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2014'07.19 (Sat)

「リトル」後編

こんにちは。またまたお久しぶりです。
とうとう夏休みに突入です。子供達はバラバラな予定が目白押しで、家族まとまった行動は難しくなりました。
そして、リアル我が家も先月からいよいよ病人を抱えることになり、私も今までのようにはいかなくなりまして。
お話を書いていられる時間って、100%自分の時間なんですよね。まさにバロメーター。ってか、これまでどんだけ時間あったんだって事でしょうか(^_^)ゞ。
「忙しい」という言葉は 本当に忙しい人に申し訳なくて使いたくないのですが、まあ、かなり時間を取られる生活となりまして。ちょっとした時間にTwitterで遊ばせてもらうのが精一杯(やってて良かった)。
少なくとももう少しで部活の役職とは引退なので、それまでは超のんびり更新は仕方無しと、勝手に思っています。
9月にはこちらで遊び始めて丸2年。あら、おかげさまで近々カウンターも25万HITを迎えそうです(o^^o)。こんな山も谷もないお話にお付き合いくださりありがとうございます。まだまだ遊ばせてもらいたいので、宜しければまた覗いていってくださいね。

さて やっと更新です。実は昨夜から男組は一泊旅行に出て家の中が静かだったんです。何とかボチボチ書いてあったのを形に出来ました。
↓こちらからどうぞ。



【More】

「リトル」後編


「先 越されたね。」
ノックとともに堂上の部屋に入って来たのは小牧だ。
堂上は苦った顔をしたが、小さなため息を漏らすに留めた。
「相変わらず あの手の対処は下手だよね。」
クスクス笑う小牧を横目に、堂上はつまみを取り出し袋を開けた。
「マセたガキ相手に本気にするわけないだろが。」
「子供の戯言だと思ってるんだろ。そんな余裕なんてないはずだよ。恋に大人も子供もないんだから。」
小牧が高校生3年生の頃、ガールフレンドと歩いているところに毬江と会い、当時まだ小学2年生だった毬江は らしくない態度を見せた。「ヤキモチ焼いてるのよ。」彼女の言葉に小牧は戸惑ったが、女の直感というものだろうか。10も離れていても互いにライバル認識をしたようだった。
と、後で聞かされたが。
「マセてる、なんて勝手な見立てだよ。足元掬われたら笑い事じゃすまされないから。」
「う……」
まさか郁がなびくことはないだろうが、少なくとも佑真には正面から対峙してやらなければならないらしい。同じ女を好きになったからには やはり30男も小学生のライバルなのだ。
その辺の感覚は 郁の方がしっかり認識出来ている。
「参ったな…。」
「健闘を祈るよ。」
堂上の正直な呟きに、小牧はカツンと缶を合わせた。


数日後の館内業務。学校は夏休みに入っており、図書館も賑やかだ。
堂上は政治経済の専門書架の整理をしていた。昼も近い。
ふと 人の気配がして振り向くと、そこには佳奈が立っていた。
「?」
ここには小学生が読むような本はない。
「笠原か?。あいつなら……」


「あ、笠原。」
カウンターに入っていた柴崎が郁に声をかけた。
「来てるわよ。佑真君と佳奈ちゃん。」
ウインクする柴崎に、郁は眉をハの字に寄せる。
「可愛いウォッチ物件だったんだけどな。意外な展開だわね。」
他人事と思って、柴崎は本当に楽しそうにクスクス笑う。
「笑い事じゃないわよ。こっちは真剣に悩んでるんだから。」
「ここは正直に『お付き合いしてる人がいるからお受け出来ません』かしらね。なかなか経験ないことだろうけど、頑張んなさいな。」
「どーせね!。でも──」
「一途で純粋だからこそ、曖昧なことしちゃ可哀想よ。」
「…ん、分かってる。」
幼い頃から母親と図書館に通って来ていた佑真と佳奈は、郁が幼児の読み聞かせをするイベントで知り合った。母親同士が仲がよいらしく、幼稚園の帰りには何人かのグループで絵本に興じたり中庭で遊んだり。
中でも郁に懐いていた佳奈は事件に巻き込まれた事もあったが、立ち直って仲間と再び通うようになり、今ではイベントの手伝いもするようになった。館内で走り回る佑真を含む男の子達を窘める、しっかりしたお姉さん的なところがある。
そして。
元気な佑真の世話をするのが 特別な事であるのが見て取れた。「まったくもう!」と言いながらも甲斐甲斐しい、見ていて微笑ましい光景だ。
『僕、郁ちゃんをお嫁さんにするんだから。』そう宣言した佑真にランドセルを投げつけた佳奈。
あれ以来 郁は佳奈とは会っていない。
郁は午前の業務を終えて 児童閲覧室に向かった。廊下を歩いていると、先に気が付いたのは本を抱えた佑真だ。
「郁ちゃん!」
屈託のない笑顔の佑真が真っ直ぐとんできた。
「こんにちは佑真君。え、と。佳奈ちゃんは?」
「知らない。あんな口うるさいヤツなんてどーでもいいじゃん。ね、この本の新しいシリーズが読みたいんだけど。」
「口うるさいって…」
男の子にとって注意してくれるしっかり者の女の子に対する認識はこんなものか。
──女の子の機微なんて 分かんないんだろうな。
郁は自分のことは棚に上げてため息をついた。
「僕、いっぱい本読んで 立派な大人になるからね。」
しっかりアピールする佑真に、郁はポンと肩を叩いた。
「あのね──」
その時館内から女性の悲鳴が上がった。
咄嗟に郁が振り向くと、女性のバックを手にした男が書架脇から出て来た。
「引ったくり?!」
男は立ち塞がった郁の姿を見咎めると方向を転換させた。その先には数人の利用者がいる。
「佳奈?!」
佑真の声に視線を素早く巡らすと、男の向かった先には立ち竦む佳奈がいた。
男は手前にいた初老婦人を突き飛ばした。婦人の持っていた本が散らばる。
「邪魔だ どけ!」
佳奈は 本を踏みつけるように走る男の前に屈み込むと、追ってくる郁に気を取られた男は佳奈に躓いてたたらを踏んだ。その後ろ襟を掴んで振り回したのは、横から出て来た堂上だ。郁は 勢い余って転がった男に馬乗りになって確保した。

「怪我はない?」
男を防衛員に引き渡して郁は佳奈に駆け寄った。
佳奈は既に立ち上がっていた。胸には婦人が男に突き飛ばされた際に落とした本。
「無茶しないで。」
郁に抱きしめられた佳奈は素直に謝った。
「ごめんなさい。だって踏まれそうになったからつい…」
「お前 やっぱ、すげー強いな──」
佑真は見た。佳奈が婦人に 自分が守った本を背筋を伸ばして誇らしげに手渡す姿を。そして気付いた。にこやかな笑顔の下、その手が震えていることに。

佑真はカウンターで本を借りた。佳奈も予約していた本を受け取る手続きをしている。
「郁ちゃん。」
佑真は、堂上と並んでいた郁の袖を引いた。
「なあに?」
郁は膝を折ってしっかりと目を合わせた。
「ごめん。僕、もっと守りたい子ができたんだ。郁ちゃんには悪いけど……」
郁はチラリと堂上を見上げてから佑真に微笑んだ。
「そうか、しっかり守るのよ。」
と小首を傾げた郁の頬に ゴメンねと佑真が顔を寄せた。
「おい?」
すかさず堂上が郁の腕を引くのと同時に、佑真は後ろに引っ張られた。
グイッと持ち上げられて 佑真の唇に小さな唇が押し付けられた。
「!?」
佑真の襟首を掴んだままで 佳奈が叫んだ。
「佑真のファーストキスは、佳奈となんだからね!」
怒ったような宣言に気圧されて、佑真はコクコクと頷くしかなかった。
真っ赤な顔した佳奈は、呆然とする佑真を引っ張って堂上の横を通り過ぎる時、堂上を見上げた。
「ちゃんと捕まえておいてね。」
苦笑した堂上に頭を撫でられた佳奈と佑真は、周りの拍手を浴びながら図書バッグを引っ掛けて玄関から帰って行った。


「佳奈ちゃんは俺のところに 佑真奪還宣言に来たんだよ。」
食堂に並んで座った堂上と郁は、残り少ない昼休憩に入った。
「教官のところに?」
郁は生姜焼き定食にのばした箸を止めた。
「俺達の事は知ってた風だったな。」
郁に憧れ 郁を見てきた佳奈の目には、郁の恋の経過も目に入っていたのだろう。
堂上の肩が揺れた。
「どこまで真似てるんだか……」
郁の頬が一気に茹だる。
「や、だって、佳奈ちゃんは知らない筈だし!」
恋の宣言も 強引なキスも。
「郁…」
さて、先を越されたタイミングをどこに持っていこうか。
「へー、どの辺が似てるのかしら?」
後ろからトレイを持ってやって来たのは柴崎だ。
「可愛いカップル誕生の話で持ちきりだよ。衆人環視の中でファーストキスの御披露目とはね。」
小牧も手塚を連れて席についた。
ぐっと黙り込んだ堂上と郁に ニヤニヤと視線を注ぐ。
いったいどこまでバレてるんだか。
「それにしても あんた達 、小学生に負けてるわね。」
「?小学生にもバレバレってところがか?」
手塚の言葉に小牧は上戸に陥った。

小さな恋が 図書館で繋がった。




17:07  |  図書戦  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2014年07月20日(日) 13:28 |  | コメント編集

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