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2014'03.20 (Thu)

「ポジション」

こんにちは。英香です。
こちらは雨の日。卒業・卒園式を迎えたママさんもいらっしゃるかしら。おめでとうございます。
長男の小学校卒業式も雨だったなあ。まだ男の子男の子してたなあ。
日々コイツに何かと振り回されていますが(`Д´)、余りものマイペースさに このブログを立ち上げて いろいろ吐き出す場を作ってこうして今があるのだから──やっぱり感謝しなきゃかな、なんて思うんだ、けど!けど!ヽ(゚Д゚)ノな時もあるのさ。

更新です。久々の入院中です。事件がないとなかなか進まず時間かかっちゃいました。

↓こちらから どうぞ


【More】

「ポジション」


2回、キスをした。
告白の返事のようなキスと、恋人となった帰り際のキスと。
郁は病室の外で暫く佇んでいた。
初めて実った恋に胸がいっぱいで、唇は甘い刺激に痺れていた。

基地近くの指定病院に転院した堂上のもとを、郁は足繁く通う。
「転院したら もう少しまめに顔見せろ」なんて言われなくても、会いたい、話したい、側にいたい。
何度目かの見舞いのときに堂上が言った。
「毎回キレイな格好してくることないぞ。それに手土産ぶら提げてこんでもいい。」
微妙に抵抗してみても、堂上に手を取られて「お前は顔見せるだけでいい」なんて甘い顔されれば 何も言い返せない。
ストンとベッド脇に引かれて座れば、堂上の手が郁の頭にのびてくる。軽く弾ませ 髪をかき混ぜ、頬に滑らす手に郁が目を細めると──もう何度目かのキスが落とされる。
好き。大好き。だからもっと──。
病室を見渡せば、サイドテーブルには一通りの食器にティーバッグ、ティッシュやナイフなどの日用品が揃っている。洗濯物も小牧が入れ替えているという。
「むぅ……」
「…何唸ってるんだ?」
今日のお持ち帰りはプリンだ。柴崎とのおやつはこのところ不自由しない。喜ばしいが、郁的には欲しいポジションではなかった。

堂上のいない間は小牧が班長代理となり、青木班と合同の訓練が増えた。内容的には変わらない。堂上が帰ってきても恥ずかしくないよう 自分を鍛えるだけだ。
休憩には各自コーヒーを淹れる。郁も一区切りついたところで給湯室に入った。
「あ 笠原さん、ついでだったからコーヒー淹れたんだけど。砂糖はお好みでどうぞ。」
小牧は郁にカップを差し出した。もう1つのカップは手塚にだろう。この上官はこういうことを苦もなくこなす。
「す、すみません。上官にこんなこと……」
「ついで、だよ。いつもじゃないから。」
小牧はにっこりと笑うと事務室に戻って行った。
砂糖を2つ入れて自席につくと、小牧は青木と何か打ち合わせをしていた。当然ながら小牧は堂上同様優秀である。指導力 判断力に優れた良き上官だ。
郁は大きくため息をついた。
「何だ、あからさまだな。」
「うえ?」
手塚に指摘されて郁は慌てた。
「ああ…うん──小牧教官って、マメだよね、って思ってさ。」
「はあ?」
手塚は首を傾げた。
「小牧教官は堂上教官の奥さんみたい。」
ブホッと手塚はコーヒーに蒸せた。
「小牧教官はさ、堂上教官の方が面倒見がいいとかいうけど、小牧教官は無駄に内面に踏み込まないだけで 気遣い出来るし何でもこなしちゃうよね。──洗濯だって出来るし リンゴだって剥けちゃうし……。」
今度は後ろからブホッと噴き出す声がした。
振り向くと小牧が腹を抱えている。
「ハハ、俺は笠原さんにヤキモチ焼かれちゃってるのかな?嫉妬されてるのか。」
「わ、小牧教官!」
小牧は手にした紙袋を郁に渡した。
「はい、洗濯物。今日も行くだろ?何なら堂上の洗濯物引き受けるかい?下着もあるけど。」
ボン と郁の顔は茹で上がった。いやいや、男物の下着などとんでもない。しかも柴崎と同室だ。どこに干す場がある?
『もし基地外で1人暮らしだったらお前に鍵預けるけどな』の言葉に舞い上がったものの、実際そんな高度なスキルは 恋愛初心者の郁は持ち合わせていない。
でも憧れるのだ。理想の「恋人」のポジションに。
身動きの出来ない恋人の役に立ちたい。不自由なことがあれば世話をやきたい。
大女で戦闘職種で。
長い付き合いで本性知られていても、少しでも女っぽく見られたいのにお洒落はいらないという。
毎日手土産貰って帰るだけじゃ、ハイエナのようで図々しく思われない?。
ニコニコ笑ってるだけで価値のある可愛らしい女の子じゃないんだから、何かしら付加価値を付けなくては 彼女として申し訳ないような気がしてならないのだ。
──彼女らしいこと、何も出来ていない。
「渡すだけ、にします……」
郁は小声で呟いて ギュッと紙袋を抱きしめた。


翌日。
コンコンとノックがして 昼休みを使って病室を覗いたのは小牧だ。
手には緊急の書類がある。
「堂上、目を通して判子くれればいいから。」
ファイルを手渡してから戸棚を開ける。中に入っているのは洗濯物だ。
「いつも悪いな。」
堂上が声をかけて書類に目を落とすと 小牧は肩を震わせた。
「笠原さんにさ、嫉妬 されちゃったよ。」
「は?」
「俺がお前の彼女の座に居座ってるみたいに思われてる。」
堂上の手元が狂って 判子の枠からズレた。
「なんだそりゃ。」
堂上が怪訝な顔を見せると 小牧は手にした洗濯物を軽く掲げた。
「ほら、いかにも『彼女』がしてそうな仕事だろ?。」
ああ だから昨日来た時、ちょっと不服そうな顔をしていたのかと 堂上は合点がいった。かといって任せたって おたおたと固まるに違いないのに。そんな初心さが愛おしい、なんて──ニヤニヤ笑うこの男に覚らせたくなくて口元を引き締める。
なるべく仏頂面で判を押し直し、ファイルに綴じた。
「じゃ、いじらしい彼女が今日も来るのを待ってるといいよ。」
堂上の内心なんてお見通し。小牧はひょいとファイルを受け取ると、サッサと廊下に出た。
「そのにやけた顔は晒さない方がいいかな?」
余計な言葉に堂上は思いっ切り枕を投げつけた。


「失礼します。」
課業後におずおずと顔を出した郁は、スーツ姿のままだった。今日は1日内勤だったのを堂上は承知している。
「お疲れ。」
そう甘い顔をする堂上にほんのり頬を染めて、郁はベッド脇の椅子に座ろうとした。それをすかさず手を引いて堂上は郁を抱きしめた。
「きょ、教官?」
いつもなら まず椅子に座って1日の報告をするところだ。突然引かれてバランスを崩した郁は、なだれ込むように堂上の上に体を預ける形となった。
「郁に頼みがある。」
「なんですか?」
いきなりの体勢にあたふたしながら郁は身を固くした。
「タオル」
「タオル?」
堂上は腕をゆるめて不思議そうな顔をした郁と向き合った。
「明日からリハビリが始まるんだが、タオルを何枚か用意してくれないか?」
「あ、はい……?」
「郁が洗ってくれるタオルで頑張れる気がする。」
「?!」
「洗濯物、タオルだけでも頼まれてくれるか?彼女の仕事だろ?」
「もしかして小牧教官──」
バラしたな と思う反面、郁は自分の役割が持てて顔がにやける。それが悔しくて そっと堂上の胸に顔をうずめた。

こんなささやかなことで 一気に浮上する恋人が愛おしくて仕方がない。
存在自体で満足なのに。
彼女の憧れも叶えてやりたくなる。
こんな可愛いヤキモチが 堂上にとっては嬉しいから。
ヤキモチ?何が悪い。
お前だけじゃないぞ。
堂上は擦りよる郁を堪能しながら サイドテーブルの携帯に視線を移した。
『笠原は』から始まる柴崎のメールは、堂上からしたらライバル心剥き出しだ。郁の乙女心のアレコレを朴念仁に宛てたような文面に苦笑する。
彼女のことなら何でも知ってるんだから、とでも言いたげな 女友達に嫉妬する、なんてことは自分の場合口が裂けても言ってやらないけどな。年上の意地にかけて。


リハビリにはほんのりカミツレの香りを効かせたタオルを持参する。
郁の笑顔が染み付いているのか、メニューを順調にこなしていく。
そんな堂上の 汗を流す姿があった。

12:35  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2014年03月20日(木) 15:38 |  | コメント編集

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 | 2014年03月20日(木) 22:04 |  | コメント編集

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 | 2014年03月21日(金) 08:02 |  | コメント編集

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 | 2014年03月21日(金) 21:45 |  | コメント編集

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