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2014'04.13 (Sun)

「花占い」3

こんばんは。大分 日が延びましたね。日中は暑かったりもします、が、まだコタツやヒーターは大活躍。
今日は一時風がやんだので、チビと長男とのサバゲーごっこにお付き合い。昨日のお祭りのくじ引きで手に入れた鉄砲は早々に壊れ(さすがだ)、母ちゃんは家に引っ込みましたが、それはまあ楽しそうな──一見親子な兄弟です。

更新です。続きです。
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【More】

「花占い」3


練成訓練期間中、へとへとになっている新人達の中で 元気に罵詈雑言を並びたてるのは、堂上から集中砲火を浴びせられることの多い郁だ。
「あーもう!今日も腕立て食らった!ったくあのクソ教官め!」
周りの女子隊員はサッと周囲に視線を走らせる。また堂上とかち合わせる訳にいかない。村上も確認して肩の力を抜く。
「まあまあ。でもよく耐えてるわよね、笠原も。」
あんな罰則だらけの訓練に、歯を食いしばって挑んでいく。自分だったらとうに潰れている。
「だって絶対図書隊に入るって決めて来たんだもん。負けてたまるかってんだ あんなチビに!」
村上は肩を竦めた。
「あんたも言うわねえ。そんなに堂上教官が気に入らない?」
「あったりまえじゃない!大ッキライよあんなヤツ!」
教官をあんなヤツ呼ばわりするのもドロップキック見舞わすのも笠原くらいの者よ と呆れるが、内心ホッとする。少なくとも郁は堂上を嫌っている。堂上も女として扱っていない。どこを取って見ても ただいがみ合ってる上官と部下だ。
勿論特別扱いには違わないが、さすがにその位置はいらない。
村上は「子供の喧嘩みたい」とクスクス笑った。

郁のこの嫌いようからは何ら進展の予感はない、と思いたかった。
あの蔵書損壊犯確保の場面を見て、その後の堂上の横顔を見ても。
ただ──
堂上の背中が何かを発しているようで気になった。それが何かは知りようがなかったが。


教育期間が終わって正式に図書館員になった村上は、公休日に実家に寄った。
「ただいま、母さん。具合はどう?」
母は花が大好きだ。外出は控えているが、家の中で花の世話をするのを楽しみにしている。
「お帰り。ありがとう。最近は調子いいのよ。」
季節の変わり目は寝込むことも多いが、気候が安定するとこまめに花の手入れに勤しむ母だ。
村上は母の好きなマーガレットの花束をテーブルに飾る。
「仕事には慣れたの?」
「やあね、姉さんと同じことを訊く。大丈夫よ、大好きな本の仕事だもの。」
母の読み聞かせで育った姉妹だ。図書館にも近い環境で、自然と本好きになった。
「来月には寮を出て帰ってくるからね。」
花瓶でのアレンジに満足すると紅茶を淹れるべくキッチンに向かう。
「いいのに。姉さんもいるんだし。」
「あら、姉さんより私の方が花に詳しいのよ。これだけの世話、手伝わせてよ。」
村上は胸を張ってにっこり笑った。


村上は書架整理をしていた。
作業中、少し離れたところで久しぶりに堂上の姿を見かけた。
特殊部隊は奥多摩訓練から戻ってきたとは聞いていた。
特殊部隊だなんて、雲の上の人。防護室の外で銃を手に本や私たちを守る人。
今は新人特殊防衛員の館内業務研修中だという。その特殊部隊に郁が抜擢されたと聞いて驚いた。しかしあの身体能力からは頷けるモノはある。ただ──
堂上の近くにいられる郁が羨ましい、というのも本音。そして、必要以上に近寄って欲しくないと願うのも本音。
その背筋を伸ばして歩いている堂上の姿を目で追っていると、年配の女性が声をかけるのが見えた。
「植物に詳しい本で、出来るだけ専門的なモノを探しているのですが。」
さすがどの業務にも精通しているという特殊部隊隊員。女性の質問に堂上は軽く頷くとスムーズに専門図書の前に案内した。
しかし 何冊か提示した後 ふと顔を上げた。村上と目があった。
「村上、ちょっと。」
突然の指名にドキンと心臓が跳ねた。見ていたのを気付かれたか、咎められるか。
「は、はい。」
それでも名前を呼ばれて心が躍る。
「植物には詳しいか?」
「え?」
「こちらのご婦人が華道についての書籍をお探しなのだが──」
後ろで女性がぺこりとと頭を下げる。
「はい、多少は…」
村上は堂上からレファレンスを引き継ぎ、女性が求める少々高度な内容ながらも読みやすそうな本を厳選した。その様子を堂上に見られていると思うと緊張したが。
女性は満足げにカウンターに向かう。
ホッとしたところで 堂上が声をかけてきた。
「詳しいな。見事なレファレンスだった。一般向けでない蔵書まで頭に入ってるとはな。」
誉めてもらえた。村上は舞い上がる。
「あ、えと、たまたま母が花好きなので人より詳しいだけなんです。ガーデニングとかプランター栽培とか…他のジャンルはまだまだなんですが。」
しどろもどろになりながら説明する。
「強みがあるのはいいことだ。そこから発展することもある。」
そういえばアイツも植物は詳しかったか という堂上の呟きに、村上は何となく反応した。
「笠原、さんですか?」
「ん?ああ。もっとも笠原は野草とか山の植物っぽいけどな。」
クルリと背を向けた堂上の表情は意外にも穏やかだったが、何より教育隊以来初めて会話が出来たのが嬉しかった。担当だったということもあるが、名前を覚えて貰っている。たかが50人分の1人だったとしても、少しはアピールできたかも。
熊殺しと2つ名を与えられたという郁とは違う 女らしいところを。女性として印象付けられたら?


女子トイレでバッタリ郁に会った。
「!どうしたの、その顔?」
村上は郁の顔に驚愕した。郁の額や顎には大きなニキビ。
「う……目立つ?」
バッと手で隠したが 痛々しい。
「分類法とか書庫業務の特訓を柴崎にしてもらってるの。」
罰則の 寝る前のチョコレートでニキビが増殖しているらしい。
「笠原、座学苦手だったもんね。」
納得して大きく頷く。
「もう、悔しいったらありゃしない。」
しゅん と落ち込む郁を村上は励ます。
「まだ堂上二正に絞られてるんだ。」
相変わらずの犬猿だろう。しかし郁は小さく首を振った。
「ま、あたしが悪いんだけどさー…」
ここで郁から反省の言葉が出るとは思わなかった。
「でも キツく当たられてるんでしょ?」
「そ、怒られてばっか。でも覚えようとしてる時は合わせて、くれてるのかな?」
え?。もっと噛み付くかと思った。
「厳しいん、でしょ?」
「そりゃあもう、バシバシ叩かれる。」
ムッとむくれた郁がふと力を抜いた。
「でも、頑張れば待ってくれるんだよね。だからちょっとは認められたいじゃん?」
村上はもやもやとした不安を抱いた。部下が上司に向ける言葉よね。
「叩くとか、有り得ないわよ!それに怒られて傷付くよね!」
村上は勢いづいて詰め寄った。郁は仰け反る。
「う、うん、まったくだよね。これ以上バカになったら───って、やだ、村上ちゃん!」
アハハと笑った村上だが、内心ざわつく。

お互いに嫌っててよ。

こんな風に思うのは、初めてだった。


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 | 2014年04月14日(月) 00:57 |  | コメント編集

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