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2014'02.27 (Thu)

「それが現実」3

部活推薦で合格を決めた娘の先輩が部活に帰ってきましたヾ(≧∇≦)。
お母さんからのメールで「受験勉強で子ブタちゃんになってるので、しごいてやって下さいね!。」とありました。
昨日の放課後から練習に参加した先輩は──
見事な子ブタちゃんぶりに娘はビックリしたそうです。
恐るべし受験ストレス。
早速足をつらせた先輩に、来年の自分を重ねて不安を募らせた娘でした。

更新です。続きです。ムツゴロウは終えてますので、脳内でソフトでもハードでもご自由に妄想補完して頂いた上で 郁ちゃん大人にして読んで下さいね(*^^*)。やん。

↓こちらから どうぞ


【More】

「それが現実 」3


男子寮の風呂場の人影はまばらだった。
「堂上二正!。」
「…佐川か。」
佐川は堂上に名前を覚えられていたのが嬉しい。
「あ、ホントだ。堂上二正、自分 いい整形知っていますよ。」
?堂上は怪訝な顔をした。
佐川は堂上の肩を指差して自慢気に言った。
「近くの病院に神奈川から引き抜かれた医師は 肩の専門なんです。自分もかかりましたから腕は確実ですので紹介しますよ!」
「……」
堂上はガシガシと髪を拭くとTシャツを着た。肩の肌色の湿布の下は、郁の歯形だ。
「戦闘職種に怪我はつきものですよね。堂上二正のお役に立つのなら──」
「いや、激しくいらん。」
手塚といい どうしてこうした機微に鈍い輩が多いんだ。堂上は仏頂面で断った。
「結構前からですよね。体が資本ですので、しっかり治された方が宜しいかと。」
「いや、そろそろ外そうかというところだから。」
堂上はタオルを首にひっかけた。
「そうですか、良かったです!。ところで二正。」
廊下に出ようとした堂上に佐川は真剣な目を向けた。
「二正は本気で笠原と──」
ストレートに話題が出た。佐川が郁との交際に首を突っ込もうとしているのは 手塚や小牧から聞いている。いらぬ世話だ。
「理想は高く持たれた方が良いかと。」
「理想?」
「二正にはもっとお似合いの女性が──」
堂上はため息をついて佐川に顔を向けた。
「俺の理想は高いぞ。だからアイツと付き合ってるんだ。」
佐川の返事を聞く前に 堂上は風呂場を後にした。


佐川は後方支援部に書類を届けるよう 上官に頼まれた。たまたま渡す三監が武器類保管管理棟に出向いていたため、直接渡すよう言われていた佐川は 普段行かない棟に向かった。
グラウンド横を通ったところで号令が聞こえる。
特殊部隊が屋外訓練をしているところだった。

練成訓練では大いに汗を流した場所だ。
慣れない武器は思ったより重く、抱えながら走るハイポートは春とはいえキツかった。業務部志望といえども 男として完走せねばというプライドはある。苦しくて息をあげながら走る先には 女子としては背の高い背中が遠くに見えた。
腕も足もガクガクいわせながらゴールすると、堂上に叱責されて腕立てをしている笠原郁がいた。悪態をつき、罵声を叫ぶ女子隊員だ。
教官として指導しながら自らも身体を動かし、座学でも毅然と教授し 小さいながらも迫力と落ち着きのある堂上篤二等図書正は 佐川の理想の男にピッタリ当てはまる。
その堂上と事ある毎にぶつかる郁は疎ましかった。
「これに女を感じるほど飢えてない。」
堂上の言い草はもっともだと思った。
笠原郁ほど女らしくない女は 体力だけの山猿、との評価が定着していた。確かに防衛部にはピッタリだろう。練成訓練終了時に特殊部隊入りしたとの情報には驚いたが。

書類を渡し、帰り際にもグラウンドに目を向けた。休憩中であろう、各自 水分を補給したり腰をおろしたり。
その中に見つけたのは 小柄な堂上の姿。その隣には笠原郁。2人佐川には背を向け 屋外訓練場を指差しながら話している。堂上が郁に指示しているのだろう。
ふと堂上が体の向きを変えた。そして右手が上がり、郁の頭へ。
練成訓練の時のような拳骨ではない。肩を竦めた郁の頭に軽く当てた手の下で、舌を出して笑う郁の横顔。そして。
あんな穏やかな表情の堂上を 佐川は見た事がなかった。くしゃりと髪を混ぜて名残惜し気に離れる手と弾ける郁の笑顔。
その様子はしっくり──いや、間違いだ。佐川は頭をふった。
堂上二正の隣には あんな埃にまみれた大女が立つべきじゃない。
戦闘に疲れた体を癒やすべく、清楚で穏やかな女性であるべきだ。
佐川は踵を返すと 大股で図書館業務に戻っていった。


午後の図書館に子供の泣き声が響いた。児童閲覧室で本の取り合いが始まったのだ。
近くで配架作業をしていた佐川が間に入るが、既に3 ・4人の子供が入り乱れていた。
引き剥がしても暴れる一方だ。見回しても親らしい姿はない。1人を抱え上げても 隣で取っ組み合う。
「やめなさーい!」
閲覧室中に響き渡る声がした。
子供達の動きが一瞬止まる。すかさず喧嘩している男の子が引き離された。
郁と手塚だ。午後からは館内警備だったらしい。
「こら、手をあげちゃダメでしょ!」
男の子を並べてピシャリと叱責する。
「だって~」
口々に主張する子供達から一通り話を聞くと、視線を外し 郁は放り投げられていた絵本を拾った。
「ふ~ん。でも投げられた本の中のレールはぐちゃぐちゃかもね。」

佐川も子供達も何の話かわからなかった。 郁の手元を覗き見る。
放り投げられた本は、汽車の国の物語。園児に人気の本だ。シリーズの新刊を取り合いしながらエキサイトしたらしい。
「こんな扱いしたら本の中の国が壊れたかも!直さなきゃ。」
イベントに使った使用済みポスターを取り出してテープでつなぎ合わせると、備品のクレヨンで裏に線路を描き始めた。
「!僕も僕も!」
さきほどまで喧嘩していた子供達があっという間に協力して線路を繋げ始めた。1つの国が立ち上がる。落ち着いた頃を見計らって 郁が声をかけた。
喧嘩をしないこと、本を大切に扱うこと 人に迷惑をかけないこと といった図書館のルール。元々仲良しグループだ。笑顔に戻して仲良く本を読み出した。
郁は子供達の頭を撫でてから業務に入る。
鮮やかな手際に佐川は目を見張った。郁の姿を目で追って配架に戻る。
「子供の心を掴むのが上手いのよね~。」
ひょこりと現れた柴崎が配架用図書のワゴンを押してきた。
「ガキはガキに懐くんじゃないか?」
思わず感心したのが悔しい。笑顔が眩しく見えたのは気のせいだ。佐川は別の書架で同じく作業し始めた柴崎に視線を移した。
うん、柴崎の所作は美しい。確実な仕事と可憐な姿。そうだよ、笠原より大人な雰囲気の柴崎の方に 堂上二正の隣にいてほしい。
「柴崎、おまえさあ──」
大きめの蔵書を頭上の棚に上げるところだった。背伸びをした柴崎の手から本が滑る。
「あ──」
頭にぶつかる寸前に、柴崎の腕が後ろに引かれた。本が床に落ちる前に片手でキャッチしたのは手塚だ。柴崎の頭を胸に納めている。
「ドジ。」
「…あら、ありがとう。」
柴崎をドジ呼ばわり出来る男はそういないだろう。
手塚は本を柴崎に手渡すと、佐川に言った。
「声を掛ける時はタイミングを考えることだな。」
そのまま立ち去る手塚に柴崎は軽く手を振る。
佐川は同期達の4年前とは違う身のこなしを目の当たりにした思いだった。

そこに武蔵野第二図書館から特殊部隊に出動要請がかかった。


17:07  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2014年02月27日(木) 20:24 |  | コメント編集

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