All archives    Admin

07月≪ 2020年08月 ≫09月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031

2014'10.01 (Wed)

「あした」(one titles提出作品)

え?9月は30日までだったんですね、な 英香です。
先日は初のお茶会にご参加いただいた皆さん、有り難うございました。朝の4時まで、楽しい時間を過ごせました。
ということは、本日昼間にも お茶会開催です。入り口貼るのを覚えたので、こちらの記事にも入り口作ってみますね。

時間になったら↓この辺に出現します。

Σ(゚д゚lll)こちらには出し忘れてました。
お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました(,,•﹏•,,)

さて、期間限定サイトも最後の更新です。珍しく余裕を持って提出したら、ケロリ忘れて 只今何だか同じようなお話を書いてます←。
書けば中断 の毎日でなかなか更新できていなくて寂しかったりもしますが、コメントいただいてたりすると励まされます。有り難うございます。お返事は後日(∗•ω•∗)。
それでは久々の更新は、回想と郁ちゃん告白時です。
↓こちらからどうぞ。


【More】

「あした」(one titles提出作品)


「こちらは関東図書隊だ!」
高らかな宣言に郁の心が震えた。

広い背中だった。
初めて出くわした良化特務機関の検閲に 無謀にも逆らい抗った郁が見たのは、正義の味方の背中。
良化隊員に投げつけられた恫喝は、普通の女子高生である郁をひどく震撼させた。それでも守りたい本があったのだ。それは突き飛ばされた郁を支えた青年によって取り戻された。
「万引きの汚名を着てまでこの本を守ろうとしたのは君だ。」
青年の言葉にほどけた涙腺で視界が阻まれる。今さら思い出される恐怖に声が詰まる。
怖かった。ショックだった。不安だった。心も体も震え上がった。
でも。
守った本を手にして湧き上がるこの気持ちは何だろう。
嬉しい。ふわふわして、夢のようでいて、──それでいて、心強い。
抑えきれない涙と表しきれない感情は言葉に出来なくて、お礼が言えないでいた。
そんな郁の頭を、青年の優しい手が軽く叩いた。その温もりが心強さを感じられる理由なのだと直感した。
店を出て行く青年に 郁は震える声を精一杯しぼりだした。
「明日!。・・・明日お礼に──」
行きますから!
一瞬、青年の足が止まったように見えた。
伝わったかな。明日、必ずお礼を言おう。郁はこぶしで涙を拭った。


結局捻った足は腫れ上がり、翌日は病院に行ったりでまともに歩けず、郁が書店に顔を出せたのは数日後だった。青年に手渡された カバーの破れたその本を持って書店に出向いた。
「おじさん!この前の図書隊の人、分かる?」
馴染みの店長だ。突然の出来事だったとはいえ、青年の名前を聞くどころか 顔の覚えもないだなんて一生の不覚!。郁は店で本を並べていた店長に詰め寄って訊いてみた。
「いや。市立図書館に見計らい図書を納入する時に彼の姿が見当たらなくてね。わたしも聞いてみたんだが、どうやら水戸の図書隊員じゃなかったらしいんだよ。あんな手荒な検閲に対抗出来ない我々を助けてくれたんだから、改めてお礼を言いたいと思ったんだが。残念だよ、郁ちゃん。」
「そんなぁ・・・」
郁はその足で市立図書館に行き、カウンターの館員に必死で尋ねた。
「この前の書店であった検閲で、見計らいをしてくれた図書隊員さんに会わせてください!」
しかし いないという。食い下がるが『見計らい』の言葉に館員の表情が曇る。やがて奥から出て来たがっちりした体型の男性館員が、固い表情で郁に言った。
「そんな隊員はここにはいない。諦めて帰るんだな。」
「じゃ、どこに行けば会えるんですか?。あたし、お礼を言いたいんです!助けてもらったお礼を!」
「お礼だぁ?」
館員は郁の目を覗き込んで何か言おうとしたが、思い止めた様子だった。
しつこいほど頼み込んだが、最後はなんだか追い立てられるようにして図書館を放り出された。
「どうして会えないの!?」
郁は持ってきた本を胸に抱えて決心を固めた。
あの日、あの カッコよくてステキで凛々しくて頼もしかった図書隊員のようになりたいと思った。あの人みたいに理不尽に取り上げられる本をこの手で守りたい。
そして、あの人と同じところへ行く。
「決めた!」
郁自身の明日を目指すために。


---------


「あたし万引きしたから!盗った本と一緒に警察行くから!」
凛とした声に堂上は射抜かれた。その清廉かつ捨て身な少女の宣言は、狩られる本を守るがため。

それは検閲に対抗できる権限を持っていながら見過ごそうとしていた自分に 何かを訴えるような叫びにも聞こえた。
突き飛ばされた少女を支えたのは反射だった。小さな勇気を持っただけの少女の肩は、青ざめた表情が精一杯の気丈さであることを物語るように ひどく華奢で。その瞬間にこみ上げてきた不思議な感覚は何だったのか。
堂上は後先考えることを放棄して、上着から図書隊手帳を取り出して掲げていた。

眩しいほどの勇気を持ちながらも、 足を痛めて俯き泣く少女の姿は非力な普通の女の子そのものだ。良化隊とは無縁である世界にいるべき、陽の光の中の住人。堂上はそんな少女の前に取り戻した本を差し出した。
君に本を返したい、ただそれだけだった。見上げてきた顔はまだあどけなさが残っている、快活で笑顔の似合いそうな少女──。安堵の涙を拭ってやる代わりに 慰めるように叩いた髪の感触は、堂上の手のひらにいつまでも温かく残った。
願わくば 守り抜いたこの本が君を笑顔に導いてくれますように。
「明日!。・・・明日お礼に──」
店を出る間際にかけられた声に堂上は振り向くことが出来なかった。
研修先で問題を起こせば、即座に関東図書基地に呼び戻される。勝手な判断で行使した見計らいに 査問は免れないだろう。事実 この行為は原則派全体の立場を危うくし、査問会は半年以上も長引くことになった。
軽率な行動をとったことは反省するが、後悔はしていない。自分のしたことだ、覚悟は出来ていた。

明日は──もう会うことはないだろう。


*************


右足を撃ち抜かれた堂上が、 病院のベッドの枕元にもたれている。その傍らの丸椅子には当麻との逃走劇を語り終えた郁。
堂上が郁の手を取れば、郁もはにかみながら返してくる。
今はもう、2人には積み重ねたものが沢山ある。
「・・・やっと言えます。あの日、8年前のあの日、言えなかったお礼が。」
堂上は真っ直ぐ見つめてくる郁の視線をしっかりと受けた。耳によみがえる少女の声。
『明日!。・・・明日お礼に──。』
その声を何度心の支えにしてきたか。査問で苦しかった時、抗争で怪我を負った時、追い詰められた時、よみがえる声に力が湧いた。泣き顔を笑顔に変えたいと 自分の原動力にしてきた。あの時の少女の勇気に見合う自分になるために。
しかし 来ないと思っていた 『明日』 を、郁は運んで来たのだ。
「再会したのはずっと前だが。」
しれっとからかうのは、再会した面接の場では郁に自覚がなかったからだ。
「う・・あれは・・・すみませんでした。」
しゅんと俯く郁を堂上は引き寄せた。
「もっとも、あの──面接の時だったら容赦無く追い返してたかもしれんな。」
「引きませんよ!会いに来たんですから。お礼を言いに来たんですから!」
「ああ、だから。」
堂上は郁をベッドの上に座らせた。近い距離に恥ずかしく感じていた郁も、堂上の優しい眼差しに気付いて笑顔を見せた。
「高校生の時、助けてくれてありがとうございました。あたし、追いかけてきて良かったです。今の・・今の教官に会えて本当に良かった!。」
はらはらと流れる涙を、今度は拭ってやれる。堂上は郁の頬に手をのばした。
「追いかけて来てくれて───」
ありがとう、と 重ねた唇には8年分の互いの想い。



もうすぐ 出逢いの日がやってくる。2人手をとって迎えよう。

02:07  |  図書戦  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 | 2014年10月02日(木) 19:50 |  | コメント編集

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 | 2014年11月12日(水) 11:38 |  | コメント編集

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

 | BLOGTOP |