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2014'07.08 (Tue)

「願い」

連続投稿です。
昨日の七夕。全然書く予定じゃなかったのですが、つい書き始めてしまいまして。短くとりあえず日付が間に合うようにと計画を立てていたところで父ちゃん帰宅。
ちょっと仕事が一段落したとかで余裕の出た父ちゃんのトークは全開。今朝もね。
てなわけで、遅刻の七夕SSです。
小話、です。
上官・部下の革命中。亡命作戦前に七夕ですよね?←

↓こちらからどうぞ。



【More】

「願い」


当麻の保護が開示されて以降、通常業務も復活した。非常事態であるので、今は上告審を進めつつ、業務も並行してこなしていく段階だ。
郁は堂上とバディを組んでの館内警備に入っていた。
図書館のカウンター横と児童閲覧室には七夕の笹が飾られている。手先の器用な郁が飾り付けに駆り出されるのは毎年のこと。空き時間には柴崎とともに、子供達と作った細工を飾り付けていった。
閲覧室の笹の低い位置には 拙い文字で可愛らしい願い事を書いた短冊が色とりどりで揺れている。
「『ゲームソフトがほしい』『ネズミーランドにいきたい』『あしがはやくなりたい』あ、この気持ちわかるなぁ。」
郁は腰をかがめて覗き読む。世間は良化法だ、表現の自由だ、規制だと煩いが、子供達の世界では夢と希望に変わりはない。
「あ、いたいた『仮面ライダーになりたい』『およめさんになりたい』」
ふふ、と笑う郁に 堂上が声をかける。
「今年はお前、書かないのか?」
いつもなら率先して子供達に混じって書いて飾り付けているのに、今年の郁の短冊は見かけない。
「…今一番は当麻先生の完全勝訴ですよね。」
郁は腰を伸ばして笹を見上げた。
「ここに並べるのは 違うかな…」
そう呟く郁の横顔は、このところの緊張感で すっかり凛々しくなった。何もかもが危なっかしくて放っとけなかった新人ではもうないのだ。
「それにあたし、案外欲張りですからね。今書き出したらきりがないくらい。」
「ああ、さしずめ『ケーキが食べたい』『カツ丼大盛り』とかか?笹がたわみそうだな。」
「ちょ、何ですか!食べ物ばかりって!」
キャンキャン吠える郁を一笑すると堂上は警備に戻るべく踵をかえした。郁もそれに続く。
不審者や不審物がないか 通路を黙々と歩く。並んで歩いていた郁が歩を緩めた事に気付いたのは暫くしてから。
「願い事に書いたら、裁判 勝てますかね?」
その不安気な声に堂上は振り向いた。
長引く警護。そして敗訴になった場合の対策案は 郁の何気ない思い付きが発端になったものだ。妙な責任感、とまでいかないにせよ思うところもあるだろう。
「俺達の仕事を全うするだけだ。」
ポンと郁の頭に手を置けば、郁はそのまま俯いてしまった。
「でも今日は雨だし……」
そう。生憎の天気で、七夕の今夜は星空を拝めそうもないのだ。
「あほう。願い事は信じる者だけが叶うんだ。」
郁の視線を上げさせる。
「そして願う方法も決まりはないしな。今日は星に代わるもんにでも、好きに拝んどけ。お前が1番信じる物に願えば叶うさ。」
今日は七夕。イベントにのっかるのもいいだろう。
「──じゃあ……」
郁はスッと堂上の瞳を見て微笑んだ。
「笠原、堂上教官に願い事しよかな。」
言うなり歩を進める。
「今1番信じれるって言うなら堂上教官じゃないですか。堂上班、皆で教官と一丸になって当麻先生を護り切りますよ!」
息巻いて俄然やる気を見せた郁は、今度は堂上が立ち止まっていることに気が付いた。
「あ、ほら、みんなで教官について行きますよって──」
つい余計なことを口走ったかとあたふたとなった郁に堂上は苦笑いを向ける。
「いや、お前が信じるべきは俺じゃない。」
「え?」
堂上が くいっと顎をしゃくった先はガラス窓。窓の外は中庭の植木が青々と葉を輝かせている。何か見える?。小首を傾げる郁に堂上は後ろから語りかけた。
「今信じるべき相手は自分自身だ。お前ならやれる。班の一員として自信を持て。」
郁は焦点を、窓に映る自分の顔に合わせた。そこにはさっきまでの不安は見受けられない自分の顔。
「この先 何があっても自分を信じろ。お前ならやれる。」
ああ、堂上に認められるとますます力が漲る。窓に映る堂上は郁を見守ってくれている。
「──はい。」
今は甘い願いを唱えまい。郁は気を引き締めた。
「俺が叶えてやれる笠原の願いは─」
郁の心臓がドキリと跳ねた。カミツレデート以来 柔らかな表情を見る度に あらぬ期待をしてしまう。押さえ込むのに精一杯な想いが暴れ出す。
「今夜コンビニで新作デザートとかいうものを奢ってやろう。奮発するぞ。」
「…あ~ね~……」
ちょっと期待したあたしがバカだった。少々ぼやきたくなるのは許して欲しい。でも、勝手に夜のデート決定と胸に刻んでみる。

再び警備に戻る2人にそれぞれ去来する想いは、今はまだ笹に託せない。
「来年は書けたらいいな。」
郁はカウンター横の大きな笹を見上げた。
来館者の願い事が揺れている。

10:52  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2014年07月08日(火) 12:02 |  | コメント編集

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 | 2014年07月09日(水) 08:17 |  | コメント編集

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