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2014'04.02 (Wed)

「期待」後編

こんにちは。春休みも半分、ですかね。
今年度も小中高校の行事関連の把握に四苦八苦。あれ?誰がいつ何があるんだっけ、な日々です。確認を怠る習性を何とかせねば、なんですよね~。

更新です。単に原作なぞっただけなんですが、この悶々とした堂上さんが好きだったりします。で、次の連載が関係するかというと、まあ重なるのが時期なだけ なんですが(^^ゞ。まあ、またオリキャラ出したりするんですが。へへ←と誤魔化しておく…。

↓こちらから どうぞ


【More】

「期待」後編


消灯後のロビーには誰もいない。
非常灯と自販機の電気を頼りに堂上はビールを購入する。
ガコンと落ちてきた缶ビールを手にすると、ソファに深く沈んだ。
頭を冷やせ。
俺は笠原郁をどうしたい?

5年前、咄嗟に支えた凛とした背中。──助けたいと思った。本と共に。
後先考えずに行動した自分は未熟だった。図書隊員として失格だ。そんな奴に憧れ 追いかけてきたバカは間違っている。

女子寮からバタバタとロビーに入って来たのは。
「何で今来るか、お前は。」
頬に冷却シートを貼った郁だ。
「男女共同フロアです。文句言われる筋合いありません。」
鼻っ柱が強いのは、良化隊に突っかかっていったあの頃のまま。痛々しいシップは足ではなく 頬に。
「何で確保者あたしにしたんですか。」
何故知っている。
まだ危険な職種であることを理解出来ていないひよっこだ。
しかし咄嗟の危険回避に攻撃反射 瞬発力は、戦闘職種に適性がある。損壊犯相手に訓練成果を発揮したのだ。
「教官の報告書にケチつけられるほどエライのか。」
「そういうこと言ってんじゃありません!」
ポロリとこぼれた大粒の涙。
「あたしが確保者になる資格ないからっ……」
顔を伏せても丸見えだ。
これは反省の涙。自分の不甲斐なさに悔しく思う涙。自身を戒める為の涙。
薄暗いロビーに涙が光る。
堂上は立ち上がった。

──スポーツ気分なら辞めちまえ。
間違った背中のせいで図書隊に妙な幻想を抱かせ、有り得ない正義の味方を追って来させた。
本来図書館を守る組織だ。一個人の甘い考えは図書隊の正義でも何でもない。
お前が夢見ているような場所ではない。
知らなくていいことだ。本を守る為に小さな勇気を振り絞って立ち向かった少女には、そのままでいて欲しかった。真っ直ぐゴールだけを目指す 普通の女の子のまま、違う世界で幸せに、好きな本を読んでいれば──

それは 後ろめたい願望だ。
不公正に扱いた自覚はある。

堂上は郁の頭に手を置いた。
あの時と同じ柔らかな髪。良化隊に気丈に立ち向かった少女は頼りな気に泣いていた。
今の涙は違う。
くしゃりと無意識に撫でた。衝動に駆られそうになる、が。
「……小牧教官よりチビなんだ。」
パンとはたいてやった。

「あたし、辞めませんから!」
去ろうとした背中に投げかけられた宣言に、堂上は思わず振り向いた。
郁は真っ直ぐ堂上を見据える。
「高校のときに会った図書正みたいになりたくてここに来たんです。いつか会えたらあなたを追いかけてここに来ましたって言うんです。」
「……それほど大した男か、それが。」
「ほっといて下さい。教官に言われる筋合いありません。」
──顔も覚えてないくせに、とは言わない。ただ、非常にムカつくだけだ。
勝手にすればいい。辞めないと言うのなら。


郁の3度目の警備実習バディは玄田だ。小牧、堂上、ときて練成教官の総責任者でもある玄田が担当となる理由は郁に知る由もない。
その玄田との市街哨戒で良化隊の検閲に出くわした。
案の定突っ走ったとの連絡を受けて 、基地で練成訓練を監督していた堂上は小牧と急行した。
「楽しいねえ、彼女。無鉄砲でさ、まるで───」
煩い、黙れ。心底楽しんでいるように笑う小牧が忌々しい。そんな顔は5年も前に見飽きている。
笠原、お前は何でそんなに俺が切り捨てたモノを拾うんだ。やっとの思いで捨てて 漸く克服したと思ったのに、何故突き付ける!
堂上はバンのアクセルを踏んだ。間違った行為を止めるために。

だが、現場に到着し、堂上が目にしたのは──良化隊員に突き飛ばされた郁の背中。甦る光景。
箍が外れた。
抱き止め 支えたのは「本を守りたい」強い意志。湧き上がるのはその勇気を抱える少女を助けたい衝動。
「遅れたが、二等図書正2名に三等図書監1名だ。不足あるまい。」
華奢な肩を支えた腕に力が入った。


ひとしきり説教をして笠原郁を解放する。
郁の王子様宣言に打ち拉がれて。
何が王子様だ!貴様 誰に向かって!。
隣で上戸に入っている小牧を蹴り飛ばす。
王子様の真似をして絵本を子供に手渡す郁は誇らしげだ。子供の頭をそっと撫でる郁から 堂上は目を逸らした。
「さすがにお前の秘蔵っ子だ。」
低く笑う玄田もまた楽しそうに目を細める。
過去の自分を慕われる、今の堂上には 郁は不愉快で腹立たしい存在だ。その理由は言わずもがな。
最初は面白がってあてがった采配だが、不公正ながら徹底的に絞られた新隊員は脱落もせず食らいついてきた。
本人の適性を裏付けるようにシゴキに耐えて 防衛員として申し分ない成長を遂げようとしている。
堂上の指導は適切だ。練成教官として隊員を伸ばし導く能力に長けている。特殊部隊隊員の中でも 若いながら統率力に優れているのも玄田には頼もしい。真面目なだけにガミガミ煩いが、構うと面白いのも昔からだ。
「あれはあれで決まりだろう。」
身体能力だけではない。本を守りたい。読む人の気持ちも守りたい。そのために権力に立ち向かう強い意志と勇気は後付け出来るモノではない。
堂上はもう5年も前に見せ付けられた。
「異存はないな。」
玄田は堂上に真っ直ぐ投げた。
小牧も視線を向ける。
笠原郁を背負わせる。これは堂上自身の成長にもなると判断する。特殊部隊の未来をかけるには頼もしい。

「叩き込んでやる。」
生半可なことで命に関わるヘマを踏まないように。俺が育てる。誰にも渡さない。
それがお前が選んだ道ならば。
堂上もまた覚悟を決めなければならない。

関東図書基地。全国初の女性特殊部隊隊員が誕生した。


13:36  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2014年04月02日(水) 20:26 |  | コメント編集

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