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2014'01.23 (Thu)

「0に戻した後は 」2

天気はいいんですけどね。風が……まあ、上州のからっ風は名物ですし。嫁に来た頃は、風で家が揺れるとか 自衛隊の演習で地面が揺れるとか、びっくりしましたが慣れるもんです。いや、寒いのは嫌だけど。

更新です。続きは取り敢えず助走編。よーし、あとはちゃんと攻めなさいよ、と発破をかけました。

↓こちらから どうぞ


【More】

「0に戻した後は」2


郁はベッドの上で伸びをした。
「うーん……ん?」
寮ではない、ここは救護室だ。ガバッと飛び起きた。時計を見れば夕方だ。
「うそー!」
「あら、起きたのね。」
叫んだ郁に間仕切りカーテンを開けて声をかけたのは柴崎だ。
「ほら、食べなさい。ただの寝不足みたいよ。お昼も食べずにぐーすか寝てたんだから。」
ガサガサとコンビニ袋からサンドイッチやおにぎりを出して郁に渡した。
「教官から連絡貰ったの。今日はこのまま業務終了。明日は体調戻して励むように、ですって。」
「やっちゃった~~。」
頭を抱える郁を一瞥してベッド脇に椅子を持ってきて座った柴崎は郁に訊ねた。
「で、このところ何があったの?。あんた明らかに変だったし。教官も何だか雰囲気違うのよね~。」
「うぅ……」
何だろう。艶やかな笑みを向けられているのに 逃げられないこの感覚は。
視線を右に左に彷徨わせてから 観念したように、郁は一部始終を柴崎に話した。

「え!堂上教官が王子様だったの!?」
柴崎は初めて聞いたことのように驚いてみせた。
勿論 堂上と郁の因縁の情報は得ていたし、堂上が箝口令を敷きまくっていた事も知っていた。郁の入隊当初から 堂上がいろんな意味で意識していた事も。
絞られ、いがみ合いながらも、何時しか郁が懐いていっているのを楽しく眺めていた。
──あの男、余計な事をしてくれたわね。
あの男とは手塚慧だ。『未来企画』は弟や情報部候補生の柴崎が落ちなかった見せしめのように郁を陥れただけではないようだ。漸く査問の色が抜け始めてきたところなのに。
──折角のウオッチ物件を掻き回すなんて。でも。
サンドイッチをもそもそと口に運ぶ郁の顔はほんのり赤い。柴崎は僅かに口角を上げた。
──これはこれで面白そうね。
「で、どうすんのよ。憧れの王子様が見つかったわけでしょ?。追いかけてここまできたんだからさ、こう なんか…」
「あ、ちゃんとお礼は言ったよ。あの時はありがとうございましたって……」
「で?」
「王子様に憧れてたし、その、好きだったのはホント。そんで、堂上教官を尊敬してたり追いかけたいと思ってるのも同じくホントで──でも好きかどうかなんてわかんないもん。」
まだ混乱している郁の頭は整理出来ていない。
「ただ、教官に嫌われてると思ったら、辛くて苦しくて堪らなくなるの。」
それが何を意味する感情なのか。
郁によれば 堂上も様相を変えてきそうだ。小牧教官あたりに連絡とらねば、と 柴崎はほくそ笑んだ。


堂上の部屋をノックして入ってきたのは小牧だ。ビールを携えて。
「…来ると思ってた。」
ニヤニヤ笑って定位置に座った小牧を見やって、堂上はベッドに腰をおろした。

ものすごい勢いで吹き出した小牧を無視して堂上はビールを呷る。
「いやー、直接聞きたかったなあ。今どき『王子様から卒業します』なんて、日本中さがしても笠原さんくらいしか素で言えないな、すげえ破壊力!」
横隔膜が攣りそうなほどの爆笑に、堂上は暫しふてくされていた。
「ごめんごめん、そんで続きは?」
「…礼を言われたよ。その上で卒業すると言ったんだ。」
タン、と堂上は空いた缶をテーブルに置いた。
「もうアイツが過去の三正と比べないのなら、今の俺を認めさせてやる。」
──6年前の王子様としてでなく、今の堂上を見る───。
「笠原さんは実践するんだね。」
「何をだ?」
「いや、何でもないよ。」
泣き腫らした顔は、堂上が王子様と知ってショックを受けたからではない。堂上に王子様を否定されていた意味を斜め上に解釈しただけで、その事実を受け止めようとしていた。彼女はこんな事がなかったら 自然と王子様を卒業して堂上に向いていただろうと思う。いや、本人が気付いてないだけで既に──。
「で、アレなんだ。」
小牧は思い出してクスクス笑う。昼間のお姫様抱っこの光景は、目撃したものにはなかなかの破壊力だった。堂上の変貌ぶりに隊員一同信じがたいものがあったが、王子様を卒業して攻めているとなると話は早い。
「健闘を祈るよ。」
小牧は堂上の缶にカツンと合わせた。


「お、おはようございます!」
翌朝、郁は思い切って事務室に入った。
「昨日はすみませんでした、寝ちゃって。」
堂上の前に直立する。
「ん、おはよう。もう大丈夫か。」
「はい、ご心配かけました。たっぷり寝たから もう平気です。」
堂上はぽんと頭に手を置いて、敬礼した郁の手を取った。
「よし、しかし調子が悪くなったら俺に言えよ。」
「~~~~!!」
ぼふん と茹だって真っ赤になった。

(マジかよ!!)
事務室内にいた特殊部隊隊員は2人に注目した。
隣で手塚があんぐり口を開けて固まっていた。

14:24  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2014年01月23日(木) 15:46 |  | コメント編集

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