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2014'07.03 (Thu)

「リトル」前編

こんにちは。
順番的にはコメントお礼なんですが(実は割と拘る方)、ちょっと体調戻ってきて時間も取れたものですから、久々にお話をば と思いまして。
堂郁の日常が好きです。うん。

更新です。ムツゴロウ後。レギュラーオリキャラ?の「かなちゃん」は読みやすく漢字表記にしました。No.9・31・72などに登場する女の子(他にも出てるかも?)。「ゆうまくん」も同じく「祐馬」としました。No.31に一緒にいる子です。ああ、使い回してますね…。別に読んで頂かなくても大丈夫です(^_^)ゞ。
↓こちらからどうぞ。



【More】

「リトル」前編


梅雨明けし、毎日夏日が続いている。そんなある日の閲覧室は賑やかだった。
近所の小学校は 今日は早帰りだったようで、閲覧室には未就学児以外にも小学生が来ていた。学校にも図書館があるが 煩いPTAもいる為、どうしても蔵書に限界があるらしい。
もっとも小さい頃から通い慣れている図書館の方が 居心地が良い、との理由もあるようだ。
三年生になる 「佳奈」と「祐馬」もそうだった。

「佳奈ちゃん、祐馬君、こんにちは。」
郁は 堂上とバディを組んでの館内警備で2人を見かけると、閲覧室に入っていった。
幼稚園児の頃からと思えば2人はぐっと背も伸びている。やや 佳奈の方が背は高いが、成長の過程だ。祐馬も随分と男の子らしいやんちゃな顔つきになっている。
「宿題は終わったようね。」
郁は2人のノートを交互に見る。
「うん。漢字練習と、後は音読。読み合いっこすればおしまいだよ。」
佳奈が国語の本を取り出すと、祐馬はぷいと顔を背けた。
「そんなの適当でいいよ。」
ランドセルにノートを仕舞い、さっさと帰り支度をする。
「だめだよ。ちゃんと音読しなきゃ。」
「いちいち煩いなっ。」
佳奈に対するつっけんどんな物言いに郁がびっくりしていると、祐馬は郁に笑顔を向けた。
「それより郁ちゃん、夏休みの自由研究に役立ちそうな本教えて?」
「え?ああ、自由研究ね…。」
郁は俯いてしまった佳奈を気にかけつつ、夏休みに向けて特設コーナーを作ってある棚に案内した。

祐馬は動植物が好きだ。郁が昇任試験の時に企画した木の実のパズルが行事に取り入れられたことで興味を持って以来、植物や生き物に触れるのが楽しいようだ。
「観察日記もいいんだけど……」
郁が膝を折って数冊手に取って選んでいると、隣に立った祐馬はすーと鼻から息を吸い込んだ。
「郁ちゃん、いい匂いがする。」
「ん?ああ、午前中は訓練だったの。シャワー浴びたから……」
郁が髪を耳にかけると祐馬はその髪に顔を寄せて、鼻を埋めるようにしてくんくんと鳴らした。
「ひゃん。」
思わず出た自分の声に驚いて自らの口を塞ぐと軽い拳骨が降ってきた。
「あほう、何て声出すんだ。」
いつもの調子で堂上の叱責がとぶと、突然祐馬が堂上に食ってかかった。
「僕の郁ちゃんに何するんだ!」
「「は?」」
祐馬は真っ赤な顔で怒っている。郁との間に両手を広げて立ちふさがり、キュッと口を結んで堂上をギロリと睨んだ。
「郁ちゃん、僕が守ってあげるから安心してね。」
「え?あの……」
郁は祐馬と堂上の顔を交互に見た。堂上もキョトンとした顔をしている。
「女の子は守ってあげなきゃいけないんだよ!。僕、郁ちゃんをお嫁さんにするんだから。」
そう叫んだ祐馬に 黒いランドセルが飛んできた。
「わっ。」
蓋の開いたままのランドセルから教科書やノートが散乱する。
「わわわ。」
郁が慌てて拾おうとすると、ピンクの運動靴が目に入った。上に視線をあげると、そこにはわなわなと震え た涙目の顔。
「…佳奈ちゃん。」
佳奈は、「祐馬のバカ!」と叫ぶなり、自分のランドセルを背負う間もなく肩に掛けて走り去ってしまった。
静かに絵本を読んでいた幼児達もポカンとしている。
郁は佳奈を追って伸ばした手を 虚しく収める。佳奈は閲覧室を飛び出し、既に姿が見えなくなっていた。
まずい。床の一点には小さな丸い雫が落ちていた。──傷付けた、よね。
郁が視線をさまよわせると、堂上と目があった。こちらも困惑の色は隠せない。
「すまん、あまりの展開についていけなかった。」
堂上の方に飛んできた筆箱を拾って、座り込んだままの郁に手をのばす。郁は自然にその手を取ろうとした。
「ダメ!」
パシッと堂上の手を払い落としたのは 祐馬だ。
「郁ちゃん、小さい男は嫌い?」
咄嗟に年齢のことか見た目のことか 考えを巡らせてしまった。
「え、いえ?」
祐馬は満足そうににっこり笑う。
「僕は優しくて明るい郁ちゃんが大好きなんだ。僕、直ぐに大きくなるからさ、郁ちゃんお嫁さんにするからね!。だから──」
祐馬はくるりと堂上に向き合って見上げた。
「だから勝手に触っちゃだめだからね。」
宣言するだけ宣言すると、テキパキとランドセルの中身を整え、颯爽と帰っていった。
残された郁と堂上は呆気に取られて動けないでいると、閲覧室の入口から上戸を押し殺す声が聞こえてきた。
騒ぎを聞きつけた小牧だったのは 言うまでもない。



「実に潔いプロポーズだったな。」
風呂上がりの一時、堂上と郁は 寮の 庭に出た。火照った体を夜風にあてるのは心地良い時季だ。
「懐いてるとは思っていたが、まさかあんなに立派な宣言をされるとは。案外マセたガキになったもんだ。」
堂上は少々ふてくされながら郁の一歩先に立って歩く。さすがに小学生相手にヤキモチをやくのは大人気ない。年上の異性に憧れるのはよくあることだ。
「ああ言って貰えるのは悪い気はしないんだけど──」
ほら 今までなかったことだし?、とにやける郁に 僅かにムッとした堂上は大人気ないか。
「佳奈ちゃん、傷付いただろうな…。」
長年見ていれば分かる。小さな頃から仲良しの幼なじみ。佳奈は幼いながらも恋している。
「小さくても本気の恋なのに。」
それは祐馬にも言えることか。

堂上は立ち止まると郁と向き合った。頬を染める郁を抱き寄せると、耳の後ろ辺りでスッと息を吸い込んだ。
明るく元気な郁も 夜ともなると色香が漂う。これはガキには分かるまい。肌を重ねたパートナーにしか感じられないシャンプーとは違う微かな郁の香り。
「あ。」
肩を竦めて身じろぎする郁の左頬を、堂上の右手が包み込む。
トロリとした郁の瞳は明らかに自分のものだ。小さなライバルに対抗したくなるのは、堂上自身も自覚している独占欲から来るものだろうか、口元に自嘲の笑みが浮かぶ。
「っと、勝手に触るわけにいかなかったな。」
頬に触れた手を引っ込める。郁の頬には温もりを残す程度には触れてから。
「やっ。」
郁はその手を追いかけて掴み、自ら頬に当てた。
「ん?」
そう目を細め、わざと下から覗き込むようにしてイタズラな視線を絡めてくる堂上に、郁はちょっぴり唇を尖らせた。
「─触って?。」
堂上の厚い掌に唇を触れさせる。
「!」
言わせるように仕向けたつもりが とんだ煽られ方をして、堂上は目を見張った。郁にしたら 漸く知った堂上の温もりに酔いしれたいだけなのだが。
「お前は小学生には刺激が強すぎる。」
「え?」
これで自覚がないのだから堪らない。堂上は頬から後頭部に手を回すと、引き寄せて唇を重ねた。
夜風がサラサラと草木を撫でた。

17:56  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2014年07月04日(金) 00:01 |  | コメント編集

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