂上からの提案だった。

映画はベストセラー小説を映像化した話題の作品だ。
「図書館で予約待ちが長かったのも分かりますね。凄く良かったです。」
郁は泣いて真っ赤に腫らした目をハンカチで抑えながら喫茶店の席についた。
「…そうだな。」
「?どうしたんですか?」
「いや、何でもない。」
時々辺りを気にしているような素振りを見せていた堂上だったが、映画やたわいのない話をするうちに 甘い顔が戻ってきた。
婚約が決まってからの堂上は プライベートでは殊更郁に甘い。

食事をしていつもの公園のベンチへ。
「今日は1日のんびりでしたね。」
体力はあっても、いろんな調整をしたり 細かなスケジュールで動くような打ち合わせは郁は苦手で、このところ疲労の色が見て取れた。
堂上は郁の顔色を見るために顎に手を当てた。
柔らかく微笑む郁に吸い寄せられるようだ。
「もう引き返せないからな。」
「引き返すつもりなんかありませんよ。」
郁は堂上の膝に手を乗せた。堂上が肩を引き寄せると郁はゆっくり目を閉じた。
(よし、いけ!)
唇が重なる直前に堂上が立ち上がった。
ベンチの向かいにある茂みを掻き分けると そこにいたのは──。
「あ、お気になさらずに。どうぞ続きを。」
ロマンス小説好きの金井だった。手にはノートとペンが。
「…何のつもりだ。」
「少々参考に。」
にこりと笑ってペンを握りしめた金井は、更に堂上に食らいついた。
「因みに先月の立川のレストランで 堂上二正はなんておっしゃったんですか?流れ的にはプロポーズですよね!」
あの時もいたのか!
呆気にとられていた郁が、思いついたように デートの時は持ち歩いているデジカメを取り出して写真を送り見た。
「いた!」
博物館で、公園で、水族館で──お互いに撮り合った写真のバックには金井の姿が小さく写り込んでいた。
「もしかして あの小説…」
読んだ事があると感じたのは 主人公達のデートコースが自分達と重なっていたから。
「あ、読んで頂けました?お陰様で好評なんです。で、もう直ぐ続きが完成なんですが、どうしても決めのプロポーズが思い浮かばなくて!」
金井は胸の前で手を合わせた。
「お願いします。プロポーズの言葉を教えて下さい!明日が締め切りなんです。きっとロマンチックなプロポーズの言葉だったんでしょうね。」
うっとりと浸る金井の前で堂上はたじろいだ。
提案という形のプロポーズ。
ロマンチックとはかけ離れた言葉だったと思う。小牧のようなスマートな言い回しや気の利いたシチュエーションではなかったのは承知している。
郁だって うっとりするようなプロポーズを夢見ていただろうに、自分の口からそんな言葉は紡げないというのは自覚済みだ。微かな後ろめたさがないわけではなく。というか教えてやる義理はない。
「教えないよ。」
郁が堂上の袖を引っ張りながら答えた。
そりゃ恥ずかしくて無理だろう。自慢出来るようなプロポーズではなかったのだから。
「あれはあたしだけにくれた言葉なんだから。あたしだけの宝物だもん。」
郁は目を閉じた。あの場面を思い出すように。その顔は満足感溢れている。
「だから、ご想像にお任せします。」
なおも食い下がったが 頑として笑顔を崩さない郁に、金井は残念そうに帰って行った。

「…あいつは何をしてるんだ。」
「んー、なんでしょうねー。」
郁は薄い本については話さなかった。あれはあれで一生懸命なのだ。後で もうついてこないように釘を刺せばいい。
「─郁」
「きょ…篤さんがくれる言葉は どんなものでも嬉しいの。」
「あんなプロポーズでも?」
郁は堂上の手を握った。
「だって 嘘じゃないんですよね?」
「当たり前だ。」
堂上は辺りに誰もいない事を確認して、深くキスをした。
郁は受け止めてくれる。
言葉では言えなくても伝わるように。そのうち ちゃんと言葉にするから。


「なるほど、やるわね金井ちゃん。」
1番油断してる時間とはいえ、堂上に今まで気付かれずに尾行し 必要な情報を手に入れてきただなんて、なかなかの素質がある。候補生に名前をあげても面白いかもしれない。
柴崎は薄い本を堪能した。


=============


副題は「お願いした後に」です。
No.50 「お願いします」 の後日談。
初っ端からバレバレ展開だったかしら(^^ゞ。
しかし デートといったら 映画 しか思い浮かばない、チープな英香です。すみません…。
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 | 2014年01月03日(金) 21:34 |  | コメント編集

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 | 2014年01月04日(土) 13:58 |  | コメント編集

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 | 2014年01月04日(土) 19:26 |  | コメント編集

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 | 2014年01月05日(日) 06:22 |  | コメント編集

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