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2014'03.07 (Fri)

「それが現実」5(完)

こちら木・金曜日と高校入試。あれから1年なのね。
てなわけで、長男は4連休です。
テストも終わってぐ~たらモードで、ニュースオタクはiPhoneでネットサーフィン。そして母ちゃんに懇切丁寧に解説してくれます。求めてないけど。次はお馬鹿映像を検索しては馬鹿笑い。「ちょ、見て見て~。」呼んだり呼ばれたりしながら付き合ってると、何にも出来ないじゃないか!。
ペラペラペラペラお喋りな男です。

更新です。完結になります。
前回から登場している金井ちゃんは、50「お願いします」から113「参考に」・贈り物「カミツレ便り」に出て来たオリキャラです。ホント、オリキャラだらけ(^。^;)。

↓こちらから どうぞ

【More】

「それが現実」5


昼食を済ませて食堂から事務室に1人向かう手塚の携帯が鳴った。
「はい。」
『あ 手塚、笠原知らない?。昨日の事件についてちょっと訊きたいことがあるんだけど、携帯に出ないのよ。』
「ああ、笠原ならこの時間 中庭の──」
午後の業務までには時間がある。堂上と郁は、天気の良い日には中庭のベンチで飲み物を手に過ごしているようだ。
手塚は携帯を繋げたまま方向を変えて中庭に出た。時には班全員でもくつろぐ場所だ。木漏れ日が差す 郁が見つけたお気に入りのベンチ。
桜の木を隔てた先に人影があった。ベンチに2人。
まずい。あの体勢は 。タイミングを間違えたか。
手塚は目を逸らして その場を離れることにした。
しかし逸らした先には堂上の姿。ベンチに向かっている。
?じゃあ あれは。再びベンチに目を向けた。
ベンチにもたれて座っている郁に、男が覆い被さるようにして 今にも唇が重なろうかというところ。郁は寝入っている。
それに気付いた堂上が怒号をあげて駆け出した。

郁の指先に辛うじてかかっていたペットボトルが滑り落ち、堂上の声に郁の目がパカリと開いた。
目の前には──誰?
こんな至近距離で見る男の顔は 堂上しか知らない。
思考が追い付く前に、郁の右拳が一閃した。

背中から浴びせられた怒号に 身動きが取れなかった佐川は、左頬に郁の拳をまともに受けて吹っ飛んだ。起き上がる前に胸ぐらを掴まれて釣り上げられる。
堂上だ。
「何をしていた!」
その形相に佐川は戦慄いた。

郁の意識は急速に巡る。
両手で口元を覆うと 感触を恐る恐る確かめる。もしかして。まさか。
郁の唇は堂上しか知らない。知りたくない。ぶつけるように初めて重ねた時からただ1人だけ。
やだ。
郁の目に涙がにじむ。
「貴様─」
堂上はギリギリと佐川の襟を締め上げた。

「未遂です!」
手塚が声を上げると その横からすり抜けて出た者がいた。
「証拠はここに。」
カメラを手にした金井がいた。
「つい習性で。」
連写していたらしい。
「お前も!」
堂上は佐川を釣り上げたまま 郁に向かって声を荒げた。
「隙を見せるな!!」
郁から大粒の涙が落ちる。
堂上は顔を歪ませると佐川を思い切り殴った。非戦闘員だとて容赦はしない。胸ぐらを引き回して打ち捨て、這いつくばって動けなくなった佐川を一瞥すると ベンチに座る郁の元に駆け寄った。
ビクリと震え、ポロポロと涙を零す郁の前にゆっくり跪くと眉をしかめた。
「すまない、郁。」
口元を覆った両手を外させる。その手がゆるゆると堂上の首に回されたのを確認し、郁の顔を肩に埋めさせた。
「無事で良かった。」
キュッとしがみつく郁をしっかりと抱き締めた。

「あら、手塚も免疫ついたみたいね。」
いつの間にか隣に立っていたのは柴崎だ。抱き合う2人に目を細める。
「わ、どこから湧いて出た…」
「失礼ね。自分が中庭って言ったじゃない。それに──」
手塚が持ったままの携帯を指差した。
「通話のまんま。」
手塚は慌てて通話を切った。
「ま、制裁はダブルで食らったようだし?」
柴崎は 突き刺すような視線を佐川に向けたが、くるりと踵を返した。
「乙女のキスは 好きな人とだけよ。奪われるものじゃないわ。ましてや寝込みを襲うなんて。」
大事な笠原をキズモノになんかさせるもんですか。
手塚も柴崎と共に その場を離れる。
「お前も、乙女なのか?」
ピタリと止まった柴崎が振り向き、小首を傾げて手塚の顔を見上げる。
「──そう思う?」
ふふんと笑って再び颯爽と歩き出した。
質問を質問で返すな!。一呼吸置いて 手塚も進む。
3回キスをした。
唐突に始まったキスだった。
柴崎の真意はつかめない。問い詰められることを拒否しているようなその背を見つめると、手塚はふと呟いた。
「乙女、だと 思うよ。」
聞こえたのか聞こえなかったのか、柴崎はそのまま館内に入っていった。

「ボタン、付けましょうか?」
フラフラと何とか建物に辿り着いた佐川に 金井は声をかけた。
確かにこのまま業務に戻るわけにはいかない。ワイシャツの殆どのボタンはちぎれ落ちている。
「その顔じゃあ、暫く利用者の前には出られませんね。」
クスクス笑う金井に 佐川は赤黒く゜腫れ上がった頬をおさえてふてくされる。
「どうせ……」
もう足腰に力が入らず 壁を背にズルズルと地べたに座り込んだ。
「私のコレクション、見ます?」
金井は佐川の隣に座り、カメラの画面を差し出した。
そんな気分じゃない。憧れの堂上二正の 取り返しのきかない怒りを買い、自分の薄っぺらい理性に辟易している。同室の友人や手塚 この金井にさえ忠告されていたにも関わらず、だ。
しかし口の中が切れていて喋るのもままならない。断ることも出来ずに画面に目を落とした。
次々と繰り出されるのは、これでもかというほどの笠原郁。くるくるとめまぐるしく変わる表情は 元気で明るい 快活な女性そのものだ。決して山猿なんかではない。
警備中の館内でのショットから休憩中の堂上班。そして、プライベートであろう 私服での外出時。その表情は また別の顔。
その殆どに堂上の姿。
「堂上二正って、笠原士長のこと よく見てますよね。笠原士長は分かりやす~く表情に出るんですけど、ほら、これなんか。これも。」
心配そうな、厳しそうな、優しそうな視線。多分、普段は気付かれない。
「カメラって正直ですから。」
佐川の目に映るのは、練成教官の時とは明らかに違う堂上の表情。冷静で果敢で厳しく凛々しい、いつも思い浮かべていた堂上二正の姿ばかりではないのが分かる。
よっぽど魅力的だ。
コレを引き出すのが郁であり、郁を佐川の知る山猿から花開かせたのは堂上なのだ。
頑なな自分が そんな事実を受け入れるのに必要だった痛み。指で触れるのも躊躇する。
佐川の中で堂上の厚みが増した。郁に対しても 誰よりも似合いの相手であると素直に認められる。
口元に滲んだ血を拭き取ると、強張っていた顔を緩ませた。
「こっちの堂上二正の方がカッコいいな。」
「堂上二正もカッコいいですけど、笠原士長も素敵過ぎます!」
「そりゃそうだよ。堂上二正が選んだ女なんだからな。」
2人顔を見合わせて笑う。
「じゃあ、これからは佐川士長に 堂上二正と笠原士長の追っかけを認めてあげます!」
「は?」
佐川はキョトンとした。
「私、丁度助手が欲しいと思っていたんです。男子寮での情報は 隊長である私にきちんと報告して下さいね。ちなみにカメラは自前になります。」
金井は胸を張って 偉そうに腕を組む。
「追っかけ隊の掟は1つ。お2人の邪魔をしないこと。あの2人だからこそ絵になるんですからね!。」
佐川は暫く固まっていたが、やがて腹を抱えて笑い出した。痛い痛いと頬をおさえながら。
「もう 邪魔なんかするつもりはないよ。…じゃあ──」
コツンと頭を壁に当てる。
「カメラ、買わなくちゃな。」
ご一緒しますよ、と金井は微笑んだ。

夜、小牧が堂上の部屋を訪れた。
「佐川士長、金井さんとタッグを組んだって?」
どこからか仕入れてきた話をして上戸に落ちる。
「どっちにしろ迷惑な男だ。」
堂上は苦い顔でビールを呷る。
金井と一緒に頭を下げにきた佐川は どこか吹っ切れたようだった。逆に気になったのは 満面の笑顔の金井だった。
その意味は この先に知ることになる。
「笠原さんのケアは?」
ニヤニヤ顔の小牧に言い放つ。
「たっぷり しておいたから。」
ヒューと小牧は口笛を吹いた。恋人を手に入れたばかりの友人が面白い。
歯形の効果かな。冷たいビールを飲み干した。


後日。
吉祥寺での薬物中毒者相手に 郁は躊躇なく骨を折って仕留めたのだと聞いて 佐川の背筋は凍った。
頬の腫れや、口の中を切るくらいで済んだのは奇跡かもしれない。

適材適所。
堂郁追っかけ隊は 鋭意活動中だ。

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 | 2014年03月07日(金) 07:32 |  | コメント編集

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 | 2014年03月07日(金) 09:03 |  | コメント編集

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 | 2014年03月07日(金) 13:09 |  | コメント編集

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 | 2014年03月08日(土) 00:19 |  | コメント編集

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