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2014'04.24 (Thu)

「0に戻した後は」6

こんばんは。
やん、明日はLaLaの発売日。早売りゲットの人の悶えに、悶えております。
が、明日は車検。予約時間と本屋の開店時間が重なり暫しお預け。ギャー生殺しだわ。

更新です。No.107・116~(index5)の不定期連載の続きです。堂上さん、郁ちゃんが自分が王子様であるのがバレたのを知っています。
ここ数日、Twitterのやり取りの中で、某読み聞かせCDの話題が。これは 有名声優さんがそれはそれは色っぽく昔話を読み聞かせてくれるという──なんて如何わし…いや、魅惑的なCDなんでしょう。
私の声の王子様である井上和彦さんがストーリーテラーってのに食い付いたら いろいろ紹介していただきまして、一番のおすすめは堂上さんの声の前野さんが担当する巻。
近くのレンタル屋さんに揃っているものの、CDタイトルがアレ(何せ「官能」)なので、到底レジに持っていく勇気はなく、怪しいおばさんはチラッと試聴してきました。
ちょ、井上さん なんて仕事してるんだ!。
やだ、まんま教官が読み聞かせしてるやん!。
て ところから妄想です。
いや~、普通のCDに挟んで とか、どんなエロ本買う高校生だい、というようなやり取りが楽しかったよ。
今回、前野さんボイスでお読み下さい( ´艸`)。

↓こちらから どうぞ



【More】

「0に戻した後は」6


士長昇任試験前。
堂上による課業後のスパルタ試験対策が続いていた。
出された問題をひたすら書いて覚える。郁の苦手な作業だ。
「うー、頭が飽和するー。」
郁の唸り声に堂上は苦笑する。
「実技はお前の得意分野だからな。これさえ乗り切れば うちの班から新人1人落ちるなんて笑えることにはならんだろう。ほら、手が止まってるぞ。」
パン と頭を叩かれた。
「うう。今年は 子供の読み聞かせですよね。」
「まあ、要するに就学前のガキ20人相手にして、最期まで注目させきったら合格、とかいう感じだ。」
ふーん、と郁は考えを巡らせる。
「むしろ手塚の方が心配だな。」
堂上は軽く顔をしかめた。
「何でですか?」
「あいつの勤務態度を見てたら分かるが、子供になれてない男の典型だ。特に幼児だとからっきしだな。小さい子に何か話しかけられても親に返事してるしな。試験前に相談してくるかと思ったんだが…」
難しい顔で首をひねった堂上に、郁は思わず呟いた。
「分かるなぁ。憧れてる人にカッコ悪いとこを見られたくないんですよ。あたしが手塚だったら堂上教官には訊きたくないもん。」
言い終えてから視線をあげると、真顔の表情でこちらを見ている堂上と目が合って、口が滑ったことに気づいた。
「あ…」
ヤバい。わたわたと慌てて堂上から視線を外し、会議室内を意味もなく見回した。
ここは企画会議室。棚には資料となる本や補修の必要な本が雑多に並んでいたのが目に止まる。
「あ、昔話だ!きょ 教官、お手本に読んでみてくれませんか?。ね、そろそろ休憩時間が欲しいし!」
あたふたと立ち上がって郁が手に取ったのは、表紙の汚れを修復した絵本『鉢かぶり姫』。
「ふむ…」
絵本を渡された堂上が、ほんのり耳を染めた郁を一瞥してから軽く息を吐く。
「分かった。」
郁を椅子に座らせ、別の椅子を運んで来る。そして──
すぐ斜め後ろに座ると 郁を椅子ごと引き寄せ、背中側から抱きかかえるように包み込んだ。
「ひゃ、ちょっ」
「子供の読み聞かせならこの体勢だろが。」
ニヤリと口角を上げた堂上が、固まった郁の前で絵本を開く。椅子の背もたれはあるが、堂上の開いた足の内側にピッタリ密着した状態だ。
「『昔むかし──』」
郁の右の耳元で堂上が口を開いた。
背筋にぞくりと何かが走り、郁は咄嗟に耳を押さえて跳ねた。
「やっ」
声に叫んで振り向くと 至近距離に堂上の顔。息をのむ。
「ほら、お手本聴くんだろ?」
郁の耳から手を外させ 絵本に促すと、改めてその耳に吹き込む。
「『河内の国に 1人の大金持ちが住んでいました……』」
何これ!郁はみるみる真っ赤になった。
教官の声って こんなんだっけ!?
低く甘い声が郁の鼓膜を直接擽るように囁かれる。
あまりのくすぐったさに郁は身を捩る。
郁の耳に触れるか触れないかの距離で動く堂上の唇からは、トーンを落としたやや重い男の声。
柔らかく、しかしガッチリ抱え込まれ、逃げようにも どうにも腰に力が入らない。
──拷問だ。
背が丸まり ずるずると崩れていく郁を、堂上は胸に抱き止める。
「どうした、手本になってるか?」
わざとだ。絶対遊んでる。
郁が文句を言おうと体を持ち上げようとすると、髪が何かに引っかかった。
「った」
郁の髪は堂上が左胸に着けている階級章にからまったのだ。
「ああ、ちょっと待て。」
大きな手で郁の頭を押さえて、柔らかい髪をスルリと解いた。
二正のものは閉じた本で表された1本線の上に、小菊のような花が2つ並んだ意匠だ。
真っ赤な顔を治めたくて、郁は慌てて話題を変えた。
「それいいですよね!お花ついててカワイイの。早くお花欲しいな!」
士長までの階級章は開いた本を意匠した線が増えるだけだ。
「カミツレがつくのは三正からだ。今のお前が欲しがるなんて分不相応にも程があるわ!」
郁に拳骨を落とす。
「いったぁ、カミツレって……カモミール?」
「そうとも言うのか。さすが女だけあって詳しいんだな。」
「ハーブティーやアロマオイルで定番ですよね。甘くて爽やかな香りなんですよ。」
あたし好きなんです、という言葉は咄嗟に飲み込んだ。なんだか横滑りしそうで。
堂上が真顔で郁と向かい合う。
「稲嶺司令の奥さんが好きだった花なんだそうだ。」
郁の背筋が無意識にすらりと伸びた。堂上の凛とした声が続く。
「カミツレの花言葉は『苦難の中の力』」
なんて図書隊の決意にふさわしい言葉だろう。遺された稲嶺には導きの言葉と思えたに違いない。
「あたしもいつか絶対取ります。カミツレ。」
郁の決意に堂上が少しだけ笑って──郁の手を引いた。
「その前に士長昇任試験からだな。読み聞かせの続き…」
つんのめって堂上の胸に飛び込んだ形の郁の耳元で再び囁く。
「やっ、もうダメぇ…。」


会議室の外で小牧が静かに腹を抱えていた。
「どうした、小牧。」
通り掛かった進藤が訝しんだ。
「いえ、中で楽しそうなことしてて……」
小牧は休憩にコーヒーでも誘おうとやってきたのだが。
昔はつっかえつっかえで慣れないヘタクソな読み聞かせだった堂上も、今では妙な技を修得したようだ。さすがストイックな努力家だ。何を手本にしたのかは知らないが。
しかし 相手は限定しておいた方が良さそうだね、と 小牧の上戸は暫く止まりそうになかった。

後日、進藤によって『第一図書館特設読み聞かせCD』の企画書が上がったとか上がらなかったとか……。

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 | 2014年04月24日(木) 00:59 |  | コメント編集

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 | 2014年04月24日(木) 08:19 |  | コメント編集

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