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2014'09.15 (Mon)

「落し物」

こんにちは。
3連休です。が、特に変わりのない我が家です。
リアルでは 日々家族の送迎に明け暮れて、せっかくの2周年を何の準備も出来ずに迎えてしまいました。
2年前、受験生の長男のマイペースさに辟易して始めたブログ。現在は長女が受験生。やってることは変わりませんが、また状況の違う受験生の母・・・・と長男の嫁。
図書戦への熱は冷めずにここまできました。更新が滞ってしまいがちですが、もう少し遊んでいられそうです。
で、数日前から パソコン画面のテンプレートってのを変えてみました(,,•﹏•,,)。
バナーと似たお花に合わせてみました。庭に植えるなら トマトやキュウリの野菜派なんですが、「一花」ですからね。ブログの上ではお花を咲かせましょう(*^_^*)。

更新です。上官・部下期の県展辺り。?と思っても最後までお読み下さい←。
↓こちらからどうぞ。



【More】

「落とし物」


乾燥する季節になった。

「やっと過ごしやすくなったね。」
今年の夏は暑かったが、季節は確実に秋になる。郁は柴崎とドラッグストアで季節商品を選んでいた。
「これから館内は乾燥するのよ。これなんかどう?」
柴崎のアドバイスをもらいながら、スキンケアのコーナーで 郁は気になる商品を手にした。
「あ、この香り いいかも。」
ハンドクリームのテスターを手に擦り込む。
「笠原、こっちにあるわよ。」
フェイシャルコーナーにリップコーナー。売り場を廻る女の買い物は賑わしい。各自満足のいく品物が購入出来たようだ。
「きつ過ぎず、ふんわりした香りがいろいろみつかったな。」
「教官も気に入ってくれるといいわね。」
耳元で囁く柴崎がクスリと笑った。
「な、なんでっ。関係ないし!」
プイと、背けた郁の顔は不自然に赤い。
最近何かと堂上の話に結びつけては郁の反応で遊ぶ柴崎に困惑する。いや、一々反応してしまう自分自身に困惑しているのか。郁は火照った顔を隠す為に 鞄を抱えてスタスタと先を歩いた。


今日の郁の館内警備のバディは堂上だ。不審者・不審物の有無を隈無く確認する。
カウンターには柴崎がいた。
「あ 教官。先日の落し物の持ち主、わかりましたよ。」
「犬のマスコットがついた小銭入れ、だったか?」
「...まあ、クマでしたがね。よく来館されてるお婆さんので、お孫さんの手作りだったらしく 見つかって大変喜んでいました。」
「持ち主の手に戻ったのならいい。あの手の落し物は落とし主不明のままになることが多いからな。」
カウンター横に設けている箱の中には、ハンカチやキーホルダーといった小物が寂しく置き去りにされている。
「拾って頂いた方に くれぐれも宜しくお伝え下さいとのことでした。」
小銭入れだ。多少の小銭は入っていたが、拾い主は隊員だ。謝礼を受け取る事もない。もっともそんな金額でもなかったが。
柴崎の伝言に 堂上は軽く手をあげて応えると、郁と共に警備に戻っていった。

「良かったですね。とても使い込まれていて、大切なものみたいでしたから。」
持ち主が見つかって 郁も嬉しそうな顔をする。
小さな幸せを喜べる、そんな郁の素直さが微笑ましい。元々机の下に落ちていたのを見つけたのは郁だった。
「でもほら、やっぱりクマだったんですよ。」
マスコットを拾った当初、犬かクマかで軽く議論した経緯を思い出して郁がクスクス笑う。
「微妙な顔をしてただろうが。」
「いーえ。どー見てもクマでした。」
休憩も近い時間、たわいもない軽口が楽しい。
「ムキになる教官も可愛いですけどね。」
つるりと出た言葉に郁自身が赤くなって狼狽える。
「あほう。」
堂上は郁の頭をポンと叩いて警備を続けようと促すつもりが、珍しく指に髪が絡まった。
「あ。最近乾燥気味で。ちょっと整えてきます。」
簡単な身だしなみ道具はポケットの中だ。郁は慌てて近くの洗面所に駆けていった。
「ん?」
郁を見送った堂上の足元に転がってきたのは、1本のリップクリーム。



《郁ver.》
洗面所の鏡の前で、郁は髪を櫛で整える。
「トリートメント、マメにしなくちゃ。」
外の訓練で埃を浴びる郁の髪は痛みやすい。
「教官の指が引っかかるだなんて、女子としてサイテー。」
鏡の中の自分を叱咤する。
「あ。」
唇の荒れも目に付いた。せめて、とポケットを探る。
「?やだ、ない。」
しのばせておいたリップクリームが見当たらない。
こんなガサツな女じゃ、教官呆れるだろな。
ちょっと肩を落として堂上の待つ廊下に出た。

「お待たせしました。」
櫛で整えてきた栗色がかった郁の髪は艶やかだ。
「乾燥すると絡まりやすくて・・・」
つと 堂上の手の中のリップクリームが目に入った。
「あ、道理でなかったんだ。落としちゃってたんですね。」
「お前のか。」
ポケットから櫛を取り出しながら場を離れた時に落としたのだろう。郁は受け取ったリップクリームの蓋を開けて繰り出した。
人気のない奥まった通路だ。郁は堂上から顔を逸らして、すっと唇に滑らせた。
「この時期必需品なんですよね。」
天窓から降り注ぐ陽の光に照らされて、郁の唇はふっくらと輝いて見える。
「じゃ、休憩までもうひと仕事ですね。」
ポケットにリップクリームを仕舞いながら、郁は堂上に顔を向けた。
「・・・遺失物法によると──」
堂上は郁の細い手首を掴むと柱の陰に引き込んだ。
「拾得者は2割までの報労金を請求出来るらしいぞ。」
「ほ、報労金って・・・」
堂上の顔が近すぎて、郁は視線を外した。
「これで代用してもらう。」
クイッと郁の顎を捕らえると、その艶やかな唇に堂上は自分の唇を重ねた。
「っん!?」
突然のことに郁は抗おうとするが、堂上は郁の手首をがっちり掴んで離さない。柱に押し付けてキスを堪能した堂上は、最後にペロリと郁の唇を舐めた。
「甘いな。」
崩れ落ちる郁の前で、堂上は不敵な笑みを浮かべた。


《堂上ver.》
洗面所に駆け込んだ郁が ほどなく帰ってきた。
「お待たせしました。」
はにかんだ郁の笑顔は眩しい。
堂上は、整えられた郁の髪に 再度手を伸ばしたくなるが、右手にはリップクリームの落し物。
堂上の手に視線を落した郁の目が パッと輝いた。
「あ、道理でなかったんだ。落としちゃってたんですね。」
「お前のか。」
郁は 堂上から受け取ったリップクリームを、大切そうに手のひらに包んだ。
「はい、先日柴崎と買い物して。とっても使い心地のいいリップクリームなんですよ。教官もどうですか?」
「あほう。そんなもの つけていられるか!」
真冬に 荒れて切れてしまう状態になるまで、特段手入れなんてすることはない。しかも使うとしたら安価な薬用リップくらいのものだ。
「荒れちゃう前にケアした方がいいですよ。」
郁は手元で温めたリップクリームを繰り出すと、軽く開いた自分の下唇に優しくのせていった。
その仕草に見てはいけないものを感じ、堂上は視線を逸らした。普段快活なイメージの郁から ほのかに柔らかく甘い香りが漂ってくるようだ。
逸らした視線を戻すと、塗り終えた郁が リップを片手に堂上を見詰めていた。
艶やかな唇が妖しげに動く。
「教官。」
郁に魅入られた堂上は1歩も動けなかった。
「拾っていただいたお礼です。受け取ってください。」
郁は前に進み出ると、目を 見開いたままの堂上に構わず唇を押し付けた。
「!?」
状況の飲み込めない堂上は、そのまま郁のキスを受け止めた。郁は堂上の唇に自分のそれを擦り付けるように角度を変える。
「甘いでしょ?」
僅かな隙間から郁が吐息とともに囁いた。堂上の痺れた脳が、右手を郁の背中に回させた。

・・・・・・・・

「ぎゃっ!」「うわっ!」
飛び起きた場所は、それぞれ寮の自室のベッド。


郁はこのところ 寝る前のスキンケアを熱心に施した。強い日差しに晒された郁の肌のダメージに、「特別よ。」と柴崎が高級な化粧水でパックしてくれたのだ。
天然オイル配合とあるハンドクリームを擦り込み、甘い香りのリップクリームをのせた。
「あんたも色気づいたものよね。」
柴崎の一言を極力スルーして早めに就寝したのだ。
飛び起きた声や振動で柴崎を起こさなかったか確認する。カーテン越しから聴こえる微かな寝息に安堵した。頬は熱く、再び眠りにつくのは無理そうだ。
とんでもない夢に、郁は頭から布団をかぶって羞恥に身悶えた。


堂上はすかさず右手で口元を覆って辺りを見回すと、大きく吸い込んだ息を 長く長く吐き出した。
なんて夢だ。
昨日の警備バディだった郁の唇は、いつもより濡れて見えた。公共の場での警備だ。身だしなみにはある程度気を使う。普段化粧っ気のない郁も、ごく簡単に化粧だってする。そこは女だ。
以前より郁を意識するようになっている自分に自覚がないわけではないが、まさかこんな夢をみるだなんて。
堂上は早朝から頭を抱えて自嘲した。


「おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
少々ぎこちない朝の挨拶は、すぐに訓練に向かう準備で流された。
「笠原、武器庫に行くぞ。遅れるな。」
手塚に急かされて、郁は慌ててカバンを椅子から落としてしまった。
「わ。」
中からこぼれ落ちたのは、リップクリーム。転がった先は──堂上の足元だ。
「「・・・・・・・・」」
堂上によって拾いあげられたリップクリームは、無言で郁の手へ。
見詰め合った時間は一瞬か。

夢の始まりは どこからだったのか はっきりしない。


※各ver.は、それぞれの夢、としてお読み下さい。

16:04  |  図書戦  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2014年09月15日(月) 23:41 |  | コメント編集

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 | 2014年09月18日(木) 22:42 |  | コメント編集

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