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2014'04.21 (Mon)

「花占い」5(完)

週末は都会に行って来た英香です。
春休み、チビをどこにも連れて行けず。半分熱出していたし、小中高の学生では予定が合わず。
で、チビの為だけの1日を、と希望を叶えるべく。娘は丸1日部活なんで置いて、男組と母ちゃんで遊びに行きました。
彼の希望は「釣りの出来る居酒屋に行きたい!」でした。
釣り好きの父と兄を持つ彼ですが、釣りのセンスはイマイチでして。到底渓流でのお魚ゲットは難しく、生け簀ならば楽しめるってんで何度か行ってお気に入りの店。
鯛や平目を釣って食べて、東京ドームのところでちらっとアトラクションを楽しんで来ました。ジェットコースターは身長制限で見送って(というか、見た瞬間尻込み)、母ちゃんと長男だけ挑戦。怖かった。
しかし田舎に染まっている母ちゃん。高層ビルにウキウキしていたのは最初だけ。もう、人混みは懲り懲りで、満員電車に涙が出てきました。
こんな中、通勤したり通学したりしてるんですね。お疲れ様です(x_x)。

更新です。最終話は長くなりますね。分ける程の内容ではないので そのままアップです。
時間経過が分かりにくいのですが、実は県展後までいってます。すみません(ノД`)。
ちょっと最近悩み中……だったりします。

↓こちらから どうぞ


【More】

「花占い」5(完)


リビングに飾った花籠を眺める。
花にはエネルギーがある。花の存在に癒される。花があると元気になれる。その空間が明るくなり、心を魅了する。
「二正と花は かけ離れてるようだけど、私にとっての存在価値は似てるかな…」
ただ、花には手をかけてやれるが、堂上にはそうはいかず、ただ眺めるしかない。仕事で必要な報告くらいしか言葉を交わす事はないのだから。
そりゃ 堂上の見目は 仏頂面が多いし近寄りがたい。花と並べるには無理があるか、と苦笑する。でも実は温かい人だと知っている。──特定の人物に?
村上の胸は痛む。苦しい。この気持ちはどうすることも出来ないの?

「好きな人でも いるの?」
いつの間にかリビングに入っていた母が声を掛けてきてドキリとした。
「え?。……どうかな。」
村上は軽く花に霧吹きをかけて、母に紅茶を淹れる準備をした。あまりそういった話はしたくない。
「母さんの心配なんかしてないで、自分の幸せを考えなきゃだめよ。」
「やだな、そんなんじゃないって。なかなか出会いがないだけ。」
ニコリと笑ってテーブルに座る。
「──そうだ、あなたに会わせたい人がいるんだけど。」
母は紅茶に口をつけながら 村上にそう言った。


月明かりの下。
この光景は何度見ただろうか。
特殊部隊は何かと飲み会が多いとは聞いていた。堂上班が参加すれば、酒の弱い郁は寝落ちして、班長である堂上に背負われて帰寮するのだと寮の同僚からも聞かされていた。
「二正も大変よね~」
キャハハと笑う同僚たちは知らない。郁を背負った堂上が 、その役目を大変だとか面倒だとか思っていないだろうことを。
今 村上の目の前で、堂上は正体をなくした郁を いとも簡単に背負って歩いている。時々立ち止まっては背負い直し 郁の様子を見る顔は、とても迷惑に思ってるようには見えやしない。
背中に在る者に癒され、満たされ、心を占領されている。あんなに厳しく扱いていたのが何の為だったのかなんて明らかだ。
郁は いくつもの抗争を潜り抜け、成長していた。隊員としても、女性としても。
茨城の県展では 多くの負傷者を出し、稲嶺が引責辞任する事態になった大規模戦を共に乗り越えたのだ。
自分とは違う世界の人たち。
防護壁の中で震えるしかない自分に、どうして近寄れるなんて思えるんだろう。ただ無事を祈って待つ、そんなことは自分に耐えられない。そこを乗り越えてまで愛し続ける自信も覚悟もない。所詮──
今日は少し酔っている。祝いの席は気分を高揚させてくれているようだ。だから、出来る。
「堂上二正。」
村上は 郁を背負った堂上に声をかけた。

基地の中継点である公園に立ち寄った。未だに夢の中らしい郁をベンチに下ろし、当然のように自分の上着をかけてやる堂上に村上は目を細める。
分かりやすい。
堂上は近くの自販機で飲み物を買ってきた。
「どうした、こんな時間に。」
堂上は村上に温かいお茶を手渡した。素直に受け取ったが、村上はその質問には答えない。
「……よく寝てますね。」
スヤスヤと幸せそうに眠る郁。いつの間にか綺麗になった1人の女性。
「ったく、いつまでたっても酒の飲み方を覚えやしない。」
手の掛かる部下だと 眉間に皺を作る堂上が、ミネラルウォーターを呷る。
「ん………どう じょう…きょう かん」
突然の郁の声に堂上がギョッとする。慌てて掛けてあった上着を郁の頭に被せて乱暴に押さえ込む。
「「…………」」
みるみる耳が赤くなる堂上に 村上は笑いが込み上げてくる。
「二正、笠原が苦しがりますよ。」
それでも目を覚まさない郁は強者だ。
「二正の傍は安心出来るんですね。」
堂上が何か口を開こうとする前に 村上は意を決した。
「私、堂上二正の事が好きです。ずっと前から。」
堂上が息を飲んだのが分かった。
「でも、二正は笠原の事が──」
「今 ここで言う事は何もない。」
村上の言葉を途中で遮る堂上は、ぐっと上着を抱え込む。郁の頭ごと。
「安心して下さい。だからって私の気持ちを受け入れて欲しいだなんて無茶な事は言いません。ただ──」
大きく息を吸い込んだ。
「ずっと、ずっと片思いしてきて。…今度結婚するんです。だから二正の気持ちを訊いてみたい。我が儘だって分かっています。」
自分に踏ん切りをつけたい。勿論こんなほぼ関わりのない、ただの一隊員である教え子に応える義務は堂上にはない。それは承知の上だ。
「それは──」
村上の流れる涙に答える堂上の声色は、温かい。
「俺の口から言うべき言葉は、お前にはない。伝えるのは…笠原にだけだ。それじゃ、ダメか?」
ああ、堂上の誠実さがよくわかる。想いの深さも。
「いえ、よく分かりました。」
村上は涙を拭って笑みを見せた。
「幸せになれよ。」
「はい。結婚するのは『姉』なんですけどね。」
今日は姉とその婚約者との顔合わせをしてきたのだ。
呆気にとられた堂上に、嘘は言ってませんよ とペロリと舌を出した。あの時の柴崎のように出来ているだろうか。
「堂上二正、笠原のびちゃってません?」
堂上の腕の中に抱えられた郁は、上着にくるまれて目を回していた。
「うわっ!」
慌てて介抱し始めた堂上に 村上は「ごゆっくり」と踵を返して家路につく。家は公園のすぐ裏だ。



翌日、村上は閲覧室に活けたマーガレットの花の水を換えようとしていた。
「わあ、綺麗ね。」
花瓶を抱えた村上に声を掛けたのは郁だ。今日は館内巡回らしい。バディの手塚は別の女性館員が動かしていた棚を運ぶのを手伝っていた。
「これもそう?」
郁はもう1つある花瓶を抱えた。手伝うつもりらしい。
「ありがとう。」
郁の笑顔は眩しい。村上の後ろをついて来る郁にお礼を言った。
給湯室は少し奥まったところにあって、この時間は人がいない。
「私ね、堂上二正のことが好きなんだ。」
唐突に始めた村上の告白に 郁の気配が変わった。
「あ……そう、なんだ。」
教育隊で一緒になった時からの付き合いだ。時には同期会で一緒になるが、そんな話はしたことがなかった。
花瓶をシンクに置き、クルリと振り返ると ちょっと困った顔をした郁が立っている。村上はその手から花瓶を受け取って にこりと笑顔で小首を傾ける。
「あなたにはチビでクソ教官なんだろうけど、私にとっては立派で憧れの男性なんだ。応援、してくれる?」
意地悪な問い掛けに、明らかに狼狽える郁がいる。
「大っキライなんじゃなかったっけ?。いいよね。私が好きになったって関係ないでしょ。」
そんな事を言っていたのは3年も前。
「あら?キライじゃないの?好きなの?堂上二正のこと。」
畳み掛けるように 困惑した郁を問い詰めるなんて らしくないけど、いい加減 振り回される立場はゴメンだ。郁は暫く言い淀む。
「自分の気持ちが分からない、なんてことはないわよね。それとも──」
村上は花瓶から一輪のマーガレットを抜いた。
「占いで教えてあげましょうか?。あなたが、堂上二正を好きか嫌いか。」
戸惑う郁を尻目に花占い。
「スキ、キライ、スキ──」
花びらを一枚ずつ摘みながら占う花占い。茫然と立ち尽くす郁の足元に花びらが散らされる。ゴメンね。
「スキ、キライ、スキ…」
村上は最後の一枚に手をかける。

マーガレットの花びらは奇数の枚数である確率が高い。奇数ならば、「スキ」から始める花占いの結果は自ずと決まっているのだが──村上は始める前に、1枚ちぎっていた。

「あ、笠原はまだ堂上二正のことがキライ──」
「大スキ!」
郁は声をあげた。
「スキの次は、大スキなの。だから。」
真っ赤な顔をした郁が 両手を胸に当てている。
もう想いは隠さないのね。
村上が見てきた堂上と郁の2つの蕾は花開いている。
「だから、あの、応援は出来ない。」
なんて真っ直ぐな想い。
なのに お互いにぶつけない、なんて不器用な2人なの。迷惑な。
「あ、そう。」
さっさと水換えをする村上に、郁はキョトンとする。
「え?あれ?」
勝手にやってなさいよ。
水を換え、マーガレットは活き活きと咲き誇る。
堂上二正の花はまだまだこれから咲き誇るのね。手塩にかけた大輪の花が。



「んー、どれにしようかな。」
村上は いつもの花屋で花を選ぶ。吹っ切れた、長い長い片思いに飾る花を。
「今日は僕に選ばせてくれませんか?」
いつも村上に見事なアレンジメントを手掛けてくれる店員が 声をかけてきた。
「え?」
「あなたをイメージしたフラワーアレンジメントはどうですか?」
村上は初めてこの店員と向かい合った感覚がした。
ひょろっと背の高い、でも優しげな青年だ。
にこりと笑顔を見せて、いつものように手際よく挿していく花々は──清々しい白。
「わ、私、そんな……」
仕上がった 白を基調としたドームに、村上は頬を染める。
「私はこんなに綺麗な白じゃないわ。」
「僕は花の見立てには自信があるんですよ。」
村上は肩をすくめた。
いいえ、私は今多分真っ赤。
この白の花を これから染めていく予感に 村上は頬を両手で覆った。


堂上と郁がまとまる前に、村上の花が染まった なんてことに、なるかもしれない。

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 | 2014年04月22日(火) 00:52 |  | コメント編集

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 | 2014年04月22日(火) 11:13 |  | コメント編集

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 | 2014年04月22日(火) 15:36 |  | コメント編集

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