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2014'08.06 (Wed)

「0に戻した後は」8

おはようございます。
昨日はプールサイドからの更新でしたが、暑い篤いと思ってたら この夏1番の気温だったんですね。山なのでニュース発表程はないはずですが、十分異常でしたし。道理で人出が少なかった訳だ。閑散としたプールでチビは元気に遊んでいました。
母ちゃん夕方から頭痛に悩まされてたのが納得出来ました。足はバケツに突っ込んでたんだけどなぁ。
今日も猛暑の予報。雨の地域と足して2で割ればいいのに。

更新です。不定期連載の0の教官です。郁ちゃんが王子様の正体を知った事を知っています。
が、どうも攻め方が…… 何だか通常堂上さんにしかならなくて動かないんですよね、私が書くと。
ま、いいか(^。^;)。
↓こちらからどうぞ。


【More】

「0に戻した後は」8


堂上班と たまたま特殊部隊事務室に休憩に来ていた柴崎の5人は、コーヒーを口にしながら談話していた。
備え付けの小さな古いテレビでは それまでのワイドショーから切り替わって爽やかな飲料水のCMが映った。
「おお、折口がこの香坂大地と今頃会ってるはずだ。」
そう言いながら隊長室から出て来た玄田がどっかりとソファーに座った。テレビ画面には輝くような笑顔の俳優・香坂大地が 喉を鳴らして飲料水を飲み干す姿がながれている。
「えっ、折口さん 取材でですか?!いいなー!」
サイン色紙をオークションにかけたら、などど算段する柴崎に 班員は呆れ顔だ。
「でも香坂大地、『新世相』に取り上げられるだなんて大出世だなぁ。」
「何だ、お前もファンなのか?」
ジャーナリズムを謳う世相社で特集本を出版されると聞いて 素直に感心する郁に、堂上は少々遠慮がちに訊いた。
「そりゃ 普段鬼教官に絞られてたら 観て楽しむのは優男になるんじゃないの?」
横から小牧のからかい口調が飛んできて 堂上の眉間にしわが寄る。
「や、そんなんじゃなくて、彼の出てるドラマや映画はハズレがないし、フツーに実力派だなーって思ってるだけです!」
「ふーん、よくチェックしてるみたいだな。」
不機嫌そうに言う堂上の様子に小牧はクスリと笑った。
「笠原さんってどんな男の人がタイプなの?俳優とかに喩えたらさ。」
そういえばそんなに突っ込んだ話はしたことないよね、と小牧は身を乗り出した。
その質問に郁は些か動揺した。俳優?
コレまで王子様の存在だけを追っていた。顔は覚えていなかったが、あの背中を思い浮かべるだけで 不思議と顔を想像することはなかった。いや、カッコよかったとは勝手に思っていたが、具体的に俳優とかに当てはめたことはない。
オマケに今では その王子様が堂上だと知っているのだ。
ついチラリと堂上の顔を盗み見る。
香坂大地はすらりとした高身長で、その爽やかな容貌でアイドル的人気のある新進気鋭の実力派俳優だ。若い女性は皆キャーキャー黄色い声をあげる。堂上とはタイプの違う男性だ。いや、堂上も決して見目は悪くない。どちらかといえば──郁の頬がうっすら染まる。
しかし堂上はまるで聞きたくないとでも言うように顔を背けていた。

「香坂大地は広い年代の女性層に人気だからね。学生でも頑張って買おうとする子がいるでしょうから売れるだろうなあ。」
そう分析するのは小牧だが、手塚は指摘する。
「しかし買えない層は図書館から持ち去りや切り取りに走る可能性がありますね。警備は強化しないと。」
「書店にも注意喚起が必要だな。」
「業務部でも対処を提案しなきゃ。」
堂上や柴崎も話に加わって 半分会議のようになっている。
郁がぐるぐる考えている間にいつの間にか話が進んだようで内心ホッとした。
価格は学生の小遣いでも手に届く設定にしてあるらしい。検閲損害の多い世相社が、利益重視と万引き被害を軽減させるためだ。
「じゃあ図書館印が入ってるから図書館では盗られる心配はないですよね。」
笑顔で当たり前のことのようにそう言った郁を 男性陣は怪訝な顔で見た。
「え?だって ホントに好きなら好きな人の出すものはちゃんと手に入れたいじゃないですか。他の人が何度も手にした本とか 印が押してあるような本より新品がいいもの。だから、図書館で盗る人なんていないんじゃないかなぁって。」
「お前──」
郁の言葉に堂上が何か言いかけてから右手で口元を覆った。
「?」
キョトンとする郁と顔を逸らした堂上を見て、小牧は目を細めた。
「笠原さんは 時々抱き締めたくなるくらい可愛いよね、堂上。」
これにはさすがに郁はおののいた。
「ちょ、何言うんですか!」
「それでも手に入れば何でもいいって奴が後を絶たないんだ。みんなが笠原さんみたいないい子ばかりだと楽なんだけどね、堂上。」
堂上はいちいち振ってくる小牧を睨んだ。
「んなこと分かってるからいちいち言わんでもいい!。書店と図書館、双方それなりの警戒が必要ということだ。以上!」
にやにやと笑う玄田と柴崎を振り切って、堂上は事務室を出て行った。
残された郁は顔を真っ赤にして固まるしかなかった。



その香坂大地の特集本は「床屋」という違反語をめぐって、メディア良化法の問題点が浮き彫りになる展開をみせた。
そして、『違反語』に知らぬ間に指定されていた床屋である理容生活衛生同業組合自身が、違反語撤回を求めて良化委員会を提訴したのだ。
図書隊以外でメディア良化法と戦う人達。
郁は皆とこのニュースを見て、たまらず事務室を飛び出していった。
「笠原?!」
躊躇なく追いかけた堂上は、郁の居場所を難なく見つけた。顔を伏せて座り込んでいる郁の隣に腰を下ろす。
「……あの人たち、勝てると思いますか?」
国を相手にした訴訟は長引く可能性が高いため、この先どう成果が得られるか分からない。
しかし郁は嬉しかったのだ。泣くほどに。
図書隊の戦いには意味がないなんて 手塚慧にいわれていただけに。こうして検閲に反対するために動く人達がいる。その事が自分達の存在に意味を持たせてくれたようで。

嗚咽を堪えながらも 手塚慧とのやり取りを含めて説明をし終えると、バカな事を真に受けたことを 真っ向から怒鳴られた。
そして。
「──抱きしめても、いいか?」
「ふぇ?」
郁は膝を抱えて俯いていた顔を上げた。郁の目に映ったのは、目を細めて口角を片方だけ上げ 複雑そうに覗き込んできた堂上の顔。
今の今まで怒鳴っていたくせに、急に声色を変えてきた。
ついキョロキョロと辺りを見回した郁は、ちょっと姿勢を正して頬を染めた。
「ど、……どぞっ…。」
堂上の腕がふわりと郁の肩を包んだ。がっしりした腕のはずなのに、どうして柔らかく感じるんだろう なんてのんびり思考を巡らせていると、堂上は郁の肩に額を押し付けてきた。
首筋を堂上の髪が擽る。
「お前は───可愛いこと言うな…。」
「か、可愛いだなんて!どこがなんですかっ」
慌てて離れようとする郁は、そう呟いた堂上に 今度はがっしり押さえ込まれていた。
「俺は、香坂大地のように笑顔が似合う男でもないし 優しくないのも自覚済みで お前より背も低い──ただの口うるさい上官だから、理想には程遠いかもしれんな。」
「っ……」
郁は目を見張った。
抱きしめられていて堂上の表情は分からないが、きっと。
「─ヤキモチ、妬いてますか?」
「…悪いか。」
「い、いえ。」
こんな自分にヤキモチを妬いてくれるのか。
出来の悪い部下で、勝手に王子様を追い掛けてきた大女に。
郁の気持ちが育つのを待つと言ってくれた堂上は、決して郁を急かせたりしない。訓練や仕事では厳しく鬼のようだが、優しく見守ってくれているのは感じる。大事に──されている。
郁はこの堂上の じんわりと与えてくれる温もりが嬉しかった。そして、今の自分の気持ちを伝えたいと思った。堂上にも自分の温もりを感じてもらいたい。与えられているものが どれだけ自分の糧になっているかを知ってもらいたい。
時々意地悪く攻められては あたふたするばかりの自分に、こんなヤキモチを妬いている堂上が 可愛い。
そう思うと自然に笑みが零れた。
「ふふ。」
「笑うなよ。」
不機嫌そうな声が肩から響いた。
「別に香坂大地が理想だなんて 思ってませんよ。」
堂上の腕に力が込められた。
「教官も笑顔が似合います。」
ギャップ萌え、なんて 以前柴崎も言っていた。堂上の時折見せる笑顔にどれだけ心臓が跳ねたことか。
「テキパキ仕事こなしているとことか」
背筋がのびていて見とれる背中も。
「えっと、十分カッコイいと…思います。」
僅かに堂上が身動ぎする。
「そんな教官と、あの人達のインタビューが見れたのが嬉しいんです。歴史が 変わるかもしれないんですよね。」
郁は目を閉じ、堂上の髪に頬を寄せた。
「身長なんて、あたしが大女なだけで…」
堂上の背中に腕を回そうとした。
「だから!」
バッと堂上が体を離した。顔を背けた堂上の耳は赤い。
「そんなこと言うなって。」
そんな、って何か変なこと言っただろうかと首を捻るが、何よりも堂上の抱擁がなくなったのが寂しい。回そうとした腕の行きどころがなくなって宙に浮いた形だ。
「ほら、帰るぞ。」
何かを振り切るように差し出された手に その手で掴まれば、グイッと立たされた。
手は離されることなく引かれて歩く。
──もう少しだけ、抱きしめててもらいたかったな。
そんなことを言ったら 多分………

郁は広い男の背中を見つめた。もうただの上官とは思えない背中を。


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 | 2014年08月06日(水) 12:02 |  | コメント編集

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