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2014'09.01 (Mon)

「月」(one titles 提出作品)

あ、 9月になってました。
夏休み終わってからというもの、天気が不安定でじめじめしています。あの夏はどこに行ったんでしょうか。
月が変わって、お題サイトの更新です。
今回は早くから書く話が決まってたものの、実はオリキャラ堀田二正が絡むお話の予定でした。で、まずは「ヒグラシ」を書いてアップしたんですが、さて、別サイトにいきなり堀田さん出したって 話がわからんだろが、と。で、別の話にしました。
時期は恋人期です。
その予定してた話は──こちらを書いてる内に、途中のエピを忘れちゃたので←?また後日。(メモしないから書かないと忘れちゃう鳥頭)

↓こちらから どうぞ


【More】

「月」(one titles 提出作品)


郁は図書館の書架整理をしていた。
その閲覧室の一角に見知った顔。よく図書館に訪れる中学生の女の子だった。
熱心に本を読んでいるかと思うと 何か考え込む。調べ物でもしているのかと思えばそうでもなさそうで。
今の時間は利用者も少なく、声をかけてみることにした。
「こんにちは。いい本があった?」
声をかけられて漸く郁に気付いた少女は、キョトンとした後で苦笑しながら答えた。
「あ、うん。考え事・・・かな?。」
手元にあるのは一冊の絵本だ。彼女は読書家で中学生になってからは長い物語を読んでいることが多い。
「ちょっと悩んじゃって。それで 随分前に読んだ本を思い出したから読み返してみたの。」
パラパラと開いて見せるその本は、児童向けの挿絵の多い 文字の大きな物語だ。その中に印象深い 大きく描かれた『月』の挿絵。
「よく新月に願い事すると満月に叶うっていうんだけど──」
「え?、流れ星じゃないの?」
郁は首を傾げた。
「ん それもあるけど、月でもそんな力があるんだって。でもこの本のお月様はね•••」
少女は満月の挿絵に視線をおとす。
「話を聞いてくれるの。悩んだり 落ち込んだりした時、満月に語りかけると優しく答えてくれるのよ。」
月夜を見上げて溢れる気持ちを呟けば、淡い光にのって月と会話が出来る。
「主人公の1人がね、私と同じことに悩んでお月様に話してたのを思い出してさ。それで改めて読んでみたんだけど──新しい発見とかあるよな~って感じながら読めた。うん、なんか元気出てきた!」
「あ、分かる。自分の経験値が上がると 読んで感じるものが変わる事ってあるよね。そうか・・・悩み事は?」
「へへ、ま、•••私もお年頃だし?」
ぽっと頬を染める少女を見て 郁は微笑んだ。
人には言えないことも お月様には告白出来る、そんな事もあるよね。こっそり笑い合えば 心が軽くなった、と少女は帰っていった。


今日の残りはデスクワークだ。
午後から堂上は 第二図書館に会議に出ていた。
空席の机に時折視線を向けながら、郁は打ち込み作業を淡々とこなしていった。
このところの堂上は忙しい。
夜も敷地内を一緒にぶらぶら歩けるのはいい方で。それよりも遅くまで残業の堂上の体調が気遣わしい。当然小牧らの補助があるのだが、玄田隊長に何かと重宝がられている堂上の仕事量は今がピークだ。
『おやすみ』の短いメールが隙間を埋めてくれるのだが、かえって寂しいことも。
ぶんぶんと頭を振って邪念を払う。
自分も頑張らなくちゃ、と 新たなデータに手を伸ばす。少しでも負担を減らさなくては。
そんな郁に、小牧が声をかけた。
「堂上の帰りは夜になるみたいだよ。今日の日報は俺に出して、笠原さんは定時であがるといいよ。」
「・・・はい。」
今日も遅くまでかかるのか、堂上のため息が聞こえるようだった。


柴崎と寮の夕食を食べ、部屋に戻るが落ち着かない。メールの着信はなりを潜め、何とは無しにテレビを見る。
片時も携帯を離さない郁に、柴崎はポツリと零した。
「しょっぱいのが食べたいわねぇ。」
「んー、」と郁は手近な籠を探るが、中はチョコレートやチーズ系のお菓子しか入っていない。
「あたし、買ってくる。柴崎は?」
のっそり立ち上がった郁を見上げた柴崎は、ひらひらと手を振った。
「今 ランチのお店を探してるから。」
タウン誌をペラペラ捲りながら頬杖をつく姿は暇そうなのだが、郁もぶらりと1人で歩きたい気分なので 強く誘うこともなく財布を持って部屋を出た。

夜風は気持ちいい。
『夜中に1人で出歩くなよ。』
そう言ってくれるのは堂上くらいのもので。戦闘職種を盾にするのは彼女の立ち位置では良くないこととは分かってはいるが、今日は満月。辺りは明るい。
コンビニでいくつかお菓子を見繕った帰りに、いつもの公園に寄っていく。曇りなく明るい月は木々の色を濃く地面に落とす。
郁は足を止め、その月を静かに仰ぎ見た。
『悩んだり 落ち込んだりした時に語りかけると、優しく答えてくれるのよ。』
別に悩んでるわけでも落ち込んでいるわけでもない。でも。
「あたしって 贅沢に慣れちゃってるんだろな。」
ぽすん、とベンチに腰を下ろした。

毎日のように顔を合わせている。
しかしソレは仕事の顔で。
付き合い始めは慣れなくてドキドキした堂上の甘い表情も、今となっては何よりも欲してしまう自分がいる。時々予想以上のモノを投げられては撃沈させられたりもするが、残念ながら今はお預け状態だ。
「あたしばっかりが好きだからかなぁ~。」
堂上が忙しくしているのを目の当たりにしている。その中で班員の指導(主に自分だ)も怠らない。堂上のストレートな物言いは、無神経で雑なようでいて、しかし意外に細やかな面もありマメな性格だ というのは知っているから、十分気にかけてもらっている、はず。
だから──
「今、会いたいって言うのは 我が儘なんだよね。」
ぽつりと零してから、ふと夜空に目を向ける。しんと静まりかえった公園には、さわさわと風に揺れる木々の音がする。月を見ていると 虫の声も遠くに聞こえるだけ。
「でも やっぱり 会いたいよ。」
ねえ、お月様。
「教官の手は大きくて安心するんだぁ~。」
輝く月は まるで『もっと話したら?』と促しているようで。
「今 その手を繋げたらなあ。」
ねえ、聞いて。教官は案外手を繋ぐのが好きみたいなんだよ。
「ギュッとしたいし、キ、キスもしたい。」
大胆なことも口にする。
「んで、『かさはら』じゃなくて『いく』ってもっと呼んで欲しいし。」
課業中に時々言い間違えそうになって慌てる教官は可愛いの。
「あとは、膝枕とかしてあげたいな。」
疲れている彼氏を癒やしてあげる。そんな彼女に憧れる。
それからね。
次々と思いつくまま零す言葉は 月の光に吸い込まれていくようで、まん丸な月が 柔らかく微笑んでいる。


「こーら、いーくー!」
ゴツンと突然拳骨が降ってきた。
「イッターイ!」
頭を抱えて振り向けば、いつの間にか鬼の形相の堂上が立っていた。
「あ、教官。」
郁は慌てて立ち上がった。
「今 帰りですか?」
「ああ。まったく隊長の無茶振りには悩まされるな。」
連日の残業で疲れの色が濃い。大きくため息をつく堂上に 郁は労いの笑みを向けた。
「コレで一段落ついた。むちゃくちゃ詰め込んで来たからな。だから、」
堂上はニヤリと笑った。
「無理やり休みをねじ込んできたぞ。」
「うっそ•••」
郁はポカンと口を開けた。
「小牧や手塚にも迷惑かけたしな。随分手伝ってももらった。郁も頑張ってたそうだしな。小牧から聞いてる。」
だから、と堂上は郁の腕を掴んで引き寄せた。
「外泊届け、忘れずに出しとけよ。」
耳元で囁かれて 郁は真っ赤になって頷いた。
「それにしても、いったい何時だと思ってるんだ。こんな所で女1人──」
堂上は思い出したように説教モードだ。
「あ、いえ。お月様と•••」
「お月様?」
仰ぎ見ると、月は大きくて丸い姿で2人を照らしている。
「「・・・・」」
暫く一緒に無言で月を眺めていた堂上は、そのまま動かない郁に視線を戻した。郁の睫毛が月明かりに照らされて頬に影を落としている。こんな時の郁の表情は誰にも見せたくない衝動に駆られる。
「教官?。」
いつの間にか自分を見ていた郁に少々慌てて 手を取って歩き出した。
(あ、手・・・)
郁は求めていた手の温もりに頬が緩む。
「満月の夜に1人で出歩くとな──」
堂上は郁を木の幹に押し付けた。
「こんな風に狼に喰われるんだぞ。」
堂上の噛み付くようなキスに襲われた。それは餓えた狼のような激しいキス。堂上も郁をずっと求めていたのだと伝えて来るようだった。
郁は翻弄されながらも、外泊したら膝枕をしなくては と思考した。

今夜は満月。2人を照らす月明かりは真昼のように輝いている。



「しょっぱいのが食べたくなったでしょ。」
部屋に帰った郁に、柴崎はしれっと買ってきたばかりのポテトの袋を開けて差し出した。
「•••うん。」
そう小さくポテトをかじる真っ赤な顔の郁を眺めながら、柴崎は強めのお酒に手をのばした。

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 | 2014年09月02日(火) 00:29 |  | コメント編集

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